HRDNext経営戦略策定の手引き事業×組織×人材の戦略統合による新時代の企業成長論
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HRD株式会社 - Human Resource Development

" DiSC " に関する記事
2022.4.25 EVENT

AIアナリスト・エンジニアに求められるソーシャルスキル
『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session3』

労働力不足のなかで、時代のニーズにマッチした特性を有する人材の確保は簡単ではありません。一方、ビジネス環境の変化に伴い、人材に求められるスキルにも変化が起こり、「リスキリング」が企業の重要な課題に。着目すべきことは、高度な技術スキルとともに、ソーシャル・エモーショナルと呼ばれる対人関係スキルの重要性が増していることです。 日本の労働力不足の中で今後人材が集積する領域として、介護・医療とAI・デジタル市場が挙げられます。
本セッションでは、データ解析の先進企業であり、時代を先取りするブレインパッド社AIアナリスト・エンジニアを統括する方々にご登壇いただきました。優秀なハイスキル人材を抱える組織におけるマネジメント課題と、その解決に向けた取り組みをご紹介し、必要なスキルを有する人材を集め、そのポテンシャルを活かして競争力を高めるために、これからの企業・組織はどのようなことに注力していけばよいか議論していきます。

セッション動画はこちらよりご覧いただけます。

 

 

◇ゲストスピーカー◇

株式会社ブレインパッド
プロダクトビジネス本部 本部長
東 一成
(Azuma Kazunari)
大学卒業後、鉄道系の情報システム会社に勤務の後、外資系のアナリティクスツール会社にてプリセールス、プロフェッショナルサービスの部隊でデータマイニング、BI、BSCなどの導入支援を担当。その後、海外から機械学習システム、MA、分析プラットフォームなどの日本市場への展開を支援し、ビジネス立ち上げ、プリセールス、トレーニング・導入支援、サポート、日本語化などを担当。現在もMA、拡張分析、ソーシャルメディアアナリティクス、分析プラットフォームに関する国内外のソフトウェアの展開や調査を行っている。
過去にテレコム通信、空港、百貨店、小売・流通、通販、カード、証券、商社、サービスなどの様々な業種への機械学習やMAなどの分析システム導入の経験・実績を持つ。

株式会社ブレインパッド
プロダクトビジネス本部 プロダクトデザイン部 エンジニアリングマネージャー
柳原 淳宏
(Yanagihara Atsuhiro)
自社プロダクトRtoaster、L2Mixerの開発を経て、現在はConomiのプロダクトマネージャー兼開発を担当。
レコメンド/マッチング技術を中心に企画、提案から開発、チューニングまで数多くの案件に従事。また新卒採用から研修までの人材育成業務を担当。

モデレーター
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
執行役員 シニアコンサルタント
久保田 智行(Kubota Tomoyuki)

 
データ活用人材を育成する組織が抱える現在の課題
 

まず東氏が、ブレインパッド社の概況を説明。データ分析、システム開発、コンサルテーション、デジタルソリューションの販売・導入といったデータに関わる全方位的なビジネス展開を行っていること、各ビジネスを行ういくつかの本部はそれぞれが上場できるほどの規模があるといった組織の特徴、約150名という国内最大級のデータサイエンティストを擁するとともに、データ活用人材を育成講座で5万人以上育成・輩出していること、およびプロダクトビジネス本部として、多様なニーズに対応するための開発および海外ソリューションの国内展開といった組織の拡大・変更を実施中で、組織全体の底上げとマネジメント力強化が求められているという現状の課題を話しました。

次に東氏は、上記のプロダクトビジネス本部の課題への対応策に言及。このほどHRDとともに、特にスキルフルで多様な人材を活かすマネジメント力強化に向けた1stステップとして、グループマネージャーや部長層とメンバーとの関係構築力強化への取り組みに着手した経緯を次のように説明しました。

「多様な部門が統合されて一つの本部になったこともありますが、コロナ禍によるリモート環境下で、チャットやオンラインミーティング中心の非言語情報が不足するコミュニケーションの難しさの中、会社全体の価値観をいかに落とし込めるか価値観が違うメンバーの成長をいかに促進させるか他部署の思いを汲んでいかにスピーディーに連携を進めるかといった課題がありました。そうした中で、相手の志向や考え方を理解することで、より強固なコミュニケーションや組織構築が行えると判断し、1stステップの取り組みを行うこととしました」

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2021.12.9 EVENT

ポストコロナの働き方と職場・チームのゆくえ 「心理的安全性」で日本企業の足腰を強化する『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day4』

 

 

 

★ゲストスピーカーの紹介★

早稲田大学准教授
村瀬 俊朗氏
Toshio Murase

1997年の高校卒業後、渡米。2011年にUniversity of Central Floridaから産業組織心理学の博士号を取得。Northwestern UniversityおよびGeorgia Institute of Technologyで博士研究員(ポスドク)として就労後、シカゴにあるRoosevelt Universityで教鞭を執る。2017年9月から現職。専門はリーダーシップとチームワーク研究。2019年から英治出版オンラインで「チームで新しい発想は生まれるか」を連載中。『恐れのない組織』(エイミー・C・エドモンドソン著、野津智子訳、2021年、英治出版)の解説者。 

