HRDNext経営戦略策定の手引き事業×組織×人材の戦略統合による新時代の企業成長論
HRDNext経営戦略策定の手引き事業×組織×人材の戦略統合による新時代の企業成長論

HRD株式会社 - Human Resource Development

" HRD Next " に関する記事
2022.4.27 EVENT

組織文化の変革と、そこで求められるリーダー像とは
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session4』

経営環境の変化の中でも、他社との差別化を図り組織を継続的に成長させるための重要な要素は、“人”です。
世界のCEO・経営幹部に対する調査GLF(※)から得られた洞察をもとに、変化の時代に求められているリーダー像と、戦略を加速させる組織文化について、プラクティカルな事例を交えながら議論を進めていきます。

※ GLF・・・グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト
MSC社のパートナー企業であり、世界中の組織に対して優れたリーダーの採用、選抜、育成を支援しているDDI社が、1999年から隔年で実施している世界規模のリーダー調査で、日本ではMSC社が主体となって実施しています。
9回目となる最新の調査は、HR業界の著名なアナリストであるジョシュ・バーシン氏と協働で行い、世界50カ国以上、24業界から2,102人の人事担当者と15,787人のリーダーの回答を検証しています。
                                                  ※GLFはこちらからダウンロードできます。 

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。



◇ゲストスピーカー◇


株式会社マネジメントサービスセンター
代表取締役社長
遠山 雅弘
(Tohyama Masahiro)
早稲田大学第一文学部卒。株式会社帝国データバンクを経て、株式会社マネジメントサービスセンター入社後、役員や事業部長などのエグゼクティブクラスの選抜・育成に関するグローバルプロジェクトに数多く携わる。2019年より現職。提携先のDDIとの連携を深め、企業戦略に基づくタレントマネジメントのコンサルティングに従事。現在、経営陣をリードし、企業の人材戦略・育成分野において、企業の成長を支援し続けるHRパートナーとしての企業価値の創造に取り組む。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
執行役員 シニアコンサルタント
久保田 智行

 

事業環境の変化と、それに伴う組織・人材課題

HRDグループは、様々な専門性を持つパートナーと共にお客様のリーダー育成を支援しています。
本セッションは、30年以上、パートナーシップを組んで共に取り組んでいる株式会社マネジメントサービスセンター(MSC)より、代表取締役社長の遠山雅弘氏をお招きし、お話いただきます。

まずモデレーターが、本セッションの背景となる事業環境の変化と、それに伴う組織・人材課題について説明。事業環境の変化としては、破壊的新技術の動向や高まる地政学的リスク、強化される政府規制などによる高まる一方の不確実性を指摘。その背景の中で、人事制度を適合させるための4つの方針として、

   事業戦略・組織戦略と統合された流動的な人材戦略の立案・実行
   人材マネジメントのパーソナライズ化とマイクロフィードバック
   人材マネジメントの確実性を上げるためのデータ活用
   経営層のリスキリングをきっかけとする「学習する組織文化」の醸成
   ⇒戦略にアラインする人材の特定、個々人の測定、アダプティブな育成施策の提示が必要

との提言を提示。
この4つの方針を推進させていく上で、HRDグループの心理学・統計学を駆使したアセスメントツール(DiSC/ProfileXT/CheckPoint360)と、経営/組織/人事に関して高い専門性を持つパートナー企業との協働により、お客様を支援していることに触れ、遠山氏のプレゼンテーションに移りました。

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大規模調査に基づくリーダーシップの現在と未来:今後10年間で最も変化すること

遠山氏はまず、MSCを紹介。人材アセスメントを中心にコンサルティング、リーダーシップ開発などを手掛け、年間600社以上・80%以上が継続利用の企業と取引し、過去55年でのべ150万人以上の育成支援を手掛けていること、また世界最大手のリーダーシップ・コンサルティング企業である米DDI社と協働で93か国での多国籍プロジェクトを実施していることに触れました。

続いて本題に入り、「大規模調査に基づくリーダーシップの現在と未来」について説明を開始。まず、DDI社と協働して行っている「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト(GLF)」を紹介しました。1999年にスタートし9回開催したグローバルで最大規模のリーダーシップ調査で、2014・15年は「VUCAと戦略人事」、2017・18年は「デジタル・リーダーシップ」をテーマとして実施。コロナによるパンデミックの渦中である2020年に調査を行ったGLF2021においては、世界1万5,787人のリーダー(うち日本は1,043人)、2,102人の人事担当者(同89人)が回答しています。

遠山氏は、調査項目の「今後10年間で最も変化すると考えることはどれですか?」の結果について説明。
グローバルと日本企業のCHROの結果を下記のとおり示しました。

               出典:株式会社マネジメントサービスセンター

グローバルではリスキルが最も変化すると考えられているのに対し、日本では最も変化しないと考えられており、遠山氏は「こうした結果が現在のグローバルと日本の格差となって表れているのではないでしょうか」と指摘。日本では、アウトソーシングやパートタイムが最も変化すると考えられており、「標準化できる仕事にはなるべく固定費をかけず、正社員はクリエイティブな仕事に集中させていこうとする姿勢が示されていると思います」と解説。久保田は「組織を変化させていく具体策として、アウトソーシングやパートタイムが位置付けられているのではないでしょうか」とコメントし、遠山氏は「環境変化や戦略のアップデートに合わせて組織を流動化しやすくする狙いがあると考えられます」と応答。また、「リーダーになる意欲を持つ人材の低下」がグローバルでも日本でも共通している課題として挙げられています。日本の特徴としては、「従業員の忠誠度(の低下)」が挙げられ、遠山氏は「ロイヤリティの形が変わってきているのがうかがえます」とコメントしました。

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2022.4.25 EVENT

AIアナリスト・エンジニアに求められるソーシャルスキル
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session3』

労働力不足のなかで、時代のニーズにマッチした特性を有する人材の確保は簡単ではありません。一方、ビジネス環境の変化に伴い、人材に求められるスキルにも変化が起こり、「リスキリング」が企業の重要な課題に。着目すべきことは、高度な技術スキルとともに、ソーシャル・エモーショナルと呼ばれる対人関係スキルの重要性が増していることです。 日本の労働力不足の中で今後人材が集積する領域として、介護・医療とAI・デジタル市場が挙げられます。
本セッションでは、データ解析の先進企業であり、時代を先取りするブレインパッド社AIアナリスト・エンジニアを統括する方々にご登壇いただきました。優秀なハイスキル人材を抱える組織におけるマネジメント課題と、その解決に向けた取り組みをご紹介し、必要なスキルを有する人材を集め、そのポテンシャルを活かして競争力を高めるために、これからの企業・組織はどのようなことに注力していけばよいか議論していきます。

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。

 

 

◇ゲストスピーカー◇

株式会社ブレインパッド
プロダクトビジネス本部 本部長
東 一成
(Azuma Kazunari)
大学卒業後、鉄道系の情報システム会社に勤務の後、外資系のアナリティクスツール会社にてプリセールス、プロフェッショナルサービスの部隊でデータマイニング、BI、BSCなどの導入支援を担当。その後、海外から機械学習システム、MA、分析プラットフォームなどの日本市場への展開を支援し、ビジネス立ち上げ、プリセールス、トレーニング・導入支援、サポート、日本語化などを担当。現在もMA、拡張分析、ソーシャルメディアアナリティクス、分析プラットフォームに関する国内外のソフトウェアの展開や調査を行っている。
過去にテレコム通信、空港、百貨店、小売・流通、通販、カード、証券、商社、サービスなどの様々な業種への機械学習やMAなどの分析システム導入の経験・実績を持つ。

株式会社ブレインパッド
プロダクトビジネス本部 プロダクトデザイン部 エンジニアリングマネージャー
柳原 淳宏
(Yanagihara Atsuhiro)
自社プロダクトRtoaster、L2Mixerの開発を経て、現在はConomiのプロダクトマネージャー兼開発を担当。
レコメンド/マッチング技術を中心に企画、提案から開発、チューニングまで数多くの案件に従事。また新卒採用から研修までの人材育成業務を担当。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
執行役員 シニアコンサルタント
久保田 智行(Kubota Tomoyuki)

 
データ活用人材を育成する組織が抱える現在の課題
 

まず東氏が、ブレインパッド社の概況を説明。データ分析、システム開発、コンサルテーション、デジタルソリューションの販売・導入といったデータに関わる全方位的なビジネス展開を行っていること、各ビジネスを行ういくつかの本部はそれぞれが上場できるほどの規模があるといった組織の特徴、約150名という国内最大級のデータサイエンティストを擁するとともに、データ活用人材を育成講座で5万人以上育成・輩出していること、およびプロダクトビジネス本部として、多様なニーズに対応するための開発および海外ソリューションの国内展開といった組織の拡大・変更を実施中で、組織全体の底上げとマネジメント力強化が求められているという現状の課題を話しました。

