HRDNext経営戦略策定の手引き事業×組織×人材の戦略統合による新時代の企業成長論
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HRD株式会社 - Human Resource Development

" 戦略人事 " に関する記事
2022.4.20 EVENT

流動性組織:未来の企業競争力は「流動性」が決する
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session1』

変化への耐性は組織のリキッド化(流動性・柔軟性の高さ)によってもたらされるという長年の学術研究の成果を解説します。さらに、研究成果に加えて、数々のFortune500企業のトップマネジメントに対するコンサルティングの実践経験も踏まえて、日本企業に必要な改革の処方箋を提示します。

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。

 

 

◇登壇者の紹介◇
 

マイアミ大学ハーバートビジネススクール副学長、マーケティング学部長
アルーン・シャーマ教授
(Arun Sharma)
グローバル市場のトレンド、市場構造、マーケティング戦略を主な研究領域としている。ビジネススクールでの教育・研究の傍ら、アクセンチュア、アメリカンエクスプレス、AT&T、アウディ、HP、IBM、マスターカード、ペイパル、P&G等、様々なグローバル企業への豊富なコンサルティング経験を有する。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
取締役
韮原 祐介(Nirahara Yusuke)

 

ディスラプションへの備えとしての流動性
ディスラプションを防ぐ流動性

まず、韮原が本プログラムのDay1を振り返り、「事業環境の不確実性が高まる中、企業のミッション、ビジョン、バリューに基づき、組織や人材をいかに素早く市場環境に適応させていけるかが問われる中、登壇各社におけるEverything DiSCProfile XTCheckPoint360°の活用事例などを聞くことができました」と概括した上で、不確実性の高い経営環境に対応するための流動性組織(Liquid Organization)の研究で知られる本セッションの登壇者、アルーン・シャーマ教授を紹介しました。

次に、シャーマ教授はプレゼンテーションの前に背景を説明。企業間および国家間競争に興味を持つ中、2018年頃からディスラプション(破壊)の問題が深刻化。複数の国家や企業の関係者から要請を受け、1年ほどを費やしてディスラプションの類型を提示したと言います。「すると、そうしたディスラプションを防ぐ方法を問われ、本日のテーマである“流動性(Liquidity)“の概念に到達しました」と述べました。
「流動性」は国家と企業の双方に通用する概念ですが、本セッションでは企業について扱います。

ここからシャーマ教授はプレゼンテーションに入りました。

まず、研究方法として数多くのCEOやCFO,業界の専門家などと調査研究を行ってきたことに触れ、「現在はグローバルな医療機器会社とディスラプションへの対処法について議論しています」とコメント。また、これまで15回来日し、大企業だけでなく中小企業にも訪問したと言います。

組織における速度、柔軟性、加速(と減速)と両利き


本題に入り、流動性組織とは何かについて「流動性とは、組織における速度、柔軟性、加速(と減速)、そして両利きのことを指します」と説明。どれだけ速く製品を開発できるか。どれだけ素早く方向転換できるか。そして、速度と柔軟性の違いについて、一つの例を示しました。

14年前、携帯電話市場は14%のシェアを持つノキアが支配。2番目はサムスン、3番目はブラックベリーでした。現在はサムスンがトップシェアを握り、ノキアやブラックベリーの電話はもう見かけることはありません。重要な点は、ノキアは週に数台の新機種を導入していても、柔軟性がなく事業全体の方向を変えることができなかったこと。スピードだけでなく、柔軟性も必要なのです。

速度と柔軟性に続く3つめの要素は、スケーラビリティ(拡張性)。どれだけ速く、新たな立ち上げや、逆に規模の縮小ができるか。例として、アメリカ市場におけるトヨタを取り上げました。ベストセラーは「カムリ」でしたが、消費者ニーズは急速にSUVに移行。現在最も売れているトヨタのSUVは「RAV4」ですが、その移行は困難でした。トヨタだけでなく、大半の自動車メーカーはベストセラー車種のスケールダウンとSUVのスケールアップができなかったのです。

この加速と減速をどれだけ速くできるかが重要」と指摘します。

最後に、両利きであること。
現在の顧客からどれだけ多くを得るかという“Exploitation”(深化)と、新たな顧客をどれだけ探るかの“Exploration”(探求)です。

流動性のある例・ない例


こうした流動性は、迅速な対応を可能にし、組織を行きたい方向に動かすことができますが、阻害するのは組織間の“壁”。製造とマーケティングは通常話し合う必要がなく、間に高い壁ができてしまいます。「しかし双方で、より深い会話ができれば、こうした壁がなくなり企業はより流動的になります」と指摘します。

次に、流動的ではないものを例示。プラハのトラム(路面電車)は電線が必要で、一路線しかなく、非常に固定化されています。
一方、ニュージーランド航空の場合。カタール航空がマイアミに運航を開始すると、ニュージーランド航空の当初の現地スタッフは1人であったところ、ダラスと兼務の0.5人となりました。なぜもっと人が必要ではないのか。チェックインや貨物の受け取り、機内食、燃料サービスのすべてが外部に委託されています。そして、当日のスタッフや機長、副操縦士、フライトクルーは翌日に帰る。「簡単に言えば、ニュージーランド航空はほぼ7日で飛行を開始できる。これが流動的ということです」と言います。

こうした流動性のある企業は収益が高く、成長も速く、レジリエントであるという特徴があります。
「コロナ禍でも生き残った企業はより流動性が高かった」と指摘。流動的な企業には戦略的思考と革新性があり、顧客満足度が高く、エンゲージメントの高い顧客を獲得していて、こうした顧客が高い収益をもたらしているのです。

次に、流動的でない4社として、GM、RCA、シアーズ、ノキアを例示。
GMは、日産やホンダの高品質によって攻撃され、今ではトヨタがGMより多くの車を販売しています。RCAは米国で最大のテレビのブランドであったものが、ソニーの小型化技術に攻撃されて消滅。今度はソニーがサムスンやLGに攻撃されています。かつての世界最大の小売業者、シアーズは、すでに存在していません。ノキアもアップルに襲われて存在をなくしています。

「これら4つの企業に共通しているのは、流動的ではなく、方向を素早く変える能力を持っていなかったことです」と指摘します。

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2022.4.14 EVENT

デジタル変革とピープルアナリティクスの未来
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day1_Session4』