 

 

いま、組織・チームにどのような変化が起こっているのか~組織文化の変革 イノベーションと心理的安全性

 

新しいものを生み出す際には“挑戦”が必要

まず、久保田がDX・社会の変化と求められる組織の在り方について、世界経済フォーラムやマッキンゼー、経済産業省のレポートから、「変化対応組織に求められるのは『チームレベルの文化の変革』であり、その鍵として『心理的安全性』の確保が挙げられている」ことを紹介しました。 

ここで久保田は村瀬氏に「そもそも『チーム』とは何か?いま起こっている変化をどのように捉えたらよいか?」と投げかけ、村瀬氏の講演に繋ぎました。 

村瀬氏はまず、「コロナ後の様々な変化に対応し、創造性や付加価値を発揮させイノベーションを起こすためには、組織・チームとして何を意識しどのように動けばいいのか、その観点における『心理的安全性』について話していきたい」と前置きしました。 

次に、現在の経済環境の不透明さに触れ、マッキンゼーのレポートなどから世界市場はさらに激化し不安定となり、主要事業のビジネスモデルを大きく変える必要性に言及。 

そこで、amazon創業者の「実験的挑戦は開発にとって必要悪であり、失敗と開発は表裏一体」といった言葉を紹介し、新しいものを生み出す際には“挑戦”が必要であり、即ち失敗を受け容れることの必要性を話しました。 

この流れで、一般的な改革がうまくいくのは30%以下で、DXによって改革に成功した企業は16%といった、イノベーションには失敗が付き物であることを示す調査結果に触れました。 

イノベーションは出合ったことのない組み合わせで起こる 

ここから、イノベーションに関する考察に入りました。「人間が課題解決を図る際、頭の中ではいろいろな情報を組み合わせています」と村瀬氏。この組み合わせがイノベーションの“種”となることを、トランクにキャスターを“組み合わせ”たことでスーツケースが発明された例を取り上げました。これで人は重い荷物を持って運ばなくても済むようになったのです。 

アイデア探索に求められる「高い頂を探索する」概念を説明した後、新幹線のパンタグラフにフクロウの羽根の端部の形状を取り入れることで、風切り音などの騒音を30%減少させた事例を紹介し、「このように、イノベーションとは出合ったことのない組み合わせを見つける模索の旅」と説明しました。 

次に、そうした発想をどのように行うかについて、「専門性の多様性」と「価値の実現力」という2軸の図で解説。出合ったことのない組み合わせの模索において、専門性の多様性が高度であればあるほど、価値の実現力としての失敗からメガヒットまでの振れ幅が大きいこと、逆に慣れ親しんだ情報の組み合わせでは、結果の予測がつき、成果物としては大成功にも大失敗にもならないゾーンに落ち着くことが説明されました。つまり、「イノベーションとは、我々が出合ったことのない組み合わせでしか起こすことはできず、それは膨大な失敗を伴うものである」と整理しました。 

“連携”による創造性の発揮

そこで、こうしたイノベーションを起こしていくうえでの「チーム」の重要性に話が移りました。複数の視点の衝突が思い込みを崩し新しい思想を獲得する糸口となることや、こうした組み合わせの幅が増えると失敗も増えるが成功度も高まること、個人よりチームのほうが複眼的に組み合わせの弱みを把握し失敗を防ぐことにも繋がることを指摘。チームワークこそが創造性の装置であることを説明し、チームの多様性が新規事業の収益性を高めたとのBCGのレポートにも触れました。 

ここで、「チームとは何か」を考察。「価値のある目標や目的を共有する運命共同体」「目標・目的達成のために、情報共有や作業連携が必須」「メンバーの業務は互いに依存する」「メンバーの役割が決まっている」という定義を説明しました。 

こうしたチームをうまく活用することで創造性を発揮させやすくなるものの、そこでは“連携”による創造性の発揮が困難になると言います。人には仲間と部外者を分ける心理的作用が働き、知らない人、知らない知識を持っている人とはうまく作業ができない習性があるからです。エンジニア部門とマーケティング部門の分断例が示されました。 

また、アイデアの価値は一目ではわかってもらえない“自前主義”の問題もあります。Twitter社で最初にハッシュタグを提案したエンジニアに対して「そんなもの使われない」と言われたケースや、アート作品の価値はよくわからないものという例が話されました。 

また、コーラと無名のドリンクの写真を並べ、どちらを選ぶかを問うとたいていがコーラを選ぶという、「馴染みやすさは心地よさ」という心理に触れ、「新しいものはよくわからず、馴染みのあるものに引っ張られて創造性がうまく働かない」というメカニズムについて解説しました。 

早稲田大学准教授 村瀬 俊朗氏

“多様な意見の表出”が重要 

そこが、チームをつくっても新しいものを生み出せない弊害になるとした上で、“連携”に代わる“多様な意見の表出”を通じた創造性の発揮の必要性について話しました。 

ここでようやく心理的安全性が登場。なぜならば、チームとしてイノベーションを起こすメカニズムから説明したほうが、心理的安全性についての理解が深まるからです。 

多様性のあるチームをつくっていろいろな意見が出されても、反発されたりするとスタックしてしまうものの、心理的安全性が担保されていることにより“多様な意見の表出”が行われ、イノベーションの創出に向かいやすくなるということです。 