次に東氏は、上記のプロダクトビジネス本部の課題への対応策に言及。このほどHRDとともに、特にスキルフルで多様な人材を活かすマネジメント力強化に向けた1stステップとして、グループマネージャーや部長層とメンバーとの関係構築力強化への取り組みに着手した経緯を次のように説明しました。

「多様な部門が統合されて一つの本部になったこともありますが、コロナ禍によるリモート環境下で、チャットやオンラインミーティング中心の非言語情報が不足するコミュニケーションの難しさの中、会社全体の価値観をいかに落とし込めるか価値観が違うメンバーの成長をいかに促進させるか他部署の思いを汲んでいかにスピーディーに連携を進めるかといった課題がありました。そうした中で、相手の志向や考え方を理解することで、より強固なコミュニケーションや組織構築が行えると判断し、1stステップの取り組みを行うこととしました」

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2022.4.22 EVENT

個のキャリア自律が組織の未来を創りだす
–海外駐在員のキャリア開発から学ぶ人材マネジメントのこれから–
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session2』

パンデミックとデジタル化の加速によってビジネスの在り方や市場のニーズが変化する中、働く個人には、これまでのビジネススキルをアップデートしたり、全く新しい領域のビジネススキルを獲得するといった、アップスキル、リスキルの必要性が高まっています。また、終身雇用の終焉によって、企業組織と個人の関係性もこれまでと大きく変化していく中で、働く個人は、自分自身の働く意義をどのように見出し、そして自律的なキャリアをどのように描いていくかについての責任を持つことになります。

本セッションでは、キャリア開発にフォーカスを当て、2名のゲストスピーカーと共にその本質に迫ります。 いま、働く全ての個人は、どのようなキャリア観を持ち、自己を開発していくべきなのか?また雇用側である企業は、個々人のキャリア開発実現のために、どのような人材マネジメントの仕組みを上積みし、マインドチェンジを果たさなければならないのかを考察していきます。モデレーターは、HRDグループ・プロファイルズ株式会社ディレクターの福島竜治が務めます。

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。

 

目次

 ◇ゲストスピーカーの紹介◇ 

 <前編>
KDDI版ジョブ型人事制度
グローバル人材強化のための赴任前研修と人材アセスメント活用
海外赴任者の成否を分けるキャリア観とは?

 <後編>こちら
コンフォートゾーンに安住している日本の弱み
“Like”より“Able”
「自己の相対化」はキャリア観を醸成する
学びへの好奇心、混乱に飛び込む勇気

 

◇ゲストスピーカー◇
 

KDDI株式会社
ソリューション事業企画本部 海外事業推進部マネジャー
武井 章氏
(Takei Akira)
法人事業部門において、営業、海外事業企画、合弁子会社設立を経て2015年から人事、組織開発、人財育成、評価を担当し、特に海外グローバル事業人財の育成、キャリア開発支援を推進。現在海外現地法人社長のHRBPであり、また海外出向者へのProfileXTを用いたキャリアコンサルタントとしても活動している。

グローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社
代表取締役
福田 聡子氏
(Fukuda Satoko)
ウィスコンシン州立大学卒。 大学卒業後人材育成の会社に入社し、新人賞をとるなどして活躍するも、バブル崩壊に伴う業績悪化で他業界に転職。そこで、自分が人材育成の仕事が好きであることを再確認し、業界に戻り本質的なグローバル人材育成への興味を深める。 2000年独立、以来、講師、コンサルタント、経営者としてクライアント400社のグローバル人材育成を支える。 各分野のプロフェショナルとの協働の中で一つ一つ目的に基づいた企画・運営を重ねることで、参加者の人生に大きなインパクトを与え「あの研修なしには今の自分はいない」と言っていただくことが無上の喜び。 常に顧客の視点に立ったコンサルティング、個々の研修参加者のキャリアを考えてのアドバイスなど、その情熱あふれるスタイルは顧客から高い評価を得ている。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
ディレクター
福島竜二 (Fukushima Ryuji)

<前編>
KDDI版ジョブ型人事制度
          KDDI株式会社 ソリューション事業企画本部 海外事業推進マネジャー 武井 章氏

まず、福島がグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ社(以下、グローバル・エデュケーション)がプロファイルズ社のパートナー企業として「ProfileXT(PXT)」を、KDDI社のグローバル人材の育成や見極めに活用しているという三者の関係性を説明、謝意を表明した後に武井氏のプレゼンテーションに入りました。

武井氏は、KDDI社の通信事業をベースとした個人向けおよび法人向けの事業セグメントに触れた後、自らが担当する、世界25地域・58都市・79拠点に2,200名を擁しているグローバル拠点に言及。「約200名の東京採用スタッフが出向し、約2,000名のナショナルスタッフと一緒にお客様をサポートしています」と説明しました。

同社は、2020年7月末、「時間や場所にとらわれず成果を出す働き方の実現へ、KDDI版ジョブ型人事制度を導入」というリリースを実施。
これについて武井氏は、
 市場価値重視、成果に基づく報酬
 職務領域を明確化し、成果、挑戦、能力を評価
 Willと努力を尊重したキャリア形成
 KDDIの広範な事業領域をフル活用した多様な成長機会の提供
 「企業の持続的成長」と「ともに働く人の成長」

 という5つの柱に基づいた、プロを創り育てる“KDDI版ジョブ型”の新人事制度の主旨を説明しました。

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グローバル人材強化のための赴任前研修と人材アセスメント活用
 

次に、グローバルにおけるIoT、ICT、(通信)キャリアビジネスといった法人向け事業領域を紹介。これらの業務は東京本社にもあり、国内の社員がグローバルに活躍できる素地があることに触れ、「海外で働きたいというWillを持つ人材を求めています」とコメント。本社よりも少人数の海外拠点では、異文化の中でより広範な業務と大きい責任を担うやりがいがあることを強調し、“グローバルで挑戦し成長するプロ”の集団を目指していることが話されました。

                       出典:株式会社KDDI

続いて、グローバル拠点においては、顧客の属性×サービスの種類×エリアの組み合わせによる多くの領域で専門性を磨けるチャンスがあること、および「KDDIフィロソフィ」や「行動の原則」によって人として成長できる風土について説明されました。
「プロを目指し、人として成長していくことが成果・貢献に繋がるというマインドセットを赴任前研修で伝えています」と武井氏。

その赴任前研修の目的は「現地に立った時から、『垂直立ち上げ』するための研修」であること。
特に、その中でのグローバル・エデュケーションによる「ありたい姿の認識」「自身の能力、コアコンピテンシーの認識」についてのプログラムの重要性が説明されました。
同社では、自身の特性や強みの認識と、人財データの蓄積という2つの目的でPXTを活用。「特に前者において、赴任者に価値を提供しています」と武井氏は言います。海外赴任の内示を受けた際に、不安を感じる社員のほうが多く、そういった人に、自身の特性を知るためのセルフコーチングの材料として提供する狙いがPXTにはあります。

海外赴任者は、PXTの自身のアセスメント結果を用いて、過去の具体的なシーンを想起しつつ自らの思考スタイルや行動特性、仕事への興味を振り返り、自らの能力を棚卸し言語化する意義について言及。

                      出典:株式会社KDDI

一方、4年間で250人分の人財データが蓄積され、赴任者派遣のタイミングでの継続データの取得、人財ポートフォリオの構築、ハイパフォーマーモデルの確立といったグローバル事業マネジメントモデルが構築された意義についても説明されました。

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海外赴任者の成否を分けるキャリア観とは?
 