多くの企業がデジタル変革に取り組み始める第一歩として、社内にデジタル推進組織を立ち上げています。DX推進では、新規サービス創出等の不確実性の高い取り組みにおいて、できるだけ多くのアイデアを出し、関連施策を走らせていくことが一つの成功要因。しかし、そうした取り組みにあたり、多くの企業でDX人材不足が報告されています。そのため、社内人材の能力開発だけでなく、外部人材確保に向けた経験者採用、また適正配置や処遇に関する人事制度の再設計と仕組み化が喫緊の課題となっています。 当セッションでは、デジタル変革に求められる新規事業創出を可能とする組織・人材をどのように生み出せばよいのかについて、NTTデータでの取り組みを元に考察。同社がデジタル変革に挑むために立ち上げた「出島」組織を切り口とした組織人事の取り組みや、組織のミッション・ビジョン・バリューを起点とし、ピープルアナリティクスを活用した組織風土形成、人材育成の現在進行形のプロセスを、事業トップとそれを支えるコンサルティング部門のリーダーからご紹介いただきます。

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。

目次

 ♢ゲストスピーカーの紹介♢

 <前編>
デジタル戦略室のTalent Transformation戦略
現場、DSO、人事の“三位一体”がポイント
SDDX事業部のミッション
SDDX事業部の組織課題と解決施策

 <後編>はこちら
PXTで人が変わり文化が変化する土台に
「PXT統括読み替え表」で到達度を深める
PXTの人財還流とジョブマッチへの活用
企業と社員のマッチング追求が大きな流れに

◇ゲストスピーカー◇


株式会社NTTデータ
ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部長
内山 尚幸氏 
(Uchiyama Naoyuk)
1996年当社入社。カード&ペイメント事業部ビジネス企画統括部長、ITサービス・ペイメント事業本部サービスデザイン統括部長を経て、2019年4月より現職。ペイメント領域の新サービス企画、リテール・サービス業界をターゲットとしたソリューション企画などに従事。
グローバルブルー・ティエフエス・ジャパン株式会社 取締役。ネットイヤーグループ株式会社 取締役。

株式会社NTTデータ
コンサルティング事業部 部長
コーポレート統括本部 デジタル戦略室(Digital Strategy Office)兼務
東谷 昇平氏 
(Touya Shohei)
2002年にNTTデータに入社。セキュリティ、データセンタ、クラウドの事業に従事し、SI、ソリューションセールス、企画・マーケティング、アライアンス、ハイアリングなどの職務を経験。近年はコンサルティング事業部にてデジタルタレント・ピープルアナリティクス、マーケティング・ブランディングを手掛ける。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
ディレクター パフォーマンスコンサルタント 
水谷壽芳

 

<前編>

デジタル戦略室のTalent Transformation戦略

ゲストスピーカーの自己紹介トークの後、セッション開始。 まず、東谷氏が「デジタル変革の取り組みの背景」について説明を行いました。東谷氏が在籍しているデジタル戦略室(DSO)は2017年にスタート。まずは“デジタル”についての概念の社内共通化を図るべく、役員や事業部長を集めて丸一日議論したことが報告されました。その場では「顧客の期待する成果」「顧客にとってのデジタル化」「デジタル化を実現する6つの領域」を定義。その上で、DSOは同社のデジタルビジネス加速化のために、次の3つの戦略を導出しました。

 

            株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 東谷昇平氏

    ① Direct Investments受託から顧客との新ビジネス創出へのシフトへの投資
    ② Strategic Partnerships変化の激しいデジタルへの取り組みを行う仲間づくりへの投資
    ③ Talent Transformation自社のDXのためのデジタルネイティブ育成への投資

 
このセッションでは、③ Talent Transformation についての説明が行われました。

DSOは、Talent Transformationの目的を① 新規ビジネスアイデアを事業化に繋げる仕組みと文化・風土の醸成、② クライアントとアイデェーションから事業化までを推進できる人財の育成、の2点に設定。その背景として、クライアントからの「一緒にデジタル化を考えてほしい」との要請の高まりや、それに応える人材育成という課題があることを挙げました。

2点の施策の方向性としては、①に対しては「チャレンジする人が育つ場をつくる」「トップのコミットで熱意を挽き出し行動を促す」、②に対しては「クライアントと共に道を切り拓く人財を育てる」という“”“マインド”“スキル”の3要素を掲げるとともに、現場、DSO、人事が役割分担し、三位一体での推進がコミットされたことが説明されました。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

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現場、DSO、人事の“三位一体”がポイント
 

この“三位一体”がポイント」と東谷氏。同社には数多くの現場があり、人事は共通項を意識した施策を打ち出しがちとなる半面、各現場はそれぞれのニーズにより則したものを求めるからです。そこで、このギャップを埋めるべく両者の間にDSOが介入し、現場と人事を繋いで戦略的に施策を展開することを意図。DSOが現場の“”“マインド”“スキル”を整える処方箋をつくり、人事と共有し人事が全社に展開する仕組みを考えました。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

そこでポイントになったのは、どの現場をモデルにするか。同社は公共、金融、法人の3分野で約50の事業部があり、それぞれビジネスや課題が異なるからです。そこで、以前行った組織診断結果から、DXに対する課題観は共通しているものの、相対する業界の成熟度の違いから課題に対する温度差があることを分析。①ターゲット市場のDX成熟度が高い②組織が新規事業開発にコミットしている③組織長の覚悟、という3点で現場を選定し、処方箋をつくり全社展開することがベストと導き出しました。「これで選んだのが、最もデジタル化が進展し、新規オファリングをミッションに掲げ、“覚悟の男”の内山氏が率いるSDDX事業部でした」と東谷氏。

以上の説明に、水谷は「学びのポイントがたくさんありました」とコメントし、大企業における現場と人事とのギャップを埋める組織の意義に触れました。戦略をつくることはできても、その実践は難しいことを指摘した上で、交流のある東谷氏の組織人事に対する熱意を紹介。東谷氏は「関心のあることをやらせてもらえているからです」と回答しました。

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SDDX事業部のミッション
 

水谷は、内山氏にDSOの取り組みに対する見方を問うと「一事業部ではできない投資を割り振ってくれるチャレンジングな取り組みで、新たな気づきもありました」と評価。DSOの処方箋づくりに選定されたことに対しては、「目的に同意したので一緒にやってみようと思いました」と回答しました。

            株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 内山 尚幸氏

次に、内山氏がSDDX事業部を説明。SDDXとは“Service Design & Digital eXperience”の略で、顧客の新たな成長源泉づくりを目的としたDXと、ビジネスを加速させるマーケティングのデジタル改革の2点をミッションとして、2019年4月に設立されました。新規ビジネス創出事例として、レジがないウォークスルー店舗「Catch & Go」を例示。デジタルによるリテールビジネスのアップデート施策として、人手不足や販売機会創出、人件費削減という価値を提供するものです。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