ここで心理的安全性について解説。「学術界では20年以上前から発表されていた理論で、Googleのプロジェクトが取り上げたことからビジネス界で一気に広まったものです。Googleは「心理的安全性」が創造性を向上させる重要なメカニズムであることを明らかにしました。 

イノベーションに不可欠な“多様な意見”を言ったとしても、疑問視や冷笑されるといった雰囲気がないことが重要であり、そのことでチーム内に多様な観点が共有されることがイノベーションへの第一歩となるからです。

 

イノベーションのプロセスに必要な「安心感」と、「声を上げる」“技術” 

もう1点重要なこととして、「失敗と改善」について話しました。ユニリーバの粉末状の洗剤の製造工程で、原料の液体を噴出し熱風乾燥させる際のノズル穴が目詰まりしない形状を模索するのに、45世代のモデルと449回の失敗を重ねた例を挙げました。 

次に、心理的安全性を発見したエドモンドソン教授が、様々な失敗が起こる病院でデータを取ったことに触れました。病院での失敗は、患者の命に直結することから責任逃れのために隠ぺいに結び付きやすい。しかし組織で同様の失敗が続けて起こるのは、個人ではなく組織に問題がある。これが隠蔽されると組織として改善する機会が失われる。そこでエドモンドソン教授が病院の心理的安全性と事故の相関関係を調査すると、心理的安全性が高まると事故の報告件数が増え組織が共有することで事故の減少に繋がったことから、心理的安全性の重要性が立証できたわけです。 

「では、心理的安全性が担保されれば声を上げさえすればいいかと言えば、一概にそうとも言えません」と村瀬氏。実際の伝達や、心理的安全性の確保、良いチームワーク実行には“技術”が必要だからです。同じ「声を上げる」のでも、何を誰にどのように伝えるかで伝わり方は全く変わります。 

また、イノベーションを創造するプロセスでは感情のぶつかり合いも起こります。自分主体で考えることで他者を攻撃するようなことがあれば、心理的安全性は破壊されてしまいます。そこで、感情が高ぶった時は冷静に「相手の世界観が違う」と捉えたり、自らの感情が高ぶっていることの理由を振り返る“技術”が必要です。 

そこで重要となるのが、リーダーの責務。メンバーが知りたいチームのとってのゴールやミッションの重要性を伝え、外からはわからないイノベーション創出活動を守ることが求められます。 

チームワークは、システムとして行動⇒分析⇒学習⇒行動、のサイクルを回して行っていくもの、と整理して第1部の講演を終えました。

リーダーの責務 

ここで久保田は視聴者から質問を受け付けた後、村瀬氏に「心理的安全性は最近よく聞く言葉ですが、安易に使われ誤解されているケースもあるのでは?」と質問。村瀬氏は「心理的安全性はあくまでもシステムの一部。『何でも話せる組織をつくろう』ではなく、何のための組織であり、その目的を達成するためにいろいろな議論が行えることが重要であり、そのために心理的安全性が重要であるという理解が必要。心理的安全性を維持するのは簡単ではないので、そこがしっかり共有できていないと中途半端に終わる」と指摘しました。 

ここで、視聴者の「リーダーが手一杯の時にそれができる余地はあるのか?」との意見に対し、村瀬氏は「先のことを考える必要から、リーダーはその時間を捻出する努力が必要。プレイングマネージャーが仕事をメンバーに任せ切ることができず、時間が捻出できないケースが多い。時間をつくることはリーダーの重要な業務と認識すべき」と指摘しました。 

また「心理的安全性のほかに大切なことは?」との視聴者からの質問に、「メンバーの間にゴールや役割分担、優先順位が不明確で納得し切れていない場合が多くあります。ゴールに向かう上で、メンバーの意識が拡散的にならないようそこを明確にすることがリーダーの責務」と村瀬氏は回答しました。 

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2021.6.1 事例紹介

組織開発とタレントマネジメントに活用するDiSC
内製で素早く組織作りの基盤をつくる、成長企業の事例
株式会社Speee様/株式会社ビズリーチ様

HRDグループが主催するアセスメントフォーラムオンライン2020「ReStart」。今回のテーマは「組織開発とタレントマネジメントに活用するDiSC」です。株式会社Speeeの坂本様と株式会社ビズリーチの鈴木様をお招きしてお話を伺います。事業環境の変化スピードがますます速くなる時代に、いかにスピーディーに組織づくりをしていくかということは、大きな課題です。様々なバックグラウンドを持って集まった従業員の間に、いかに短期間でコミュニケーションの共通言語を築き、カルチャーを強化するか。時代の流れをつかみ、成長著しい両社の勢いをそのまま感じることのできる対談となりました。HRDグループの久保田がモデレーターを務めました。

 

☆ゲストスピーカーのご紹介☆

坂本 明美 氏 

株式会社Speee 人事部 部長

新卒でリンクアンドモチベーション入社。クライアント企業のコンサルティング営業に5年従事。2009年株式会社Speee入社。人事全般の立ち上げに従事。現在は全社の組織開発を担当。