ここで武井氏の発表が終わり、福島がKDDIの新人事制度のキーワードは「自律と責任」であることに言及。
会社として整備するジョブ型人事制度ですが、個人が自己の責任の下に自律的にキャリアを歩むマインドがあって、初めて成果につながることが紹介されました。

福島は、海外駐在員はグローバルにチャレンジするというポジティブな面がある一方、不慣れな環境で働くことの難しさがあるとの認識を示した上で、うまくいく人材といかない人材の分かれ目について武井氏に尋ねました。

武井氏は、「自分がどうなりたいのかを明確に考え、つくっていける人」と説明。
上長との1on1の中で、ありたい姿と現在の仕事を照らし合わせたり、赴任者が悩んだ時などに武井氏がPXTのレポートを共有しながら1on1を行うなどして、自らの特性と将来ビジョンとの繋ぎ合わせを行う場を設けていることに触れ、アセスメントの効用に言及しました。

福島は、氷山に例えて、水面上のビジネス環境においてチャレンジな状況が生じた際に、水面下の本人の内面を再認識することに武井氏がアセスメントを活用していることを確認。武井氏は「(アセスメントを通じて自分自身のことを)言語化できることがとても大きいと思います」と応じました。

福田氏は、「KDDIの赴任前研修で、PXTにより自分自身を言語化できた効用を明確に感じたことがあります」とコメント。その赴任者が過去うまくいかなかったこととアセスメントの結果が繋がったことを挙げて、次の赴任機会ではうまくいく自信に繋がっていることを表明したエピソードを紹介し、「自分の強みとWillを言語化し明確にする効用をはっきり感じました」と述べました。
「自分の強みに気づいてブレークスルーできた機会」と福島は応じ、自分自身を客観視する重要性に言及。福田氏は、個人は自分がわかっているようでいて自分に関する情報の書き込みを行ってはいないと指摘し、「自分がわかった上で、次にどうしたいかというステップを踏む」と話しました。

当日の動画はこちら よりご覧いただけます。

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2022.4.20 EVENT

流動性組織:未来の企業競争力は「流動性」が決する
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session1』

変化への耐性は組織のリキッド化(流動性・柔軟性の高さ)によってもたらされるという長年の学術研究の成果を解説します。さらに、研究成果に加えて、数々のFortune500企業のトップマネジメントに対するコンサルティングの実践経験も踏まえて、日本企業に必要な改革の処方箋を提示します。

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。

 

 

◇登壇者の紹介◇
 

マイアミ大学ハーバートビジネススクール副学長、マーケティング学部長
アルーン・シャーマ教授
(Arun Sharma)
グローバル市場のトレンド、市場構造、マーケティング戦略を主な研究領域としている。ビジネススクールでの教育・研究の傍ら、アクセンチュア、アメリカンエクスプレス、AT&T、アウディ、HP、IBM、マスターカード、ペイパル、P&G等、様々なグローバル企業への豊富なコンサルティング経験を有する。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
取締役
韮原 祐介(Nirahara Yusuke)

 

ディスラプションへの備えとしての流動性
ディスラプションを防ぐ流動性

まず、韮原が本プログラムのDay1を振り返り、「事業環境の不確実性が高まる中、企業のミッション、ビジョン、バリューに基づき、組織や人材をいかに素早く市場環境に適応させていけるかが問われる中、登壇各社におけるEverything DiSCProfile XTCheckPoint360°の活用事例などを聞くことができました」と概括した上で、不確実性の高い経営環境に対応するための流動性組織(Liquid Organization)の研究で知られる本セッションの登壇者、アルーン・シャーマ教授を紹介しました。

次に、シャーマ教授はプレゼンテーションの前に背景を説明。企業間および国家間競争に興味を持つ中、2018年頃からディスラプション(破壊)の問題が深刻化。複数の国家や企業の関係者から要請を受け、1年ほどを費やしてディスラプションの類型を提示したと言います。「すると、そうしたディスラプションを防ぐ方法を問われ、本日のテーマである“流動性(Liquidity)“の概念に到達しました」と述べました。
「流動性」は国家と企業の双方に通用する概念ですが、本セッションでは企業について扱います。

ここからシャーマ教授はプレゼンテーションに入りました。

まず、研究方法として数多くのCEOやCFO,業界の専門家などと調査研究を行ってきたことに触れ、「現在はグローバルな医療機器会社とディスラプションへの対処法について議論しています」とコメント。また、これまで15回来日し、大企業だけでなく中小企業にも訪問したと言います。

組織における速度、柔軟性、加速(と減速)と両利き


本題に入り、流動性組織とは何かについて「流動性とは、組織における速度、柔軟性、加速(と減速)、そして両利きのことを指します」と説明。どれだけ速く製品を開発できるか。どれだけ素早く方向転換できるか。そして、速度と柔軟性の違いについて、一つの例を示しました。

14年前、携帯電話市場は14%のシェアを持つノキアが支配。2番目はサムスン、3番目はブラックベリーでした。現在はサムスンがトップシェアを握り、ノキアやブラックベリーの電話はもう見かけることはありません。重要な点は、ノキアは週に数台の新機種を導入していても、柔軟性がなく事業全体の方向を変えることができなかったこと。スピードだけでなく、柔軟性も必要なのです。

速度と柔軟性に続く3つめの要素は、スケーラビリティ(拡張性)。どれだけ速く、新たな立ち上げや、逆に規模の縮小ができるか。例として、アメリカ市場におけるトヨタを取り上げました。ベストセラーは「カムリ」でしたが、消費者ニーズは急速にSUVに移行。現在最も売れているトヨタのSUVは「RAV4」ですが、その移行は困難でした。トヨタだけでなく、大半の自動車メーカーはベストセラー車種のスケールダウンとSUVのスケールアップができなかったのです。

この加速と減速をどれだけ速くできるかが重要」と指摘します。

最後に、両利きであること。
現在の顧客からどれだけ多くを得るかという“Exploitation”(深化)と、新たな顧客をどれだけ探るかの“Exploration”(探求)です。

流動性のある例・ない例


こうした流動性は、迅速な対応を可能にし、組織を行きたい方向に動かすことができますが、阻害するのは組織間の“壁”。製造とマーケティングは通常話し合う必要がなく、間に高い壁ができてしまいます。「しかし双方で、より深い会話ができれば、こうした壁がなくなり企業はより流動的になります」と指摘します。

次に、流動的ではないものを例示。プラハのトラム(路面電車)は電線が必要で、一路線しかなく、非常に固定化されています。
一方、ニュージーランド航空の場合。カタール航空がマイアミに運航を開始すると、ニュージーランド航空の当初の現地スタッフは1人であったところ、ダラスと兼務の0.5人となりました。なぜもっと人が必要ではないのか。チェックインや貨物の受け取り、機内食、燃料サービスのすべてが外部に委託されています。そして、当日のスタッフや機長、副操縦士、フライトクルーは翌日に帰る。「簡単に言えば、ニュージーランド航空はほぼ7日で飛行を開始できる。これが流動的ということです」と言います。

こうした流動性のある企業は収益が高く、成長も速く、レジリエントであるという特徴があります。
「コロナ禍でも生き残った企業はより流動性が高かった」と指摘。流動的な企業には戦略的思考と革新性があり、顧客満足度が高く、エンゲージメントの高い顧客を獲得していて、こうした顧客が高い収益をもたらしているのです。

次に、流動的でない4社として、GM、RCA、シアーズ、ノキアを例示。
GMは、日産やホンダの高品質によって攻撃され、今ではトヨタがGMより多くの車を販売しています。RCAは米国で最大のテレビのブランドであったものが、ソニーの小型化技術に攻撃されて消滅。今度はソニーがサムスンやLGに攻撃されています。かつての世界最大の小売業者、シアーズは、すでに存在していません。ノキアもアップルに襲われて存在をなくしています。

「これら4つの企業に共通しているのは、流動的ではなく、方向を素早く変える能力を持っていなかったことです」と指摘します。

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2022.4.20 EVENT

事業×組織×人材の戦略統合による新時代の企業成長論
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day1_Session2』

まだ出口の見えないパンデミック、不安定な地政学的状況、デジタル技術の進展によるディスラプター(破壊者)の脅威など、企業経営における不確実性が益々高まっています。こうした不確実な環境を企業が生き抜くためには、明確な戦略と刻々と変化する外部環境・内部環境に応じた流動性の高い組織と人材作りが必須となります。本セッションでは、まず経営戦略の50年史を振り返り、いま話題となる “両利き経営”や“パーパス経営”などといった経営思想のパラダイムの背景について解説することから始めます。その上で、不確実性の高い環境下で流動的な組織をいかに作るか、適応力の高い人材をいかに作ればよいのかについて解説します。

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。

講師
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
取締役
韮原 祐介 (Nirahara Yusuke)

 

まず、韮原は基本となる考え方として、事業×組織×人材の各戦略が統合された経営戦略を提起。
経営者が人事を、人事が経営を語る統合が企業成長のカギとなることを示し、セッションに入りました。

 

経営戦略論の歴史と現在
 

“ポジショニング” “ケイパビリティ” “イノベーション” “両利き” 各重視の論調

1960年代から経営戦略にも科学を持ち込むべきとの潮流が特に強まり、80年代にかけてアンドルーズの「SWOT分析」、BCGの「PPM」、マイケル・ポーターの「ファイブ・フォース」など、「儲かる市場で儲かる手法を行使すべき」という“ポジショニング”を重視する論調が主流を占めました。

80年代に入ると、マッキンゼーの「7S」、BCGの「タイムベース戦略」、ハマーの「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」、ハメルの「コア・コンピタンス経営」といった企業の内部環境を重視する“ケイパビリティ”指向の論調が起こりました。