ここで水谷は「『Catch & Go』のデモを見せてもらい、顧客体験を変えるソリューションと実感しました」とコメントし、社内外の反響を尋ねました。内山氏は「多くのメディアに取材してもらい、お客様にも体験してもらってこうした取り組みの意義が理解されました。非常に好評です」と回答。東谷氏は「内山氏と喫煙室でたまたま会った際に、元々あった『Catch &Go』のデモ機で実際の店舗を本社内につくってみたらいいのではと話したことが発端になっています」とのエピソードを披露。IT企業の同社が実店舗を運営してみることで、小売業や消費者の受け止め方が理解できるというわけです。そして、内山氏に「Catch & Go」を3か月ほど運営し、データを取ってわかったことなどの成果を尋ねました。内山氏は、最も売れているおにぎりの購入者特性や、時間帯別および顧客属性別の動線の違いなど「やってみてわかったことがもの凄くたくさんあり、データで次を考えられるようになりました。当社はシステムをつくることが得意ですが、そのシステムで得たデータをどう生かすかに気づけたことが大きな成果」と話しました。

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SDDX事業部の組織課題と解決施策
 

水谷は、そのようなSDDX事業部の活動の裏側にある組織人事に話を向けました。

内山氏は「足元でもがいている状況をお話しします」と、同事業部が抱えている課題を説明。「Catch & Go」のような世の中にない新しい事業やサービスを生み出そうとした時、事業部長の「顧客業界の最高の未来を創ろう!」と号令をかけても、メンバーの間には「本当にできるのか?」「どうやれば評価されるのか?」との疑問が生じたと言います。その要因として、事業部長の方針の抽象度の高さやメンバーにとっての優先順位の問題、既存事業とは異なるであろう方法論が見えないこと、そうした中でもメンバーが考え出したプランに対する事業部長のフィードバックが、結果的にメンバーが迷うようなものになったとの問題がありました。また、事業部の設立当初は社内から専門性が尖っている異能人材を集めたものの、その後一般的な人材も加わる中、高度な目標に対して個人戦から組織戦に変えていく必要性が浮上。「それまでの組織力を高める上で人材への取り組みが弱いと反省しました」と内山氏は打ち明けます。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

そして、①ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の定義・浸透、②事業戦略と実行プロセスの定義・発信
人財特性を加味した実務支援方法の整備という施策を打ち出したことに触れ、ここでは③について説明されました。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

組織として目指している、顧客価値創造型のアジャイルなスタイルにおいて必要な人材像(ロールモデル)の策定や、その育成支援を開始。具体的には、顧客価値を生み出す人材として“走者”と“伴走者”の2タイプが必要との仮説を出し、Profile XT(PXT)を用いてそれぞれのロールモデルを策定しました。走者とは、不確実性の高い世の中で0から1を生み出す者で、1のアイデアを10にビジネス化するのが伴走者という定義です。その上でメンバーの資質をPXTによって可視化し、ロールモデルとのギャップを数値化。そして、まずはギャップを解消するための各自の内省をコミュニケーションによって支援するところから育成体制の整備を始めました。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

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2022.4.12 EVENT

企業変革を加速させる組織と人材の力
—事業成長に合わせて組織と人材像を再定義するための方法—
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day1_Session3』

消費者の価値観の変化、テクノロジーやデータ活用の進展、サスティナビリティに対する要望の高まりなど、事業戦略を描く上での前提条件が大きく変化しています。このような経営環境下において、経営リーダーは事業の方向性を見定め、その実行を支える組織や人材像を再定義していく必要があります。
このセッションでは、“事業構造の変化と人材需要のギャップにどう適応していくのか”という問いについて、事業トップマネジメントとビジネス現場に通じる組織・人事コンサルタントによる対談形式で議論を深化。組織ミッションを起点とした構造改革を進める中で、事業戦略の最上位概念に“人の価値の最大化”を据える事業トップの生の声をお届けします。
また、“企業変革を加速させるために、事業リーダーはどのように自らをアップデートさせるべきなのか?”というテーマにも触れるとともに、経営人材育成のプロフェッショナルが現在進行形で取り組んでいる“リーダー自らが進化していくプロセスや考え方”の実践的アプローチを共有します。

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♢ゲストスピーカー♢
 

トランスコスモス株式会社 執行役員
デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括
アカウントエグゼクティブ総括副責任者 兼 デジタルカスタマーコミュニケーション総括副責任者
田渕 和彦氏 (Tabuchi Kazuhiko)
1995年よりコールセンター事業に携わり、センター立ち上げや現場管理者、プロジェクトマネジメント、人事を歴任。
2005年 トランス・コスモス シー・アール・エム沖縄(株) 取締役、九州・沖縄エリアの責任者を経て、2010年 中国へ渡り EC事業運営に従事。 2012年からは日本に戻り、西日本エリアの責任者を担当。 2016年以降はアカウントマネジメント部門とデジタルコミュニケーションセンター部門を担当し、2019年4月に弊社 執行役員に就任。現場主義を貫き、企業のカスタマージャーニーに沿った顧客戦略全般を支援。

グロービス・コーポレート・エデュケーション
マネジング・ディレクター
顧彼思(上海)企業管理諮詢有限公司 董事
西 恵一郎氏 (Nishi Keiichiro)
早稲田大学卒業。INSEAD International Executive Program修了。三菱商事株式会社に入社し、不動産証券化、コンビニエンスストアの物流網構築、商業施設開発のプロジェクトマネジメント業務に従事。B2C向けのサービス企業を立ち上げ共同責任者として会社を運営。グロービスの企業研修部門にて組織開発、人材育成を担当し、これまで大手外資企業のグローバルセールスメソッドの浸透、消費財企業のグローバル展開に向けた組織開発他、多くの組織変革に従事。グロービス初の海外法人を立上げ、現地法人の経営を行う。現在はコーポレート・エデュケーション部門マネジング・ディレクター兼中国法人の董事を務める。経済同友会の中国委員会副委員長(2018、2019、2020)。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
ディレクター パフォーマンスコンサルタント 
水谷壽芳

 

“CS”から“CX”への変革
 

まず、田渕氏が自社における取り組みについて、次の3項目に則して説明を行いました。
① 市場の変化と組織課題
② 人の価値を最大化する人財育成・組織活性化
③ これからの目指す姿