 

鈴木 翔 氏 

株式会社ビズリーチ

HRMOS事業部 プロダクト企画部プロダクトマーケティングマネージャー

ソフトバンク株式会社、ワークデイ株式会社を経て、株式会社ビズリーチに入社。人事企画、組織開発、HRIS(人事管理システム)のマネージャーをつとめた後、HRMOS事業部にてプロダクトマーケティングマネージャーを務める。

組織の成長とトップの一言~内製化での導入・浸透フェーズ(株式会社Speee様)

久保田:DiSCアセスメントをコミュニケーションの共通言語として使い、組織文化をつくっていくプロセスを、導入・浸透・活用の三つのステップでお届けします。導入というのは、DiSCとは何かを知って、自分と他者との違いや自分自身は何が欲しいのかを知ることです。浸透のフェーズでは、全メンバーが共通認識を持つようになります。そして活用フェーズでは、ビジネスシーンでの活用を深く知り、行動変容、関係性の変化、成果につなげていきます。それぞれステージが違う2社に事例共有いただきます。

まずは導入から浸透に入るフェーズについて、Speee社の事例を発表いただきます。坂本さんお願いいたします。

出典:株式会社Speee
 
 
 坂本株式会社Speeeで組織開発の責任者をしている坂本明美です。弊社は、7月にJASDAQに上場させていただき、従業員は400名を超えてきている会社です。BtoB、BtoC、MarTechセグメント、X-Techセグメント、デジタルトランスフォーメーション等、9つの事業を幅広く展開しております。400名規模のIT企業の中でも、業種が9つ、新規事業が3つありますので、エンジニアから営業まで非常に職種が多く、今は多岐にわたるスキルセットやスタイルを求めているフェーズです。昔、50~60人くらいの頃にDiSCを実施した際は、Dとiのスタイルの人で8割程度を占めていたと思いますが、今は非常に多様なスタイルが増えてきていて、つくり上げてきたものをどう耕して定着させ深めていくか、そんなフェーズに入ってきているのはDiSCスタイル上からも実感しています。
 

DiSCとは付き合いが長く、以前は、外部講師に来ていただき研修を実施するスタイルでした。毎月やっていたわけではないので、全員の共有言語になりきれないところが反省点としてありました。そして組織が成長し、職種や人も増えて多様化してきた中で、DiSCを軸にそれぞれのスタイルを活かし合う人材育成、組織開発をしていきたいと内製化を進めました。社内にファシリテーターがいることで、「来週このチームで1つやろう」あるいは「DiSCを中心としたペアワークをやろう」など組織内でフレキシブルに取り組めていることができるようになりました。

久保田:DiSCを導入する上で代表の大塚さんはどのように思われていますか。

坂本:1年前、弊社メンバーがDiSC認定ファシリテーター資格を取得するきっかけとなったのは、代表の大塚から久しぶりにDiSCを受けさせたいとチャットで言われたことでした。その際、社内に資格保持者がおらず、DiSCを実施することができなかったのですが、代表がそのタイミングでふと「やろう」と言ったことが再び取り組むことになったきっかけとなりました。他の様々なツールと比較検討しましたが、DiSCはわかりやすく、一度学べば浸透しやすいなど、もっとも優れた点が多く、導入に迷いはありませんでした。

普段一緒に働く部署単位でのワークショップ(株式会社Speee様)

坂本:浸透は現在進行形で、働く仲間とお互いのスタイルを知っておくことが大事なので、各事業・職場単位で、約3時間のDiSCワークショップを開催しています。

出典:株式会社Speee

鈴木:ワークショップでは、意図的に上司部下を組み合わせるのでしょうか。

坂本:グループ構成はスタイル毎ですので、同じグループに新卒と部長や課長がいることもあります。普段から職場の風土として、発言するときには「誰に言うか」より「何をテーマに言うか」を大事にしていますので、組み合わせやチーム分けについてはあまり気にしません。

久保田:ビズリーチさんとアプローチが違うので、面白いことだと思います。その辺りは後ほどお話しいただきます。

坂本:新卒に関しては、担当するメンターとのペアワークを実施します。今年の新卒は、コロナ禍の状況もあり、より手厚くオンボーディングをやりたいと思っていました。ワークプレイスプロファイル、つまり本人のDiSCの結果について詳細にまとめたものを、新卒と最初に業務を教える一番密な人であるメンターと交換し合って、ペアワークで互いの特性の理解を図るものです。

メンターは、熟練の上長というよりは2~5つ上の先輩であることが多く、互いの特性を知る上では、かなりスムーズに初期段階のオンボーディングができたと思います。新卒はまだ一人も辞めていないので、現段階ではオンボーディングはだいぶ効いており、そこでDiSCには非常に頼りになっています。内製で、18名程度で3時間の効果的なDiSCグループ研修を行うためには、どうしたらよいかを考えながら設計しています。