その後、どちらが正しいかとの論争が続き、90年代後半にはミンツバーグの「コンフィグレーション戦略」という中間的な論調が登場します。

またほぼ同時期に、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」、2005年代頃にはキム/モボルニュの「ブルーオーシャン戦略」といった“イノベーション”重視の論調が起こります。

2010年頃になると、マグレイスの「競争優位の終焉」、BCGの「戦略パレット」、最近になってオライリーの「両利きの経営」を重視する論調に流れてきています。

戦略パレット」は、予測可能性および改変可能性の高低を組み合わせるなどした5通りのアプローチを状況に応じて適合させる戦略。
両利きの経営」は、“破壊的イノベーションを持つ新規事業”(知の探索)と“既存事業の持続的イノベーション”(知の深化)の双方を追求する戦略です。

経営戦略論の変遷の背景

以上の経営戦略論の変遷には背景があります。ケイパビリティ派の登場の背景には、60年代後半からの内部環境を重視する日本企業の躍進があります。イノベーション派の登場の背景には、“盛者必衰”をもたらす破壊的技術の出現があります。両利き派登場の背景には、金融危機やGAFAの躍進が挙げられます。
「そして最近ではパンデミックが起こり、不確実性が極めて高い状況が今後の経営環境の特徴と言えます」と韮原は指摘します。

ここで韮原は、それぞれの経営戦略を実践している例として、USJの立て直しに成功した森岡毅氏のケースを取り上げました。“ポジショニング”としては、ハリウッド映画から総合エンタテインメントへのポジショニング変更、“ケイパビリティ”では逆向きジェットコースターや戦略人事強化、“イノベーション”としてはVRアトラクションや沖縄テーマパーク構想におけるブルーオーシャン戦略、“両利き”としてはハリーポッターへの大型投資や地磁気センサーを用いたO2Oマーケティングなど。加えて、数理・統計学を用いた需要予測を行うことによる不確実性の緩和施策を挙げています。

経営戦略の4ポイント

以上を踏まえて、韮原は経営戦略を策定する上で押さえるべき4つのポイントを指摘しました。

勝つための戦略的ポジショニングも、それを実行する組織・人材も、双方ともに重要であること
競争優位は持続しないため、新事業創出と既存事業の改善の両利きが重要であること
市場の不確実性が高いため、新事業創出に当たっては探索的に実験しながら試すことも考慮すべきであること
 (ある程度の失敗は許容する必要があること)
数学・統計学などを駆使しながら、定量データによる市場分析を綿密に行うことで、事業の成功確率を飛躍的に
  高めることができること

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2022.4.14 EVENT

デジタル変革とピープルアナリティクスの未来
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day1_Session4』

多くの企業がデジタル変革に取り組み始める第一歩として、社内にデジタル推進組織を立ち上げています。DX推進では、新規サービス創出等の不確実性の高い取り組みにおいて、できるだけ多くのアイデアを出し、関連施策を走らせていくことが一つの成功要因。しかし、そうした取り組みにあたり、多くの企業でDX人材不足が報告されています。そのため、社内人材の能力開発だけでなく、外部人材確保に向けた経験者採用、また適正配置や処遇に関する人事制度の再設計と仕組み化が喫緊の課題となっています。 当セッションでは、デジタル変革に求められる新規事業創出を可能とする組織・人材をどのように生み出せばよいのかについて、NTTデータでの取り組みを元に考察。同社がデジタル変革に挑むために立ち上げた「出島」組織を切り口とした組織人事の取り組みや、組織のミッション・ビジョン・バリューを起点とし、ピープルアナリティクスを活用した組織風土形成、人材育成の現在進行形のプロセスを、事業トップとそれを支えるコンサルティング部門のリーダーからご紹介いただきます。

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。

目次

 ♢ゲストスピーカーの紹介♢

 <前編>
デジタル戦略室のTalent Transformation戦略
現場、DSO、人事の“三位一体”がポイント
SDDX事業部のミッション
SDDX事業部の組織課題と解決施策

 <後編>はこちら
PXTで人が変わり文化が変化する土台に
「PXT統括読み替え表」で到達度を深める
PXTの人財還流とジョブマッチへの活用
企業と社員のマッチング追求が大きな流れに

◇ゲストスピーカー◇


株式会社NTTデータ
ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部長
内山 尚幸氏 
(Uchiyama Naoyuk)
1996年当社入社。カード&ペイメント事業部ビジネス企画統括部長、ITサービス・ペイメント事業本部サービスデザイン統括部長を経て、2019年4月より現職。ペイメント領域の新サービス企画、リテール・サービス業界をターゲットとしたソリューション企画などに従事。
グローバルブルー・ティエフエス・ジャパン株式会社 取締役。ネットイヤーグループ株式会社 取締役。

株式会社NTTデータ
コンサルティング事業部 部長
コーポレート統括本部 デジタル戦略室(Digital Strategy Office)兼務
東谷 昇平氏 
(Touya Shohei)
2002年にNTTデータに入社。セキュリティ、データセンタ、クラウドの事業に従事し、SI、ソリューションセールス、企画・マーケティング、アライアンス、ハイアリングなどの職務を経験。近年はコンサルティング事業部にてデジタルタレント・ピープルアナリティクス、マーケティング・ブランディングを手掛ける。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
ディレクター パフォーマンスコンサルタント 
水谷壽芳

 

<前編>

デジタル戦略室のTalent Transformation戦略

ゲストスピーカーの自己紹介トークの後、セッション開始。 まず、東谷氏が「デジタル変革の取り組みの背景」について説明を行いました。東谷氏が在籍しているデジタル戦略室(DSO)は2017年にスタート。まずは“デジタル”についての概念の社内共通化を図るべく、役員や事業部長を集めて丸一日議論したことが報告されました。その場では「顧客の期待する成果」「顧客にとってのデジタル化」「デジタル化を実現する6つの領域」を定義。その上で、DSOは同社のデジタルビジネス加速化のために、次の3つの戦略を導出しました。

 

            株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 東谷昇平氏

    ① Direct Investments受託から顧客との新ビジネス創出へのシフトへの投資
    ② Strategic Partnerships変化の激しいデジタルへの取り組みを行う仲間づくりへの投資
    ③ Talent Transformation自社のDXのためのデジタルネイティブ育成への投資

 
このセッションでは、③ Talent Transformation についての説明が行われました。

DSOは、Talent Transformationの目的を① 新規ビジネスアイデアを事業化に繋げる仕組みと文化・風土の醸成、② クライアントとアイデェーションから事業化までを推進できる人財の育成、の2点に設定。その背景として、クライアントからの「一緒にデジタル化を考えてほしい」との要請の高まりや、それに応える人材育成という課題があることを挙げました。

2点の施策の方向性としては、①に対しては「チャレンジする人が育つ場をつくる」「トップのコミットで熱意を挽き出し行動を促す」、②に対しては「クライアントと共に道を切り拓く人財を育てる」という“”“マインド”“スキル”の3要素を掲げるとともに、現場、DSO、人事が役割分担し、三位一体での推進がコミットされたことが説明されました。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

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現場、DSO、人事の“三位一体”がポイント
 

この“三位一体”がポイント」と東谷氏。同社には数多くの現場があり、人事は共通項を意識した施策を打ち出しがちとなる半面、各現場はそれぞれのニーズにより則したものを求めるからです。そこで、このギャップを埋めるべく両者の間にDSOが介入し、現場と人事を繋いで戦略的に施策を展開することを意図。DSOが現場の“”“マインド”“スキル”を整える処方箋をつくり、人事と共有し人事が全社に展開する仕組みを考えました。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

そこでポイントになったのは、どの現場をモデルにするか。同社は公共、金融、法人の3分野で約50の事業部があり、それぞれビジネスや課題が異なるからです。そこで、以前行った組織診断結果から、DXに対する課題観は共通しているものの、相対する業界の成熟度の違いから課題に対する温度差があることを分析。①ターゲット市場のDX成熟度が高い②組織が新規事業開発にコミットしている③組織長の覚悟、という3点で現場を選定し、処方箋をつくり全社展開することがベストと導き出しました。「これで選んだのが、最もデジタル化が進展し、新規オファリングをミッションに掲げ、“覚悟の男”の内山氏が率いるSDDX事業部でした」と東谷氏。

以上の説明に、水谷は「学びのポイントがたくさんありました」とコメントし、大企業における現場と人事とのギャップを埋める組織の意義に触れました。戦略をつくることはできても、その実践は難しいことを指摘した上で、交流のある東谷氏の組織人事に対する熱意を紹介。東谷氏は「関心のあることをやらせてもらえているからです」と回答しました。

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SDDX事業部のミッション
 

水谷は、内山氏にDSOの取り組みに対する見方を問うと「一事業部ではできない投資を割り振ってくれるチャレンジングな取り組みで、新たな気づきもありました」と評価。DSOの処方箋づくりに選定されたことに対しては、「目的に同意したので一緒にやってみようと思いました」と回答しました。