① 市場の変化と組織課題
  
AIに置き換わる職業への危機感 
田渕氏が所管するコンタクトセンターの市場は、2015年の7,400億円から2020年に1兆154億円まで拡大。同社の売上高も、2017年度の2,423億円から2021年度の3,364億円まで伸びており、11期連続での増収となっています。世界30か国・地域で6万人の従業員を擁するグローバル企業であり、国内においては北海道から沖縄まで全国に2.3万人の従業員が在籍しています。

このように事業が急拡大する中、2014年に発表されたマイケル・A・オズボーンの『雇用の未来―コンピュータ化によって仕事は失われるのか』において、AIに置き換わる職業として「コールセンターオペレーター」が上位に挙げられました。「これを見た瞬間、我々の事業はどうなるのかという危機感を覚えました」と田渕氏は打ち明けます。

  “金太郎飴”からCX創出人材へ 
これを機に、自社のサービスを再検討。それまでは、平準的で標準化され、安定的に運用される“汎用量産型”のサービスモデルによる“CS”(顧客満足)を追求していました。これからは、商品・サービスの購入前後におけるあらゆる接点で顧客にどんな体験を提供し、どんな心理的価値を感じてもらうかを重視する“顧客別カスタマイズ型・課題解決型”のサービスモデルによる“CX”(顧客体験価値)が求められると結論。したがって、人材も“金太郎飴”からCXを創出できることへのスキルチェンジを図る必要性が浮上したのです。

                    出典:トランスコスモス株式会社

「そこで、CSからCXに変革するために我々は何をしなければならないのかを考え直さなければならないと考えました」と田渕氏。そして、なりたい姿の“Vision”、使命・存在意義の“Mission”、行動・考え方の“Value”から再定義。「経営層から現場まで共有・理解した上で事業運営に当たらなければ変化のスピードに追い付けないと考えました」と田渕氏は言います。「コミュニケーションの力で人の幸せと豊かな社会の懸け橋になる」というVisionの下、コミュニケーションの力で何ができるのかを個々の従業員が考えてチャレンジすることが重要であると打ち出したのです。

                    出典:トランスコスモス株式会社

② 人の価値を最大化する人財育成・組織活性化
  外部のプログラムやサーベイの導入 

「変化していく中で、人材が一番重要であると認識しています」と田渕氏。その人材の価値を最大化するために必要なことは何か。まずは上層部の意識変革が必要と考え、外部の知見を取り入れながら“他流試合”を行い、自らの考え方と世の中のギャップや自らのポジションを認識する機会を持つことにしました。そこで、2018年からGLOBISのミドル・マネジメント・プログラムの受講と、プロファイルズ社のCheckPoint360°サーベイを本部長以上に導入。2019年にはGLOBISのエグゼクティブ・マネジメント・プログラムの導入や、CP360°の部長以上への拡大、およびProfile XTを課長以上に実施。2021年にはCP360°を課長以上、PXTをマネージャーにも実施するなど順次拡大し、これまでにCP360°は128名、PXTは480名に実施しています。

                    出典:トランスコスモス株式会社

  経験と勘に頼った人事からデータの活用へ 
360°サーベイでは顕在化している領域を、PXTは潜在化している領域をそれぞれ測定するもの。「国内2.3万人のメンバーの潜在能力をいかに早くキャッチするか、リーダー層の顕在化している能力をいかに評価するかという観点で導入を図りました。これによって、自己流のマネジメントを見直し、事業戦略に基づく人的資本の最適化を行っていくことが重要だと認識しています」と田渕氏は言います。田渕氏には、自分自身も属人的な人材の登用や配置を行ってきたという反省がありました。

「従来のように経験と勘に頼った人事ではビジネスのスピードに追い付けず、データの必要性を実感しています」と田渕氏。

360°サーベイとPXTを活用し、本部長や部長の状況を見る人財ポートフォリオの作成、パフォーマンスが高い組織とそうでない組織における上司部下のフォーメーションの違いの分析、配置転換や組織編制に繋げています。

「先々で状況が変化した際に、今からデータを持っておかないと何が適正なのかが計れないとの考えがありました」と田渕氏は説明します。

③ これからの目指す姿
 「SUPPモデル」 
まずは、Mission・Vision・Valueに基づいて行動する人材の育成を最重要のテーマに挙げています。この浸透を図る共有(Share:耳で聞く)、理解(Understand:頭でわかる)、自分ごと(Personalize:体が動く)、実践(Practice:腹落ち)の「SUPPモデル」において、自分ごと化するプロセスを重視。このため、360°サーベイ結果を自己開示して対話し、率直なフィードバックを歓迎することにより、お互いを理解し認め合うことを通じて組織としてどう成長していくかを考える機会を設けています。

                    出典:トランスコスモス株式会社

ここで田渕氏は自らの360°サーベイ結果を開示。「最初はサーベイのコメントを素直に受け入れられない部分もありましたが、対話を通じてどんな組織にしていくべきかを語り合いながら、ありたい姿に向けて取り組んでいくと、翌年、翌々年とスコアが向上しコメントもどんどん変わっていきました」と田渕氏は話します。

                    出典:トランスコスモス株式会社

コンタクトセンター事業のありたい姿とは、「革新的・先進的なサービスと私たちの事業の原点でもあるコミュニケーションの力によって顧客体験価値を高め、地域と社会に貢献する」「多様性をもったすべての人とのつながりを大切にし、人の価値を最大化させ社員全員が自己実現を果たしワクワク働き成長する」というものです。

  未来の付加価値人財モデル 
同社では、今後のデジタル化、AI化、効率化の中で、顧客の課題にマッチしたソリューションの提供に繋げるために、どのような付加価値を付けるべくスキルチェンジを図るかという「未来の付加価値人財モデル」を定義。「運用のプロフェッショナル」「コンサルティング」「アナリティカル」「イノベーティブ」の4タイプを抽出しています。PXTを活用し、これら付加価値人財を発掘し育成していくことを検討しています。

                    出典:トランスコスモス株式会社

「顧客に向き合う組織を目指す上で、資産として人財が最重要であり、属人的にならないようデータを活用しながら人財配置の最適化を図っていきます。こうした集団が顧客によりよいサービスを提供できるのではないかと考えています」と締め括りました。

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2022.4.11 EVENT

「ザ・ベスト リージョナルバンク」の実現に向けた事業進化の轍
—経営環境の変化をチャンスとする組織・人事戦略—
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day1 Session1』