鈴木:なぜ3時間なのでしょうか。

坂本:一般的に外部にお願いすると1日から1日半の研修になりますが、内製だと短時間でも実施できます。3時間という理由は2つあり、1つは午前の3時間、午後の3時間というようにフレキシブルに時間を確保しやすいので、現場の合意を取りやすいことです。私は子供がいて時短勤務でもあるので、その時間内に研修ができるよう設計していることもあります。もう1つは、事前に回答して手に入れたレポートを読み込んで考えてから研修に臨む従業員も多いので、かなりショートカットして効率的に取り組めるから、という理由です。その点は、協力して取り組んでくれている従業員に感謝したいと思います。

出典:株式会社Speee

久保田:坂本さん、導入までの経緯や詳細の共有、ありがとうございました。まず導入して、それから浸透させる、でもそれは、DiSCをやること自体が目的ではなく、組織をつくることがゴールにあり、その先何のためにやっているのか、ということが重要です。ここからは、実際に実践されているビズリーチさんにお話をお願いします。

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2021.5.18 事例紹介

いま、人材育成・研修のプロフェッショナルに求められること
求められるのは「地方局のラジオパーソナリティのスキル!?」
オンライン研修に対応するプロフェッショナル3社による知見共有
株式会社健育社様/株式会社ウィルコネクト様/株式会社メンター・クラフト様

HRDグループが主催するアセスメントフォーラムオンライン2020の中で、具体的なアクションを伴った再出発を考える「ReStart」。今回は「いま、人材育成・研修のプロフェッショナルに求められること」というテーマでお届けします。2020年は企業の人材育成も、COVID-19の影響を大きく受けました。研修の場所が教室からオンラインに変わっただけでなく、学びそのもののあり方も大きく変化しています。そこでこの度、人材育成のサービスを提供するプロフェッショナルの立場である3社によるパネルディスカッション方式で、その最前線を共有していただきました。モデレーターはHRDグループの久保田です。

 

 

☆ゲストスピーカーのご紹介☆
 
河野 貴史 氏

株式会社メンター・クラフト
常務執行役員

川崎製鉄(現JFEスチール)で新素材の材料設計・製造プロセスの研究開発に従事。同社在籍中にMBA(Bond University, Australia)取得。現在は、管理職から中堅社員クラスへのマネジメント研修をはじめとして、 ロジカルシンキング、コーチング等幅広く研修を担当。特に技術・研究者向けにイノベーションを起こしやすくするロジカルイノベーションや、コミュニケーション技術、また技術者のためのロジカルプレゼンテーション、エクセルを活用したビジネス統計分析等。

 
今 聴夫 氏

株式会社ウィルコネクト 代表取締役

株式会社リクルートにてデジタルコンテンツ配信プラットフォームの開発、オンラインゲーム会社の設立、新規事業開発部マネジャーとして情報誌のオンライン化の責任者として従事。2008年より株式会社ネクスト(現株式会社LIFULL )にて経営企画部長、人事部長に従事し、新規事業戦略の策定、人事制度改革や社内大学の立ち上げを行う。2012年、株式会社ウィルコネクトを設立し、企業研修の企画運営、研修プログラムのオンライン化の支援、経営・人事コンサルに従事。米国CTI認定プロフェッショナルコーチ。

 
畑川 郁江 氏

株式会社健育社 代表

外資系製薬会社学術部⾨、マーケティング部⾨勤務の後、2006年9⽉株式会社健育社を設⽴、医療⽤医薬品に関連する雑誌・記事・論⽂、製薬企業の資材原稿作成業務に従事。オンラインによる情報提供活動のニーズから、オンラインMRのためのコミュニケーション研修を開始。アナウンサーと共同で「声を届ける」発声の基礎から、オンライン情報提供の組み⽴て⽅、対話スキルなどを提供。

 

コロナ禍によって人材育成の現場に起こった変化と新しい研修様式(メンタークラフト様)
 

久保田:リモートワークやデジタルトランスフォーメーションが浸透していく中、密を避けるあまりに人との心理的距離まで遠ざけてしまうのは、本来のあるべき姿ではありません。より良い成果創出のために、人事や人材育成のプロフェッショナルとしてどのように支援できるのか、今は立ち止まる時ではなく、それを考えるタイミングだと思います。まずは、新型コロナによって集合研修を選択できなくなった人材育成の現場で何が起こったのか、そしてその状況に対応する新しい研修様式について、まずはメンター・クラフトの河野様にお話をいただきます。

 
 

河野:メンター・クラフトの河野です。よろしくお願いいたします。まずは、新型コロナ発生以降の経緯をご説明します。2020年の1月頃から新型コロナが流行し始め、4月以降になると集合研修はほとんどなくなってしまいました。その後、夏前からオンライン研修が増え始め、オンライン研修の比率が全体の8割を占めるようになりました。オンラインでの研修に取り組み始めた当初は、知識も設備もなくノウハウも蓄積されていなかったので、どうすればいいのかわからず非常に戸惑いました。何もないところで自分たちはどうするのか、お客様にどう対応するのかと非常に悩みましたが、「とりあえずやってみよう」とエンジンをかけたのが2020年3月、4月の頃のことです。

オンライン研修でも集合研修でも、最終的な狙いはどちらも同じです。お客様の経営、人事、ご担当者が考えられている「組織や人材がこのようになってほしい」という目的がありますし、受講者自身が「このスキルを身につけたい。もう一歩成長したい」という思いがあります。それに対して私たちがどのようにして応えられるか、そこが非常に大事なところです。