            株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 内山 尚幸氏

次に、内山氏がSDDX事業部を説明。SDDXとは“Service Design & Digital eXperience”の略で、顧客の新たな成長源泉づくりを目的としたDXと、ビジネスを加速させるマーケティングのデジタル改革の2点をミッションとして、2019年4月に設立されました。新規ビジネス創出事例として、レジがないウォークスルー店舗「Catch & Go」を例示。デジタルによるリテールビジネスのアップデート施策として、人手不足や販売機会創出、人件費削減という価値を提供するものです。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

ここで水谷は「『Catch & Go』のデモを見せてもらい、顧客体験を変えるソリューションと実感しました」とコメントし、社内外の反響を尋ねました。内山氏は「多くのメディアに取材してもらい、お客様にも体験してもらってこうした取り組みの意義が理解されました。非常に好評です」と回答。東谷氏は「内山氏と喫煙室でたまたま会った際に、元々あった『Catch &Go』のデモ機で実際の店舗を本社内につくってみたらいいのではと話したことが発端になっています」とのエピソードを披露。IT企業の同社が実店舗を運営してみることで、小売業や消費者の受け止め方が理解できるというわけです。そして、内山氏に「Catch & Go」を3か月ほど運営し、データを取ってわかったことなどの成果を尋ねました。内山氏は、最も売れているおにぎりの購入者特性や、時間帯別および顧客属性別の動線の違いなど「やってみてわかったことがもの凄くたくさんあり、データで次を考えられるようになりました。当社はシステムをつくることが得意ですが、そのシステムで得たデータをどう生かすかに気づけたことが大きな成果」と話しました。

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SDDX事業部の組織課題と解決施策
 

水谷は、そのようなSDDX事業部の活動の裏側にある組織人事に話を向けました。

内山氏は「足元でもがいている状況をお話しします」と、同事業部が抱えている課題を説明。「Catch & Go」のような世の中にない新しい事業やサービスを生み出そうとした時、事業部長の「顧客業界の最高の未来を創ろう!」と号令をかけても、メンバーの間には「本当にできるのか?」「どうやれば評価されるのか?」との疑問が生じたと言います。その要因として、事業部長の方針の抽象度の高さやメンバーにとっての優先順位の問題、既存事業とは異なるであろう方法論が見えないこと、そうした中でもメンバーが考え出したプランに対する事業部長のフィードバックが、結果的にメンバーが迷うようなものになったとの問題がありました。また、事業部の設立当初は社内から専門性が尖っている異能人材を集めたものの、その後一般的な人材も加わる中、高度な目標に対して個人戦から組織戦に変えていく必要性が浮上。「それまでの組織力を高める上で人材への取り組みが弱いと反省しました」と内山氏は打ち明けます。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

そして、①ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の定義・浸透、②事業戦略と実行プロセスの定義・発信
人財特性を加味した実務支援方法の整備という施策を打ち出したことに触れ、ここでは③について説明されました。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

組織として目指している、顧客価値創造型のアジャイルなスタイルにおいて必要な人材像(ロールモデル)の策定や、その育成支援を開始。具体的には、顧客価値を生み出す人材として“走者”と“伴走者”の2タイプが必要との仮説を出し、Profile XT(PXT)を用いてそれぞれのロールモデルを策定しました。走者とは、不確実性の高い世の中で0から1を生み出す者で、1のアイデアを10にビジネス化するのが伴走者という定義です。その上でメンバーの資質をPXTによって可視化し、ロールモデルとのギャップを数値化。そして、まずはギャップを解消するための各自の内省をコミュニケーションによって支援するところから育成体制の整備を始めました。

            出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

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2022.4.12 EVENT

企業変革を加速させる組織と人材の力
—事業成長に合わせて組織と人材像を再定義するための方法—
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day1_Session3』

消費者の価値観の変化、テクノロジーやデータ活用の進展、サスティナビリティに対する要望の高まりなど、事業戦略を描く上での前提条件が大きく変化しています。このような経営環境下において、経営リーダーは事業の方向性を見定め、その実行を支える組織や人材像を再定義していく必要があります。
このセッションでは、“事業構造の変化と人材需要のギャップにどう適応していくのか”という問いについて、事業トップマネジメントとビジネス現場に通じる組織・人事コンサルタントによる対談形式で議論を深化。組織ミッションを起点とした構造改革を進める中で、事業戦略の最上位概念に“人の価値の最大化”を据える事業トップの生の声をお届けします。
また、“企業変革を加速させるために、事業リーダーはどのように自らをアップデートさせるべきなのか?”というテーマにも触れるとともに、経営人材育成のプロフェッショナルが現在進行形で取り組んでいる“リーダー自らが進化していくプロセスや考え方”の実践的アプローチを共有します。

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。

 

♢ゲストスピーカー♢
 

トランスコスモス株式会社 執行役員
デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括
アカウントエグゼクティブ総括副責任者 兼 デジタルカスタマーコミュニケーション総括副責任者
田渕 和彦氏 (Tabuchi Kazuhiko)
1995年よりコールセンター事業に携わり、センター立ち上げや現場管理者、プロジェクトマネジメント、人事を歴任。
2005年 トランス・コスモス シー・アール・エム沖縄(株) 取締役、九州・沖縄エリアの責任者を経て、2010年 中国へ渡り EC事業運営に従事。 2012年からは日本に戻り、西日本エリアの責任者を担当。 2016年以降はアカウントマネジメント部門とデジタルコミュニケーションセンター部門を担当し、2019年4月に弊社 執行役員に就任。現場主義を貫き、企業のカスタマージャーニーに沿った顧客戦略全般を支援。

グロービス・コーポレート・エデュケーション
マネジング・ディレクター
顧彼思(上海)企業管理諮詢有限公司 董事
西 恵一郎氏 (Nishi Keiichiro)
早稲田大学卒業。INSEAD International Executive Program修了。三菱商事株式会社に入社し、不動産証券化、コンビニエンスストアの物流網構築、商業施設開発のプロジェクトマネジメント業務に従事。B2C向けのサービス企業を立ち上げ共同責任者として会社を運営。グロービスの企業研修部門にて組織開発、人材育成を担当し、これまで大手外資企業のグローバルセールスメソッドの浸透、消費財企業のグローバル展開に向けた組織開発他、多くの組織変革に従事。グロービス初の海外法人を立上げ、現地法人の経営を行う。現在はコーポレート・エデュケーション部門マネジング・ディレクター兼中国法人の董事を務める。経済同友会の中国委員会副委員長(2018、2019、2020)。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
ディレクター パフォーマンスコンサルタント 
水谷壽芳

 

“CS”から“CX”への変革
 

まず、田渕氏が自社における取り組みについて、次の3項目に則して説明を行いました。
① 市場の変化と組織課題
② 人の価値を最大化する人財育成・組織活性化
③ これからの目指す姿

① 市場の変化と組織課題
  
AIに置き換わる職業への危機感 
田渕氏が所管するコンタクトセンターの市場は、2015年の7,400億円から2020年に1兆154億円まで拡大。同社の売上高も、2017年度の2,423億円から2021年度の3,364億円まで伸びており、11期連続での増収となっています。世界30か国・地域で6万人の従業員を擁するグローバル企業であり、国内においては北海道から沖縄まで全国に2.3万人の従業員が在籍しています。

このように事業が急拡大する中、2014年に発表されたマイケル・A・オズボーンの『雇用の未来―コンピュータ化によって仕事は失われるのか』において、AIに置き換わる職業として「コールセンターオペレーター」が上位に挙げられました。「これを見た瞬間、我々の事業はどうなるのかという危機感を覚えました」と田渕氏は打ち明けます。

  “金太郎飴”からCX創出人材へ 
これを機に、自社のサービスを再検討。それまでは、平準的で標準化され、安定的に運用される“汎用量産型”のサービスモデルによる“CS”(顧客満足)を追求していました。これからは、商品・サービスの購入前後におけるあらゆる接点で顧客にどんな体験を提供し、どんな心理的価値を感じてもらうかを重視する“顧客別カスタマイズ型・課題解決型”のサービスモデルによる“CX”(顧客体験価値)が求められると結論。したがって、人材も“金太郎飴”からCXを創出できることへのスキルチェンジを図る必要性が浮上したのです。

                    出典:トランスコスモス株式会社

「そこで、CSからCXに変革するために我々は何をしなければならないのかを考え直さなければならないと考えました」と田渕氏。そして、なりたい姿の“Vision”、使命・存在意義の“Mission”、行動・考え方の“Value”から再定義。「経営層から現場まで共有・理解した上で事業運営に当たらなければ変化のスピードに追い付けないと考えました」と田渕氏は言います。「コミュニケーションの力で人の幸せと豊かな社会の懸け橋になる」というVisionの下、コミュニケーションの力で何ができるのかを個々の従業員が考えてチャレンジすることが重要であると打ち出したのです。