事業基盤である九州の持続可能な発展に貢献するとともに、すべてのステークホルダーから支持される「ザ・ベスト リージョナルバンク」の実現を目指している、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)。4銀行のグループ統合やデジタル技術を駆使した事業の高度化などを実現しています。中でも、日本初のデジタルバンク「みんなの銀行」の設立や、“人生100年時代”に合わせた金融サービス「投信のパレット」など、先進的なサービスは従来の金融サービスと一線を画しています。今回のセッションでは、こうしたグループ統合や新サービス誕生秘話、そしてその背景にある失敗を恐れない企業風土の形成や人事施策などについて、同社取締役として事業成長を牽引し、2022年4月1日にFFGおよび福岡銀行のトップに就任される五島久氏にお話を伺いました。

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♢ゲストスピーカーのご紹介♢


株式会社ふくおかフィナンシャルグループ取締役執行役員
株式会社福岡銀行取締役専務執行役員
五島 久氏 
(Goto Hisashi)
1985年、九州大学・法学部を卒業後、㈱福岡銀行へ入行。
人事部・副部長、総合企画部・部長、営業推進部長などを経て、2017年に同行の常務執行役員並びに
㈱ふくおかフィナンシャルグループ・執行役員に着任後、現職に至る。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
ディレクター パフォーマンスコンサルタント 
水谷壽芳

 
 
<前編>
「シングルプラットフォーム・マルチブランド」の経営スタイル
 

まず、水谷は五島氏にFFGが2007年の設立以来築いている独自の経営スタイルについて尋ねました。五島氏は、まずFFGの沿革を説明。2007年4月に福岡銀行(創業1877年)と熊本銀行(創業1929年)の統合に始まり、同年10月に長崎の親和銀行(創業1879年)を経営統合。2016年4月にデジタルを活用した様々なサービスを提供する「iBank」事業をスタート。2019年4月には長崎の十八銀行を経営統合し、2020年4月に十八銀行と親和銀行が合併し十八親和銀行が誕生。2021年5月に「みんなの銀行」サービスを開始。こうしてFFGは現在、4つの銀行を傘下に置いています。「設立から14年が経過し、経営は少しずつ進化しています」と五島氏は話しました。

次に五島氏はそのFFGの経営スタイルを説明。グループ経営理念「高い感受性と失敗を恐れない行動力を持ち、未来志向で高品質を追求し、人々の最良な選択を後押しする」や、コアバリュー「いちばん身近な銀行/いちばん頼れる銀行/いちばん先を行く銀行」などの下、福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行の3行を顧客接点としつつ、FFGが一つのプラットフォームで商品・サービスを提供する「シングルプラットフォーム・マルチブランド」という経営スタイルを取っています。「マルチブランド」は、地方銀行としてそれぞれの地域社会や地域の顧客との関係性を重視し、地域に密着して営業を展開する姿勢を示しています。一方、グループ経営をより効率的・効果的に進めるため、各行のシステムや事務などのインフラを共通化するとともに、企画機能をも一体化させる「シングルプラットフォーム」を構築。

「足腰は一つ、上半身は各地域で活動するといった経営スタイル」と五島氏は説明しました。

これを受け、水谷は「地域とのエンゲージメントを維持しつつ、スケールメリットを出す秀逸な経営モデル。これを実現させていくところにFFGならではの強みがあると思います」と述べ、これを支える要素について五島氏に尋ねました。

                  出典:ふくおかフィナンシャルグループ

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「失敗を恐れない」といった組織文化と新サービス
 

五島氏は、「各行がオリジナリティは持ちつつ、インフラはあたかも一つの銀行のように機能させるべく、FFGと各行の間でノウハウや意識の共有することが非常に重要」と指摘。そのため、統合直後から役員層から若手まで延べ1,000名を超える人材交流を積極的に実施してきたと話しました。

ここで水谷は、FFGのブランドブックに記された「失敗を恐れない」といった組織文化の強さに言及。これを受け、五島氏はブランドブックを持ちながら、組織文化づくりの基盤となる考え方を全社員で共有していることを説明。「この中で、『失敗を恐れない』ことが強調されています」と話しました。

★FFG統合報告書/組織文化つくりの記述があります:
https://www.fukuoka-fg.com/investorimage/ir_pdf/tougou/202110/all.pdf

水谷は、こうした組織文化の中で生まれた新しいサービスとして、「投信のパレット」について尋ねました。

五島氏は「独自開発のシステムで、国内の約4,800本の投資信託を公平中立に評価・分析し、優良な投信を組み合わせながらお客様のニーズに最適な資産運用プランを提案、その後きめ細かくフォローアップしてお客様の資産運用を長期に渡って支えていくサービス」と説明。続いて、「人々の最良の選択を後押しする」という経営理念、「お客様本位の営業」という営業理念のもと、“人生100年時代”に必要な資産づくりという背景・ニーズに対応する開発目的に言及。「現場の担当者の間には、『投信を売ったのはいいが本当にお客様の役に立っているのか』『銀行本位でやっていることではないのか』との本音がありました。私自身も自信を持ちきれないところでしたので、真にお客様のためになるサービスを開発しようと始めたのがこのプロジェクトです」と話しました。

                    出典:ふくおかフィナンシャルグループ

水谷は2020年2月にサービスを開始したこの「投信のパレット」の取引残高が1,700億円、顧客数3.3万人に及ぶという反響の大きさを紹介した上で、「新規事業は簡単ではない中、社員によく伝えていることがあると伺いました」と話を振りました。

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“企業の目的”と“個人の目的”を繋ぐリーダーの役割
 

これに対し、五島氏は、「“システム×商品・サービス×人”の大きな要素がうまく連動することでいいサービスができ、お客様が満足し、従業員の『これでいいのか』との不安も払拭でき、成果が上がって収益に繋がり、次の投資に回せるという、まさしく『論語と算盤』のような世界ができると思います」と話しました。続いて、自社がこれまで社会インフラとして様々な金融サービスを提供し地域を支えてきた志について社員に話しているとした上で、“企業の目的”と“個人の目的”について言及。企業の目的は、世の中に善をなし利益を上げ続けるという好循環を目指す存在意義の追求にある一方、個人の目的は社会で役に立ち個人として成長することにあり、「この両者を併存できるように繋ぐことがリーダーの役割」と指摘しました。「一人ひとりの従業員も、会社にやらされているのではなく、自分のやりがいや生きがいを得るために仕事に向き合うことが大事であるという話をよくしています」と話しました。

                   出典:ふくおかフィナンシャルグループ

 この話を受け、水谷は「その話は最近よくスポットが当たっている事柄」とした上で、以前は会社が従業員を働かせるという関係性にあったところから、今では会社は働くインフラを提供し、従業員は持てる能力を発揮するというWin-Winの関係にあると指摘。そして、HRDグループが公開した論考・「経営戦略策定の手引き(2022年度版)の中でも、企業と個人の目的をすり合わせる必要性について書かれていることに触れ、五島氏が実践していることについて尋ねました。
(HRDグループ・論考「経営戦略策定の手引き(2022年度版):https://www.hrd-inc.co.jp/file/wp/wp_vol.pdf )