私たちが大事にしているのは、学びに対してワクワクドキドキすることです。「もっと学びたい、もっとこれを出来るようになりたい」と意欲的に取り組んでいただけるよう、研修を設計しています。具体的には、講師から伝える部分(インプット)を3割、みなさんでディスカッションをして気づきを導き出す部分(アウトプット)を7割としていますが、それをオンライン研修でどのように実現するのか、明確な答えはないながらも、お客様と共に考えながら実行していきました。

出典:株式会社メンタークラフト
オンライン研修で重要な「ディレクター」という存在

河野:オンライン研修で非常に重要なのは、受講者のサポートです。初めて受講する方は「このオンラインソフトはどう使うのか」「どのような機能があり、どのようなことが起こるのか」「普通にログインしてただ受けていればそれでいいのか」と心配する場合があり、そのソフト自体のトレーニングの必要があります。研修の当日にトレーニングすることもありますし、事前にお客様のほうでトレーニングしていただく場合もあります。事前にお客様やエージェントさんと打ち合わせをして設備や状況などの環境整備をしてから入ります。

オンライン研修では、現場対応も重要です。集合研修の場合は、現場で何かが起こったときにも講師が見ているので、その場で受講者と話をしたり事務局と連絡を取り合ったりして対応することができます。しかしオンラインでは、直接対応することはできません。そのために必要なことはいろいろありますが、まずは「ディレクター」の存在が重要になります。例えばZoomで研修を実施しているときに、「画像が映らない」「音声が途切れた」「画像が止まった」「Zoomの部屋から追い出されてしまった」などのトラブルが発生します。それに対して、迅速かつ冷静に対応できる人が必要です。その人は研修内容を知っている必要があり、講師がやりたいことの意図もわかる、そしてオンラインソフトがどのような仕組みで動いていて、どのトラブルのときに何をすればいいのかをきちんと理解しているなど、とても高いスキルが求められます。このようなディレクターは、あらゆる運営システムにおいて欠かせません。

久保田:実際に、ディレクターはどれくらい確保できていますか。

河野:基本的には弊社の中で確保するようにしています。お客様によっては、自社の中にディレクターがいるからやらせてほしいという場合もありますし、エージェントさんにサポートをしていただく場合もありますが、比率で言うと、弊社側で対応するケースが多くなっています。講師の意図をしっかり理解し、スピーディに対応する必要があるので、仮に外部の方がされるとしても、事前にしっかり打ち合わせをしないと意思疎通が難しいと思います。

初期の頃は「必要なものをそろえてとにかくやる」という状況でした。オンライン研修に必要なのはパソコン、ソフト、通信回線です。オンラインでもライブ感を出したいと思っています。テレビのように一方通行ではなく、相手の反応を見てこちらも発信を変えたいので、ホワイトボードの実物を自分の後ろに置いて、書きながら受講者に話しかけたり、場合によってはパワーポイントの上やオンラインホワイトボードに書いてみなさんから意見を募ったり、とにかく行ったり来たりを行います。

オンライン研修と集合研修では、どちらを選ぶべきか悩むお客様もいらっしゃいます。迷われたときには判定表を使い、どちらを選ぶか判定していただくようにしています。この判定表は弊社のホームページに載っています。これをたどっていくと、必要な条件や備品、キーワードも出てきますので、ぜひ参照していただければと思います。

出典:株式会社メンタークラフト

オンライン研修の場合、インタラクティブな時間が必要である一方で、参加者の表情が読み取りづらいため、講師側のファシリテーションスキルに加え、プログラム自体も変更する必要があります。理解を深めるために、基本的に時間をかけて行う必要があり、集合研修と比べて2割ほど中身を減らすのがベターです。また研修当日も丁寧にインストラクションをして、相手からの反応を受け止めて、それにリアクションをすること、そして突発トラブルにも落ち着いて対応することが大事です。

久保田:河野さん、ありがとうございました。では次に、バーチャルでの人材育成のメリットとデメリット、さらには今後の人材育成のあり方について、今さんからよろしくお願いいたします。

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2021.4.27 事例紹介

バーチャルワークプレイスにおけるEverything DiSC®による組織文化形成/GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社様

HRDグループが主催するアセスメントフォーラムオンライン2020「ReStart」。今回のテーマは「バーチャルワークプレイスにおけるEverything DiSC®による組織文化形成」です。急激に職場がバーチャル化する今、組織とそこで働く人の関係性も大きく変化しています。GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社の田中様に、新型コロナの前から先行してリモートワークを推進し、イノベーティブな組織カルチャーの醸成に取り組むなかで、Everything DiSCを有効活用している事例を共有していただきました。モデレーターはHRDグループの久保田が務めました。

 

 

☆ゲストスピーカーの紹介☆
 
 
 田中 里子 氏 
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社
HR戦略室室長 兼 CCO室室長
 
ITベンチャー(エンジニア/人材開発/ マネジメント)、インフラ業界(企画開発/人事)を経て、2015年にGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社に入社。現在はHR戦略室および、「CCO(Chief Culture Officer)室」で、CCOやメンバーと共にグループ横断の組織文化を創り、醸成していくことを目指す社内プロジェクトに従事。
 