                    出典:トランスコスモス株式会社

② 人の価値を最大化する人財育成・組織活性化
  外部のプログラムやサーベイの導入 

「変化していく中で、人材が一番重要であると認識しています」と田渕氏。その人材の価値を最大化するために必要なことは何か。まずは上層部の意識変革が必要と考え、外部の知見を取り入れながら“他流試合”を行い、自らの考え方と世の中のギャップや自らのポジションを認識する機会を持つことにしました。そこで、2018年からGLOBISのミドル・マネジメント・プログラムの受講と、プロファイルズ社のCheckPoint360°サーベイを本部長以上に導入。2019年にはGLOBISのエグゼクティブ・マネジメント・プログラムの導入や、CP360°の部長以上への拡大、およびProfile XTを課長以上に実施。2021年にはCP360°を課長以上、PXTをマネージャーにも実施するなど順次拡大し、これまでにCP360°は128名、PXTは480名に実施しています。

                    出典:トランスコスモス株式会社

  経験と勘に頼った人事からデータの活用へ 
360°サーベイでは顕在化している領域を、PXTは潜在化している領域をそれぞれ測定するもの。「国内2.3万人のメンバーの潜在能力をいかに早くキャッチするか、リーダー層の顕在化している能力をいかに評価するかという観点で導入を図りました。これによって、自己流のマネジメントを見直し、事業戦略に基づく人的資本の最適化を行っていくことが重要だと認識しています」と田渕氏は言います。田渕氏には、自分自身も属人的な人材の登用や配置を行ってきたという反省がありました。

「従来のように経験と勘に頼った人事ではビジネスのスピードに追い付けず、データの必要性を実感しています」と田渕氏。

360°サーベイとPXTを活用し、本部長や部長の状況を見る人財ポートフォリオの作成、パフォーマンスが高い組織とそうでない組織における上司部下のフォーメーションの違いの分析、配置転換や組織編制に繋げています。

「先々で状況が変化した際に、今からデータを持っておかないと何が適正なのかが計れないとの考えがありました」と田渕氏は説明します。

③ これからの目指す姿
 「SUPPモデル」 
まずは、Mission・Vision・Valueに基づいて行動する人材の育成を最重要のテーマに挙げています。この浸透を図る共有(Share:耳で聞く)、理解(Understand:頭でわかる)、自分ごと(Personalize:体が動く)、実践(Practice:腹落ち)の「SUPPモデル」において、自分ごと化するプロセスを重視。このため、360°サーベイ結果を自己開示して対話し、率直なフィードバックを歓迎することにより、お互いを理解し認め合うことを通じて組織としてどう成長していくかを考える機会を設けています。

                    出典:トランスコスモス株式会社

ここで田渕氏は自らの360°サーベイ結果を開示。「最初はサーベイのコメントを素直に受け入れられない部分もありましたが、対話を通じてどんな組織にしていくべきかを語り合いながら、ありたい姿に向けて取り組んでいくと、翌年、翌々年とスコアが向上しコメントもどんどん変わっていきました」と田渕氏は話します。

                    出典:トランスコスモス株式会社

コンタクトセンター事業のありたい姿とは、「革新的・先進的なサービスと私たちの事業の原点でもあるコミュニケーションの力によって顧客体験価値を高め、地域と社会に貢献する」「多様性をもったすべての人とのつながりを大切にし、人の価値を最大化させ社員全員が自己実現を果たしワクワク働き成長する」というものです。

  未来の付加価値人財モデル 
同社では、今後のデジタル化、AI化、効率化の中で、顧客の課題にマッチしたソリューションの提供に繋げるために、どのような付加価値を付けるべくスキルチェンジを図るかという「未来の付加価値人財モデル」を定義。「運用のプロフェッショナル」「コンサルティング」「アナリティカル」「イノベーティブ」の4タイプを抽出しています。PXTを活用し、これら付加価値人財を発掘し育成していくことを検討しています。

                    出典:トランスコスモス株式会社

「顧客に向き合う組織を目指す上で、資産として人財が最重要であり、属人的にならないようデータを活用しながら人財配置の最適化を図っていきます。こうした集団が顧客によりよいサービスを提供できるのではないかと考えています」と締め括りました。

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2022.4.11 EVENT

「ザ・ベスト リージョナルバンク」の実現に向けた事業進化の轍
—経営環境の変化をチャンスとする組織・人事戦略—
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day1 Session1』

事業基盤である九州の持続可能な発展に貢献するとともに、すべてのステークホルダーから支持される「ザ・ベスト リージョナルバンク」の実現を目指している、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)。4銀行のグループ統合やデジタル技術を駆使した事業の高度化などを実現しています。中でも、日本初のデジタルバンク「みんなの銀行」の設立や、“人生100年時代”に合わせた金融サービス「投信のパレット」など、先進的なサービスは従来の金融サービスと一線を画しています。今回のセッションでは、こうしたグループ統合や新サービス誕生秘話、そしてその背景にある失敗を恐れない企業風土の形成や人事施策などについて、同社取締役として事業成長を牽引し、2022年4月1日にFFGおよび福岡銀行のトップに就任される五島久氏にお話を伺いました。

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。

 
 
♢ゲストスピーカーのご紹介♢


株式会社ふくおかフィナンシャルグループ取締役執行役員
株式会社福岡銀行取締役専務執行役員
五島 久氏 
(Goto Hisashi)
1985年、九州大学・法学部を卒業後、㈱福岡銀行へ入行。
人事部・副部長、総合企画部・部長、営業推進部長などを経て、2017年に同行の常務執行役員並びに
㈱ふくおかフィナンシャルグループ・執行役員に着任後、現職に至る。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
ディレクター パフォーマンスコンサルタント 
水谷壽芳

 
 
<前編>
「シングルプラットフォーム・マルチブランド」の経営スタイル
 

まず、水谷は五島氏にFFGが2007年の設立以来築いている独自の経営スタイルについて尋ねました。五島氏は、まずFFGの沿革を説明。2007年4月に福岡銀行(創業1877年)と熊本銀行(創業1929年)の統合に始まり、同年10月に長崎の親和銀行(創業1879年)を経営統合。2016年4月にデジタルを活用した様々なサービスを提供する「iBank」事業をスタート。2019年4月には長崎の十八銀行を経営統合し、2020年4月に十八銀行と親和銀行が合併し十八親和銀行が誕生。2021年5月に「みんなの銀行」サービスを開始。こうしてFFGは現在、4つの銀行を傘下に置いています。「設立から14年が経過し、経営は少しずつ進化しています」と五島氏は話しました。

次に五島氏はそのFFGの経営スタイルを説明。グループ経営理念「高い感受性と失敗を恐れない行動力を持ち、未来志向で高品質を追求し、人々の最良な選択を後押しする」や、コアバリュー「いちばん身近な銀行/いちばん頼れる銀行/いちばん先を行く銀行」などの下、福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行の3行を顧客接点としつつ、FFGが一つのプラットフォームで商品・サービスを提供する「シングルプラットフォーム・マルチブランド」という経営スタイルを取っています。「マルチブランド」は、地方銀行としてそれぞれの地域社会や地域の顧客との関係性を重視し、地域に密着して営業を展開する姿勢を示しています。一方、グループ経営をより効率的・効果的に進めるため、各行のシステムや事務などのインフラを共通化するとともに、企画機能をも一体化させる「シングルプラットフォーム」を構築。

「足腰は一つ、上半身は各地域で活動するといった経営スタイル」と五島氏は説明しました。

これを受け、水谷は「地域とのエンゲージメントを維持しつつ、スケールメリットを出す秀逸な経営モデル。これを実現させていくところにFFGならではの強みがあると思います」と述べ、これを支える要素について五島氏に尋ねました。

                  出典:ふくおかフィナンシャルグループ

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「失敗を恐れない」といった組織文化と新サービス
 

五島氏は、「各行がオリジナリティは持ちつつ、インフラはあたかも一つの銀行のように機能させるべく、FFGと各行の間でノウハウや意識の共有することが非常に重要」と指摘。そのため、統合直後から役員層から若手まで延べ1,000名を超える人材交流を積極的に実施してきたと話しました。

ここで水谷は、FFGのブランドブックに記された「失敗を恐れない」といった組織文化の強さに言及。これを受け、五島氏はブランドブックを持ちながら、組織文化づくりの基盤となる考え方を全社員で共有していることを説明。「この中で、『失敗を恐れない』ことが強調されています」と話しました。