五島氏は、お客様本位の営業と持続的成長のために収益を上げ続けなければならないジレンマは誰しもにあり、従業員も“論語か算盤か”との二者択一的になりがちな難しい問題であるとした上で、「だからと言って目をつぶっていていいわけではなく、あえて認識しながら少しずつ歩みを進めていくことが大切という話をしています」と述べました。

「同じ方向に歩みを進めつつ、それぞれの立場で解釈を深めていくことで組織文化がより深まっていくように思います」との水谷の投げかけに対し、五島氏は「会社と個人の目的が結びついた時に、関わる全員がより幸せになれると思うからこそ、難しい問題ですがしっかりやっていきたいと思います。人事制度や風土づくりはその延長線上にあり、ダイバーシティインクルージョンとしても一人ひとりを理解し、活躍のフィールドを整備することが大事であると思います」と答えました。

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2021.12.9 EVENT

マイクロソフトはいかにしてカルチャー改革を実現したか 新しい時代における組織・人材戦略を先駆者と共に考える『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day3』

環境変化が更に加速する2020年代。企業が直面する変化の第一は、テクノロジーの進化があります。そこで、このセッションではデジタル・テクノロジー企業の雄であるGAFAMのそれぞれの人事戦略から、人材を活かすマネジメントを掘り下げました。優秀な人材をいかに惹きつけて、育てているのかについての共通事項を考察。特に、マイクロソフト社の人材マネジメントについて、ゲストスピーカーによる同社の最新人事施策の紹介と考察から、これからの日系企業における人事戦略の方向性についての議論を行いました。

セッション動画はこちら

 

 

★ゲストスピーカーの紹介★

日本マイクロソフト株式会社 人事本部
HRコンサルティンググループ マネージャー
堀江 絢氏
June Horie

2009年家族と来日、専業主婦、大学職員、人材アセスメント会社のコンサルタントを経て、大手グローバルスポーツメーカーに転職、主に組織開発、人材育成とタレントマネジメントの業務を担当。2020年2月に日本マイクロソフトに入社、中途新入社員のオンボーディング、新卒社員研修、マネージャー能力開発などのプログラムをリードしながら、社員とマネージャーにコンサルティングとコーチングを提供する。

GAFAMのビジネスモデルと人事戦略


必要なスキルの変化

まず、水谷が企業におけるマクロ環境やデジタル化、サスティナビリティ、働き手におけるライフシフトやキャリア観の多様化、必要なスキルの変化といった環境変化を概観。「双方に大きな影響を与えているのは、デジタルの進化」と整理しました。

この流れで、2000年と2020年の時価総額ランキングを比較。2000年に1位であったゼネラル・エレクトリック(GE)は100位未満となり、GAFAMがベスト10に顔を揃えていることが紹介されました。GAFAMのビジネス内容を整理し、サービス領域は異なるものの、“プラットフォームビジネス”“生活に浸透”“ビッグデータ”という共通点があることが説明されました。

次に、視点を変えて働き手に求められるスキルに言及し、Day1でも紹介された「高度な認知スキル」「社会的・感情的スキル」「技術的スキル」の重要性を再確認。「デジタルスキルとともに、これら3スキルの需要が高まっています」と話しました。加えて、GAFAMにおけるリスキル投資を説明。Microsoftの失業者2,500万人への無料プログラム提供や、日本マイクロソフトにおける人材育成施策などが紹介されました。

GAFAM同士の学び

ここで、水谷は堀江氏に「マイクロソフト社における日本市場の位置づけは?」「GAFAM同士で学びあう、というケースはありますか?」と質問。

1つめについて、堀江氏は「Microsoftにとって日本は大きな戦略的マーケット」と前置きした上で、決算期である7月にオンライン行われた全社イベントのエピソードに触れ、「CFOのプレゼンテーションには何か所も日本マイクロソフトの名前が出てきて、そのパフォーマンスの高さが協調されました」と紹介しました。

2つめについては、Microsoftグローバルの全マネージャーに向けたトレーニングで、Googleによって広められた「心理的安全性」がテーマに取り上げられたことが話されました。

次に堀江氏は、GAFAMにORACLEを加えた6社のカルチャーの風刺画を示し、Microsoftは事業部門がサイロ化し、それぞれがピストルを向け合っている様を紹介。「昔のこういうカルチャーは良くないと認識し、カルチャーを変えてビジネスの成長に繋げてきました」と話しました。

出典:日本マイクロソフト株式会社

ここで水谷は、マイクロソフト社に注目する理由として「歴史がある」「苦難の克服」「(組織人事については)知られていない」と説明。堀江氏のプレゼンテーションに繋げました。

2021.11.18 EVENT

経営の未来を創る人材データ活用
新しい時代における組織・人材戦略を先駆者と共に考える
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day2』

HRテクノロジーという言葉が市場に認知され始め、ピープルアナリティクスに取り組む企業が増えつつある中、経営/事業に役立つ真の意味でのデータドリブンHRを実践できている企業は極めて少ないのが実情です。そこで、本セッションでは事業構造の根本的な変化が到来する時代において、戦略を実行に繋げるデータドリブンな組織・人材戦略によって事業発展に貢献してきた先駆者とのディスカッションを通じ、新しい時代の組織・人事戦略を考察。経営者のためのデータドリブン人事の時代の到来を見通すセッションとして、ゲストスピーカーとして、株式会社ブレインパッドの東一成氏をお招きして実施されました。

セッション動画はこちら

 

★ゲストスピーカーの紹介★

株式会社ブレインパッド プロダクトビジネス 本部 本部長
東 一成氏
Kazunari Azuma

大学卒業後、鉄道系の情報システム会社に勤務の後、外資系のアナリティクスツール会社にてプリセールス、プロフェッショナルサービスの部隊でデータマイニング、BI、BSCなどの導入支援を担当。
その後、海外から機械学習システム、MA、分析プラットフォームなどの日本市場への展開を支援し、ビジネス立ち上げ、プリセールス、トレーニング・導入支援、サポート、日本語化などを担当。
現在もMA、拡張分析、ソーシャルメディアアナリティクス、分析プラットフォームに関する国内外のソフトウェアの展開や調査を行っている。
過去にテレコム通信、空港、百貨店、小売・流通、通販、カード、証券、商社、サービスなどの様々な業種への機械学習やMAなどの分析システム導入の経験・実績を持つ。