 
事業からではなく、文化・カルチャーから変えていく

田中:私どもGMOグローバルサイン・ホールディングスは、コトをITで変えていくというミッションのもと、今課題になっている電子印鑑をはじめ、セキュリティ、クラウドインフラなどのサービスやソリューションを提供しています。元々はGMOクラウドという社名でしたが、年(2020年)9月に社名変更をしました。ホールディングスという社名からもお分かりかと思いますが、私どものグループ会社は何社かグローバルにございまして、そこで今、カルチャー変革に関する取り組みを行っています。

私は、普段はいわゆる人事の仕事と、CCO室で室長をしております。CCOというのは、チーフカルチャーオフィサーです。CCOやメンバーと共にカルチャー形成に取り組んでいます。組織文化は、意図せずとも自然にできていくものです。時代、事業、環境の変化に柔軟に対応していけるように、そして、なくてはならない会社として存続させていくために、事業からではなく、文化・カルチャーから変えていこうという取り組みを行っています。

本日はカルチャー変革への道のり、組織マネジメントにEverything DiSCを実際どのように使っているかを、3つのパート、つまり、カルチャー変革の取り組み、具体的な使いどころ、今後の取り組み、に分けてお話をしたいと思います。

まず、カルチャー変革の取り組みについてお話しいたします。

プロジェクトチームを立ち上げたのは2019年。今年で2年目、2021年が最終年となります。実際には、最初から「カルチャーを変えよう」とやっていたわけではありません。人事や事業の課題に取り組むなかで、人事主導で進めるのではなく、会社全体でカルチャー変革という名のもとで進めた方が良いのではという話に至り、どんどん巻き込んで大きくなった結果、準備の2年間も含めて全体で5年間におよぶプロジェクトとなりました。

私たちが目指すのは、2022年までに従来の企業文化から新しい企業文化に変えていこうというものです。文化というのはなかなかつかみにくく、見える化しづらいところがありますが、7Sという、元々はマッキンゼーのフレームワークを使い組織のカルチャーを共通言語化しています。さらに企業文化におけるパートナー、すなわち社員が新しい組織文化のなかでどうあってほしいか、新たなパートナー像を定義しています。

7Sのフレームワークを使った実際の定義を一部ご紹介します。

まず価値観ですが、私たちがいちばん大切にしているミッションやビジョン、バリュー、コトをITで変えていく、ビジョンはone&1st、バリューはワクワク、という言葉を掲げています。組織構造については、ここがDiSCの使いどころなのでキーワードにもなりますが、上下関係を伴う階層がない組織ということを、はっきりとうたっています。マネジメントがなくなるとは決して思っていませんが、マネジメントだけをする管理職はなくしていく構造です。ピープルマネジメントは、できるだけセルフマネジメントや仕組みに置き換えることを考えています。社風・スタイルは、価値観や理念を共有するパートナーの多様性を相互に受け入れていく、このようなカルチャーの全体像となっています。

出典:GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社

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2021.3.26 EVENT

DXにおける組織と人材を問い直す ~先進事例から考えるDXに必要な人材の特質と組織戦略~

ReThink Day5 イベントレポート

HRDグループが毎年開催しております「Assessment Forum Tokyo」、今回はオンラインに形を変え、コロナ禍に向き合う新しい未来のための価値あるコンテンツを提供する場として開催されました。 経営戦略やDX、グローバル人事など、より広い視点から組織・人材マネジメントについて問い直し、再出発するための一連のデジタルイベントとして多く方のご参加を賜りました。 

ReThink第5回目は、「DXにおける組織と人材を問い直す」というテーマで、株式会社ブレインパッドの関口朋宏さんにお話をうかがいます。ナビゲーターはHRDグループの韮原祐介が務めます。

 
☆ゲストスピーカーのご紹介☆

関口 朋宏  
株式会社ブレインパッド 取締役 ビジネス統括本部長
大手外資系コンサルティングファームに新卒で入社。戦略グループのシニアマネジャー等を経て、株式会社ブレインパッドに入社。データ分析を起点とした事業展開に経営陣として携わる傍ら、DX推進のアドバイザーとして、業界を問わずさまざまな企業を支援。

【株式会社ブレインパッド社】
ブレインパッド社は、2004年の創業以来、データによるビジネス創造と経営改善に向き合ってきたリーディングカンパニーです。これらに関してお困りの際には、気軽にご相談ください。
ホームページ:https://www.brainpad.co.jp/

技術を知っているかどうかよりも、ビジネスをきちんと理解した人材を登用

韮原それでは、私から現状についてお話をしたいと思います。コンサルティング会社のマッキンゼーが、世界でデジタル化がどれだけ進んでいるかについて出した「デジタル革命の本質: 日本のリーダーへのメッセージ」(2020年9月)というレポートがあります。各国でコロナ感染が拡がった後にどれだけデジタル化が進んだのかについての調べによると、オンラインストリーミングなどエンターテイメント、仕事のための会議などのコミュニケーションを中心にデジタル化が進んでいます。特にアメリカやインドにおけるデジタルサービス活用がコロナによって激変した様子が出ているのですが、日本はあまり進んでいない、という調査結果が出ています。