★FFG統合報告書/組織文化つくりの記述があります:
https://www.fukuoka-fg.com/investorimage/ir_pdf/tougou/202110/all.pdf

水谷は、こうした組織文化の中で生まれた新しいサービスとして、「投信のパレット」について尋ねました。

五島氏は「独自開発のシステムで、国内の約4,800本の投資信託を公平中立に評価・分析し、優良な投信を組み合わせながらお客様のニーズに最適な資産運用プランを提案、その後きめ細かくフォローアップしてお客様の資産運用を長期に渡って支えていくサービス」と説明。続いて、「人々の最良の選択を後押しする」という経営理念、「お客様本位の営業」という営業理念のもと、“人生100年時代”に必要な資産づくりという背景・ニーズに対応する開発目的に言及。「現場の担当者の間には、『投信を売ったのはいいが本当にお客様の役に立っているのか』『銀行本位でやっていることではないのか』との本音がありました。私自身も自信を持ちきれないところでしたので、真にお客様のためになるサービスを開発しようと始めたのがこのプロジェクトです」と話しました。

                    出典:ふくおかフィナンシャルグループ

水谷は2020年2月にサービスを開始したこの「投信のパレット」の取引残高が1,700億円、顧客数3.3万人に及ぶという反響の大きさを紹介した上で、「新規事業は簡単ではない中、社員によく伝えていることがあると伺いました」と話を振りました。

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“企業の目的”と“個人の目的”を繋ぐリーダーの役割
 

これに対し、五島氏は、「“システム×商品・サービス×人”の大きな要素がうまく連動することでいいサービスができ、お客様が満足し、従業員の『これでいいのか』との不安も払拭でき、成果が上がって収益に繋がり、次の投資に回せるという、まさしく『論語と算盤』のような世界ができると思います」と話しました。続いて、自社がこれまで社会インフラとして様々な金融サービスを提供し地域を支えてきた志について社員に話しているとした上で、“企業の目的”と“個人の目的”について言及。企業の目的は、世の中に善をなし利益を上げ続けるという好循環を目指す存在意義の追求にある一方、個人の目的は社会で役に立ち個人として成長することにあり、「この両者を併存できるように繋ぐことがリーダーの役割」と指摘しました。「一人ひとりの従業員も、会社にやらされているのではなく、自分のやりがいや生きがいを得るために仕事に向き合うことが大事であるという話をよくしています」と話しました。

                   出典:ふくおかフィナンシャルグループ

 この話を受け、水谷は「その話は最近よくスポットが当たっている事柄」とした上で、以前は会社が従業員を働かせるという関係性にあったところから、今では会社は働くインフラを提供し、従業員は持てる能力を発揮するというWin-Winの関係にあると指摘。そして、HRDグループが公開した論考・「経営戦略策定の手引き(2022年度版)の中でも、企業と個人の目的をすり合わせる必要性について書かれていることに触れ、五島氏が実践していることについて尋ねました。
(HRDグループ・論考「経営戦略策定の手引き(2022年度版):https://www.hrd-inc.co.jp/file/wp/wp_vol.pdf )

五島氏は、お客様本位の営業と持続的成長のために収益を上げ続けなければならないジレンマは誰しもにあり、従業員も“論語か算盤か”との二者択一的になりがちな難しい問題であるとした上で、「だからと言って目をつぶっていていいわけではなく、あえて認識しながら少しずつ歩みを進めていくことが大切という話をしています」と述べました。

「同じ方向に歩みを進めつつ、それぞれの立場で解釈を深めていくことで組織文化がより深まっていくように思います」との水谷の投げかけに対し、五島氏は「会社と個人の目的が結びついた時に、関わる全員がより幸せになれると思うからこそ、難しい問題ですがしっかりやっていきたいと思います。人事制度や風土づくりはその延長線上にあり、ダイバーシティインクルージョンとしても一人ひとりを理解し、活躍のフィールドを整備することが大事であると思います」と答えました。

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2021.12.9 EVENT

ポストコロナの働き方と職場・チームのゆくえ 「心理的安全性」で日本企業の足腰を強化する『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day4』

 

 

 

★ゲストスピーカーの紹介★

早稲田大学准教授
村瀬 俊朗氏
Toshio Murase

1997年の高校卒業後、渡米。2011年にUniversity of Central Floridaから産業組織心理学の博士号を取得。Northwestern UniversityおよびGeorgia Institute of Technologyで博士研究員(ポスドク)として就労後、シカゴにあるRoosevelt Universityで教鞭を執る。2017年9月から現職。専門はリーダーシップとチームワーク研究。2019年から英治出版オンラインで「チームで新しい発想は生まれるか」を連載中。『恐れのない組織』(エイミー・C・エドモンドソン著、野津智子訳、2021年、英治出版)の解説者。 

 

 

いま、組織・チームにどのような変化が起こっているのか~組織文化の変革 イノベーションと心理的安全性

 

新しいものを生み出す際には“挑戦”が必要

まず、久保田がDX・社会の変化と求められる組織の在り方について、世界経済フォーラムやマッキンゼー、経済産業省のレポートから、「変化対応組織に求められるのは『チームレベルの文化の変革』であり、その鍵として『心理的安全性』の確保が挙げられている」ことを紹介しました。 

ここで久保田は村瀬氏に「そもそも『チーム』とは何か?いま起こっている変化をどのように捉えたらよいか?」と投げかけ、村瀬氏の講演に繋ぎました。 

村瀬氏はまず、「コロナ後の様々な変化に対応し、創造性や付加価値を発揮させイノベーションを起こすためには、組織・チームとして何を意識しどのように動けばいいのか、その観点における『心理的安全性』について話していきたい」と前置きしました。 

次に、現在の経済環境の不透明さに触れ、マッキンゼーのレポートなどから世界市場はさらに激化し不安定となり、主要事業のビジネスモデルを大きく変える必要性に言及。 

そこで、amazon創業者の「実験的挑戦は開発にとって必要悪であり、失敗と開発は表裏一体」といった言葉を紹介し、新しいものを生み出す際には“挑戦”が必要であり、即ち失敗を受け容れることの必要性を話しました。 

この流れで、一般的な改革がうまくいくのは30%以下で、DXによって改革に成功した企業は16%といった、イノベーションには失敗が付き物であることを示す調査結果に触れました。 

イノベーションは出合ったことのない組み合わせで起こる 

ここから、イノベーションに関する考察に入りました。「人間が課題解決を図る際、頭の中ではいろいろな情報を組み合わせています」と村瀬氏。この組み合わせがイノベーションの“種”となることを、トランクにキャスターを“組み合わせ”たことでスーツケースが発明された例を取り上げました。これで人は重い荷物を持って運ばなくても済むようになったのです。 

アイデア探索に求められる「高い頂を探索する」概念を説明した後、新幹線のパンタグラフにフクロウの羽根の端部の形状を取り入れることで、風切り音などの騒音を30%減少させた事例を紹介し、「このように、イノベーションとは出合ったことのない組み合わせを見つける模索の旅」と説明しました。 

次に、そうした発想をどのように行うかについて、「専門性の多様性」と「価値の実現力」という2軸の図で解説。出合ったことのない組み合わせの模索において、専門性の多様性が高度であればあるほど、価値の実現力としての失敗からメガヒットまでの振れ幅が大きいこと、逆に慣れ親しんだ情報の組み合わせでは、結果の予測がつき、成果物としては大成功にも大失敗にもならないゾーンに落ち着くことが説明されました。つまり、「イノベーションとは、我々が出合ったことのない組み合わせでしか起こすことはできず、それは膨大な失敗を伴うものである」と整理しました。 

“連携”による創造性の発揮

そこで、こうしたイノベーションを起こしていくうえでの「チーム」の重要性に話が移りました。複数の視点の衝突が思い込みを崩し新しい思想を獲得する糸口となることや、こうした組み合わせの幅が増えると失敗も増えるが成功度も高まること、個人よりチームのほうが複眼的に組み合わせの弱みを把握し失敗を防ぐことにも繋がることを指摘。チームワークこそが創造性の装置であることを説明し、チームの多様性が新規事業の収益性を高めたとのBCGのレポートにも触れました。 

ここで、「チームとは何か」を考察。「価値のある目標や目的を共有する運命共同体」「目標・目的達成のために、情報共有や作業連携が必須」「メンバーの業務は互いに依存する」「メンバーの役割が決まっている」という定義を説明しました。 

こうしたチームをうまく活用することで創造性を発揮させやすくなるものの、そこでは“連携”による創造性の発揮が困難になると言います。人には仲間と部外者を分ける心理的作用が働き、知らない人、知らない知識を持っている人とはうまく作業ができない習性があるからです。エンジニア部門とマーケティング部門の分断例が示されました。 