株式会社ブレインパッド
https://www.brainpad.co.jp/

 

事業におけるデータ活用の広がり


データ活用を“DX”の話題の観点で考える

まず、水谷が「バリューチェーン」の図を用いて、購買、製造、出荷・物流、マーケティング・販売、サービスの各事業活動におけるデータ活用の広がりを説明。そこで、東氏に「企業における代表的なデータ活用事例はどんなものがありますか?」「その際に活用されている新しい技術は?」と質問。

これを受け、東氏はまず、データ活用について国のDXに関わるレポートなどを基に、まずはシステムの話から入りました。

出典:株式会社ブレインパッド

同レポートには、「企業のDXには、いろいろな形のシステムが必要」と記載されています。そのシステムとは、社内情報の記録・維持・管理が目的の「SoR」(System of Record)。人・企業・集団を繋げる仕組みの「SoE」(System of Engagement)。そして今言われているのは、「SoI」(System of Insight)。大量のデータが蓄積されているSoRとSoEから、AIの活用によって意思決定の“支援”のための新たな洞察を導出するシステムです。マーケティングにおいては自動化が進んでいますが、営業における優良顧客とのリレーション構築や、人材育成など人間の内面を理解しての意思決定は自動化が困難。そこで、意思決定に役立つ何らかの洞察を得るために必要とされているものです。

データ活用における機械学習のバランス

この流れで、東氏はデータ活用における機械学習のバランスに言及。データと機械学習の知識や精度が重要な「当たればよい」天気予報や顔認証から、「当てることへの比重が高い」レコメンドなどのリアルタイムパーソナライズ、「当てるだけでなく、その理由も重要」な広告などのターゲティング、そして、確率より「むしろ理由が重要」な退職など人事領域の分析まで、データ活用の目的はグラデーションになっています。「こうなると、AIも通用しない領域があることがわかるようになってきました。このように、広範な領域においてデータが活用されるようになった今、どういった目的でデータを活用するのかをより明確にしてツールを用いる必要があると言えます」と東氏は話しました。

出典:株式会社ブレインパッド

ここで水谷は、東氏の作成資料にある「実はこの(理由が重要な)分野に注目しています」とのコメントについて質問。東氏は「マーケッターや経営者に『このユーザーに来月DMを送信すると商品を買う確率が高い』と説明しても、『すぐやろう』という人はいません。『なぜなのかを知りたい』という人ばかり。そこをうまく説明できないと、社内にこの結果を展開し人を動かすことができないからです。広告でターゲティングされる“理由”がわからなければ人は納得できないのも同様です」と説明しました。水谷は、「そうした領域では、データに現場の業務知識や説明力がより色濃くブレンドされる必要があるのだと思います。そこでは、企業やマーケッターの経験や価値観がより重要になるということでしょうか?」と質問。「いきなり人事データを渡されて『いい社員を探して』と言われても、探せるものではありませんね。理想とされているハイパフォーマーは誰かを聞いてからでなければ、データ分析してもわけがわからないと思います」と東氏は回答しました。

HR領域におけるデータ活用の実態

次に、水谷はHR領域におけるデータ活用の実態を説明。まず、米国のHRテクノロジー市場の傾向を示し、「事業戦略の実現を担う人事戦略に活用されていくとの見通しがポイント」と話しました。日本では、2019年度で約1,119億円の市場があり、現段階で449種類のサービスを確認。2020~23年の年平均成長率は13.7%という成長市場であることが説明されました。

そこで、HRテクノロジー活用領域を整理。求人、採用、配置・登用、組織・人材開発、労務・評価に分類したところ、求人領域で最も適応が進み、配置・登用と組織・人材開発という高度な機能が必要な領域は、今後加速化すると分析しました。

また、現在の人材データ分析としては、管理職比率や労働時間などの単純集計や指標把握、属性ごとのグループ間比較や経年比較に留まるケースが大半であることを示しました。

ここで、水谷は東氏にHRテックついてどう捉えているかと質問。東氏は、HRテックベンチャーが伸びている現状認識や、自社の提供しているMAツールが人材紹介会社に活用されていることに触れ、「たくさんの企業とたくさんの人材のマッチングや、付随して日々発生する連絡業務を、データやツールを活用して効率化させたいとのニーズがあります」と話しました。

本対談の全内容をご覧いただきたい方はこちら

株式会社ブレインパッド プロダクトビジネス本部 本部長 東 一成氏

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2021.2.2 EVENT

ポストコロナの組織・人材戦略を見通す

~戦略人事の新たな役割と経営戦略を組織・人材戦略に落とし込む方法~

 

ReThink Day1 イベントレポート

HRDグループが毎年開催しております「Assessment Forum Tokyo」、今回はオンラインに形を変え、コロナ禍に向き合う新しい未来のための価値あるコンテンツを提供する場として開催されました。 経営戦略やDX、グローバル人事など、より広い視点から組織・人材マネジメントについて問い直し、再出発するための一連のデジタルイベントとして多く方のご参加を賜りました。

今回は、株式会社ライズ・コンサルティング・グループの取締役である佐藤司氏をお招きして開催された、「ポストコロナの組織、人材戦略を見通す。戦略人事の新たな役割と、経営戦略を組織、人材戦略に落とし込む方法」の模様を皆様にお届けします。HRDグループの韮原祐介がモデレーターを務めた対談形式によるイベントレポートです。

 

☆ゲストスピーカーのご紹介☆

佐藤 司 氏 

株式会社ライズ・コンサルティング・グループ 取締役パートナー

ローランドベルガー、コンサルティングベンチャーの立ち上げメンバーとして、戦略立案から実行まで一貫して支援。 小売業、製造業、エネルギー、金融等多くの業界・テーマでの知見を持つ。 ライズ・コンサルティング・グループ参画後は、新規事業戦略案件、海外進出戦略、ビジネスモデルの刷新、中期経営計画等の戦略コンサルティングを担当。

株式会社ライズ・コンサルティンググループ
ライズ・コンサルティング・グループ社では様々なクライアントや経営層に対して、デジタル・トランスフォーメーション(DX)やディスラプトの戦略立案から実行まで一気通貫のご支援をされています。
これらに関してお困りの際には、気軽にご相談ください。

https://www.rise-cg.co.jp/

また、ライズ・コンサルティング・グループ様のサイトにおいても、当イベントについての紹介をいただいておりますので、ぜひご覧ください。

https://note.com/rise_cg/n/nf093318ec2a2

佐藤様、この度のご登壇への協力、誠にありがとうございました!