また、アイデアの価値は一目ではわかってもらえない“自前主義”の問題もあります。Twitter社で最初にハッシュタグを提案したエンジニアに対して「そんなもの使われない」と言われたケースや、アート作品の価値はよくわからないものという例が話されました。 

また、コーラと無名のドリンクの写真を並べ、どちらを選ぶかを問うとたいていがコーラを選ぶという、「馴染みやすさは心地よさ」という心理に触れ、「新しいものはよくわからず、馴染みのあるものに引っ張られて創造性がうまく働かない」というメカニズムについて解説しました。 

早稲田大学准教授 村瀬 俊朗氏

“多様な意見の表出”が重要 

そこが、チームをつくっても新しいものを生み出せない弊害になるとした上で、“連携”に代わる“多様な意見の表出”を通じた創造性の発揮の必要性について話しました。 

ここでようやく心理的安全性が登場。なぜならば、チームとしてイノベーションを起こすメカニズムから説明したほうが、心理的安全性についての理解が深まるからです。 

多様性のあるチームをつくっていろいろな意見が出されても、反発されたりするとスタックしてしまうものの、心理的安全性が担保されていることにより“多様な意見の表出”が行われ、イノベーションの創出に向かいやすくなるということです。 

ここで心理的安全性について解説。「学術界では20年以上前から発表されていた理論で、Googleのプロジェクトが取り上げたことからビジネス界で一気に広まったものです。Googleは「心理的安全性」が創造性を向上させる重要なメカニズムであることを明らかにしました。 

イノベーションに不可欠な“多様な意見”を言ったとしても、疑問視や冷笑されるといった雰囲気がないことが重要であり、そのことでチーム内に多様な観点が共有されることがイノベーションへの第一歩となるからです。

 

イノベーションのプロセスに必要な「安心感」と、「声を上げる」“技術” 

もう1点重要なこととして、「失敗と改善」について話しました。ユニリーバの粉末状の洗剤の製造工程で、原料の液体を噴出し熱風乾燥させる際のノズル穴が目詰まりしない形状を模索するのに、45世代のモデルと449回の失敗を重ねた例を挙げました。 

次に、心理的安全性を発見したエドモンドソン教授が、様々な失敗が起こる病院でデータを取ったことに触れました。病院での失敗は、患者の命に直結することから責任逃れのために隠ぺいに結び付きやすい。しかし組織で同様の失敗が続けて起こるのは、個人ではなく組織に問題がある。これが隠蔽されると組織として改善する機会が失われる。そこでエドモンドソン教授が病院の心理的安全性と事故の相関関係を調査すると、心理的安全性が高まると事故の報告件数が増え組織が共有することで事故の減少に繋がったことから、心理的安全性の重要性が立証できたわけです。 

「では、心理的安全性が担保されれば声を上げさえすればいいかと言えば、一概にそうとも言えません」と村瀬氏。実際の伝達や、心理的安全性の確保、良いチームワーク実行には“技術”が必要だからです。同じ「声を上げる」のでも、何を誰にどのように伝えるかで伝わり方は全く変わります。 

また、イノベーションを創造するプロセスでは感情のぶつかり合いも起こります。自分主体で考えることで他者を攻撃するようなことがあれば、心理的安全性は破壊されてしまいます。そこで、感情が高ぶった時は冷静に「相手の世界観が違う」と捉えたり、自らの感情が高ぶっていることの理由を振り返る“技術”が必要です。 

そこで重要となるのが、リーダーの責務。メンバーが知りたいチームのとってのゴールやミッションの重要性を伝え、外からはわからないイノベーション創出活動を守ることが求められます。 

チームワークは、システムとして行動⇒分析⇒学習⇒行動、のサイクルを回して行っていくもの、と整理して第1部の講演を終えました。

リーダーの責務 

ここで久保田は視聴者から質問を受け付けた後、村瀬氏に「心理的安全性は最近よく聞く言葉ですが、安易に使われ誤解されているケースもあるのでは?」と質問。村瀬氏は「心理的安全性はあくまでもシステムの一部。『何でも話せる組織をつくろう』ではなく、何のための組織であり、その目的を達成するためにいろいろな議論が行えることが重要であり、そのために心理的安全性が重要であるという理解が必要。心理的安全性を維持するのは簡単ではないので、そこがしっかり共有できていないと中途半端に終わる」と指摘しました。 

ここで、視聴者の「リーダーが手一杯の時にそれができる余地はあるのか?」との意見に対し、村瀬氏は「先のことを考える必要から、リーダーはその時間を捻出する努力が必要。プレイングマネージャーが仕事をメンバーに任せ切ることができず、時間が捻出できないケースが多い。時間をつくることはリーダーの重要な業務と認識すべき」と指摘しました。 

また「心理的安全性のほかに大切なことは?」との視聴者からの質問に、「メンバーの間にゴールや役割分担、優先順位が不明確で納得し切れていない場合が多くあります。ゴールに向かう上で、メンバーの意識が拡散的にならないようそこを明確にすることがリーダーの責務」と村瀬氏は回答しました。 

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2021.12.9 EVENT

マイクロソフトはいかにしてカルチャー改革を実現したか 新しい時代における組織・人材戦略を先駆者と共に考える『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day3』

環境変化が更に加速する2020年代。企業が直面する変化の第一は、テクノロジーの進化があります。そこで、このセッションではデジタル・テクノロジー企業の雄であるGAFAMのそれぞれの人事戦略から、人材を活かすマネジメントを掘り下げました。優秀な人材をいかに惹きつけて、育てているのかについての共通事項を考察。特に、マイクロソフト社の人材マネジメントについて、ゲストスピーカーによる同社の最新人事施策の紹介と考察から、これからの日系企業における人事戦略の方向性についての議論を行いました。

セッション動画はこちら

 

 

★ゲストスピーカーの紹介★

日本マイクロソフト株式会社 人事本部
HRコンサルティンググループ マネージャー
堀江 絢氏
June Horie

2009年家族と来日、専業主婦、大学職員、人材アセスメント会社のコンサルタントを経て、大手グローバルスポーツメーカーに転職、主に組織開発、人材育成とタレントマネジメントの業務を担当。2020年2月に日本マイクロソフトに入社、中途新入社員のオンボーディング、新卒社員研修、マネージャー能力開発などのプログラムをリードしながら、社員とマネージャーにコンサルティングとコーチングを提供する。

GAFAMのビジネスモデルと人事戦略


必要なスキルの変化

まず、水谷が企業におけるマクロ環境やデジタル化、サスティナビリティ、働き手におけるライフシフトやキャリア観の多様化、必要なスキルの変化といった環境変化を概観。「双方に大きな影響を与えているのは、デジタルの進化」と整理しました。

この流れで、2000年と2020年の時価総額ランキングを比較。2000年に1位であったゼネラル・エレクトリック(GE)は100位未満となり、GAFAMがベスト10に顔を揃えていることが紹介されました。GAFAMのビジネス内容を整理し、サービス領域は異なるものの、“プラットフォームビジネス”“生活に浸透”“ビッグデータ”という共通点があることが説明されました。

次に、視点を変えて働き手に求められるスキルに言及し、Day1でも紹介された「高度な認知スキル」「社会的・感情的スキル」「技術的スキル」の重要性を再確認。「デジタルスキルとともに、これら3スキルの需要が高まっています」と話しました。加えて、GAFAMにおけるリスキル投資を説明。Microsoftの失業者2,500万人への無料プログラム提供や、日本マイクロソフトにおける人材育成施策などが紹介されました。

GAFAM同士の学び

ここで、水谷は堀江氏に「マイクロソフト社における日本市場の位置づけは?」「GAFAM同士で学びあう、というケースはありますか?」と質問。

1つめについて、堀江氏は「Microsoftにとって日本は大きな戦略的マーケット」と前置きした上で、決算期である7月にオンライン行われた全社イベントのエピソードに触れ、「CFOのプレゼンテーションには何か所も日本マイクロソフトの名前が出てきて、そのパフォーマンスの高さが協調されました」と紹介しました。

2つめについては、Microsoftグローバルの全マネージャーに向けたトレーニングで、Googleによって広められた「心理的安全性」がテーマに取り上げられたことが話されました。

次に堀江氏は、GAFAMにORACLEを加えた6社のカルチャーの風刺画を示し、Microsoftは事業部門がサイロ化し、それぞれがピストルを向け合っている様を紹介。「昔のこういうカルチャーは良くないと認識し、カルチャーを変えてビジネスの成長に繋げてきました」と話しました。

出典:日本マイクロソフト株式会社

ここで水谷は、マイクロソフト社に注目する理由として「歴史がある」「苦難の克服」「(組織人事については)知られていない」と説明。堀江氏のプレゼンテーションに繋げました。