 

コロナ禍における経営環境の変化をチャンスに変える

 

韮原早速ですが、ポストコロナ、あるいはデジタル化が進んでいく中、組織や人材に対する考え方にどのような変化が生じ、それを経営者や人事担当者がどのように捉えているのか、その現状から簡単にお話しいただけますでしょうか。

佐藤これをチャンスと捉えるのか、ピンチと捉えるのか、それは経営者次第だと思っています。僕はこのような変化はチャンスと捉える方が得だと思っています。世の中が、どのように変わっていくのかを見据え、先手を打った人が有利になっていくと考えています。ですから本日は、そのような観点からお話できたらと思います。


韮原企業の経営戦略は、withコロナやポストコロナでどのように変わっていくのでしょうか。コロナの有無に関わらず、デジタル化は急速に拡大しているので、その点も含めてお聞かせください。 

佐藤今回、COVID-19の感染が拡大した結果、感染予防のために、各国で移動が制限されました。移動が制限されたといっても生活はしなければなりませんし、少し落ち着いた頃には事業も回していかなければなりません。そのための手段として、デジタル化が進んでいます。
様々な領域でデジタル化が進んでいますが、その結果、閾値を超えて軸足が変わってくる領域が現れます。軸足が変わった世界を様々な角度から考えてみると、「こうすれば、もっとよくなる!」という変革や再構築のチャンスはたくさんあるように思います。

分かりやすい例では、営業シーンは大きく変わってきたと思います。従来は対面営業が中心で、例えばBtoBであれば、お客様にアポを取ったのちに訪問し、会議室で話すことが多かったと思います。しかし最近では、ZoomやTeamsなどのオンラインに変わってきています。これは、「営業チャネルがデジタルに変わったと」捉えるだけでは不十分ではないかと思います。

「営業シーンの変化」 出典:ライズ・コンサルティング・グループ

おそらく変化の本質は二つあり、一つは、「ブラックボックスの透明化」かと思います。つまり、リアル営業の頃は、上司である営業課長が部下の営業を同行して中身を把握できるのは、多くても10%程度だったかと思います。それがオンライン営業になると、仮に録画をしていればその録画データを解析できますし、例え録画をしなくても、最近はストリーミングで音声や表情を解析できるようになっています。したがって、全件モニタリングが可能になったわけですね。

もう一点の変化は、「地理的な制約からの解放」です。つまり、リアル営業の頃は、移動時間を計算して動いていたので、例えば都内であれば1時間のアポのために、最低でも2時間~3時間はブロックしていました。出張では1日、2日ブロックする必要がありました。しかし、それがZoomやTeamsを使用することで、東京にいながら、一瞬で沖縄の方とでも、北海道の方とでも会話をすることができます。したがって、移動時間や地理的な制約が無くなりました。

このような変化を捉えると、営業はどのように再構築できるのか?例えば、会議動画をストリーミングしていく中で、自然言語解析を使いテキスト化したり、サマリにしたりできれば、議事録もある程度は自動作成できます。そして、その議事録をSalesforceに自動的に登録したり、Salesforce上でステージ管理ができるようになります。例えば、初回の商談だったけれども見積依頼をもらったのでステージを進める、ということも自動的に管理できるように、営業の周辺業務も効率化できると考えています。

さらに次のステップになると、ストリーミングをしながら、営業マンと相手の表情や会話内容がどれだけシンクロしているのかを解析することができるようになります。心理学でいうミラーリングの度合いによって商談を評価したり、表情の作り方・話し方含め、「これを直せばもっと良くなる」という基本トレーニングも自動化できるようになります。
さらに言いますと、商談の進捗があるものと、進捗が無かったものを比較したときに、どのような話法の違いがあるのかといったことまで分析できるようになります。つまり、ベストプラクティスの抽出と展開ができるようになります。デジタルの世界でいうA/Bテストを、オンライン商談にも導入し、話法を進化させることができます。 

さらには金融や不動産では、重要事項説明をしっかりとする必要があったり、金融においては、「絶対に儲かる」といったようなNGワードがあるので、全件モニタリングができることによって、コンプライアンスも格段に改善することができます。

このように効率化が進んでいけば、人間は単純業務から解放され、より高付加価値業務に特化できるようになります。地理的な制約を外すことにより、全国に営業組織を持っている会社であれば、エリアごとに人を配置する必要もなくなり、商品やプロダクトごとに地理を問わず、例えば広島にいる人が日本全国のある特定のサービスについて常にバックアップできるような体制を持つことができるようになります。

「営業シーン再構築」 出典:ライズ・コンサルティング・グループ

しかし人間は変化を嫌う、恐れる動物なので、不安を感じる人や順応できない人も出てきます。したがって、その部分のケアはとても重要になってきます。特にデジタル化が進んでくると、例えば会食などで仲良くなるという機会がなくなるので、疎外感を感じたり、不安になる方も増えてきます。そこをどうするかは非常に重要ですね。
今は、営業職という分かりやすい例で説明しましたが、その他にも不動産や小売、医療など様々な分野でも様々な「再構築」は見られます。例えば、不動産の軸足がどのように変わるのかというと、これまでは住職近接が基本でしたが、それがテレワーク中心になってくると、住む場所=好きな場所になります。そうなると、まずはどのような建物を建てるのかというレベルで再構築が必要になっています。

また、テレワークに相応しい住居レイアウトについては最近、話題になっていると思います。例えば、夫婦共働きで1LDKに住んでおり、夫婦2人のオンラインミーティングの時間が重なったとします。2人ともリビングにいるとお互いの声が入ってしまうので、リビングと寝室に分かれるしかありませんが、寝室ではカメラをオンにしにくいという問題などがあると思います。また、小さなお子さんがいた場合は、その泣き声が入ってしまうという問題も出てきます。これらを、レイアウトの工夫でどう改善できるか?

さらに、住む場所を変えるとなった場合、その人にとってのコストパフォーマンスがいい場所を探すと思います。但し、職場のそばに住まなくてもよいとなると、検索が一気に難しくなります。そのあたりが改善されると、人の動きもダイナミックになってきます。例えばファミリー層で家賃を10万円支払って都内に住んでいる方が、都内を離れて同じ条件の月10万円で家を買おうとすると、石川県金沢市でも月10万円のローンで150平米の土地に100平米の建物がついた新築一戸建てが買えます。また近場では、横浜市の戸塚は同じくらいの値段で買えます。どんどんライフワークバランスを良くするための工夫ができます。このような再構築が至るところで出てくるというのが、コロナを見据えたときの戦略変化だと思います。

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