コロナ以後において、各国で一番利用が増したのは、オンラインストリーミングサービスの利用です。アメリカやインドで40%以上、イギリス、ドイツでも30%以上増加していますが、日本では20%未満。飲食店の宅配サービス、仕事のためのビデオ会議なども、日本以外の各国で20~40%ぐらいの増加が見て取れますが、日本ではなんと10%未満の増加です。

調査の母集団についての疑義を投げかけたくもなりますし、マッキンゼーがこれを使ってビジネスをやろうしている背景を差し引いても、各国比較で日本は遅れているということになっています。

そして、デジタル変革に関する調査もあます。デジタル変革は、通常の変革よりも難しく、成功したケースは16%しか存在しないと報告されています。特に製造やエネルギー、インフラ、や製薬などのトラディショナルな業界においては、成功率は4~11%に留まるそうです。残りの9割近くは、デジタル変革にトライしたけれども上手くいかなかったということになります。

グローバル企業の経営者にインタビューをしてみたところ、人材や組織面に問題意識を持っているということです。「シニアマネジメントのフォーカスと文化」「デジタル・テクノロジーへの理解不足」「人材の欠如」「組織」の問題と、失敗の要因が続いています。「ITインフラの欠如」や「デジタルと従来の対立」「データの欠如」という項目ではなく、やはり問題意識のトップに上がっているのは、人材や組織に関する部分です。本日は、この部分を問いて解いていきたいと考えています。

では関口さん、そもそもDXとは何かということから教えてください。また、進めていくうえで人材と組織の課題が大きいという声が挙がっていますが、実際に各企業で推進していくにあたりどのように感じていらっしゃるでしょうか。

関口改めまして、ブレインパッドの関口と申します。よろしくお願いいたします。先ほどのマッキンゼーのレポートは、結構悲しいですね。こんなにオンラインも使っていてスマートフォンも使っている、Amazonや楽天などを使う人もたくさんいるにも関わらず、レポートではあんなに低いというのはどういうことなのでしょうか。

また、先ほどありました人材の話も、経営陣の課題となることが多いですね。トップのコミットメントが不足していると言いますが、先ほどのレポート結果で面白いと思ったのは、「シニアマネジメントのサポートの欠如」ではないとありますがフォーカスはしていないという点です。

私たちはブレインパッドでデータ分析をテコにしていろいろとやっていますが、その現場で見ているものをお話ししたいと思います。

デジタルトランスフォーメーション=DXとなりますが、トランスフォーメーションだということが今回の大きなテーマだと思います。

私たちは半年前、300名以上の方々を対象に、「5つあるDXのうちどれを実施しているか。またそれは成功しているか」という調査をしました。3割以上の方が何かしら行っていて、オペレーションのデジタル化など足元から始めていくものは成功していますが、新規ビジネスを作ったり今のビジネスを変えていったりとなると、成功確率は低くなっているという結果がでています。この調査はコロナ前に行いましたが、コロナ後に聞くと「リモートワークの環境を導入している」という回答がほとんどでした。

出典:株式会社ブレインパッド

私はブレインパッドで全社の営業統括をしていますが、オンラインで何かをすることが当たり前になっている中で、オンライン営業で苦戦している営業パーソンがたくさん増えたという悩みがあります。みなさん難しいとおっしゃいますがそれはなぜかと今考えていまして、オンラインと対面にはメリットとデメリットがあるので、それをきちんと理解した方がいいと思っています。対面は、相手の表情なども含めて圧倒的に情報量が多いですよね。分からなかったときでもインタラクティブにいけるので、行間も埋まっていきます。しかし、オンラインはアポイントが取りやすく回数をこなせる反面、1回の密度がとても薄いのが難しいと感じます。オンラインは、手元にカンペを置いていても相手にはバレませんが、対面ではバレてしまうので手元には置けません。その辺りの違いは面白いと思います。

皆さんがご存知か分かりませんが、『チャレンジャー・セールス・モデル』という本があります。営業パフォーマーにはいろいろなタイプがあり、チャレンジャーセールスを目指そうという本です。その本の中に、営業ハイパフォーマーの構成比がでてきます。

5種類の定義がされていて、勤勉な“ハードワーカー”や関係性で戦っていく“リレーションシップビルダー”、一匹狼で動いていく“ローンウルフ”、お客さんから言われたことを愚直に答えていく“リアクティブ・プロブレムソルバー”、お客さんの気づいていない課題に対して自分の展開でどんどん仕込んでいき、とにかくお客さんのビジネスに対して課題提起をしていく“チャレンジャー”とあります。この本の中ではどんな環境でもチャレンジャーが強いと言われていますが、オンラインになって辛いのはリレーションシップビルダーで、ハイパフォーマーの20%がそういう人だとすると、確実に20%の人は苦戦しているということになります。

出典:株式会社ブレインパッド

これは海外の調査ですが、日本に置き換えると関係構築型が非常に多いと思います。

とくに日本は、あらゆる業界№1の人が「うちは営業力で勝っている」と言いますので、20%では済まないかもしれません。一方で、これからはリレーションシップ型の営業を採用するのはダメだとして、チャレンジャーなど攻めていくタイプの人を採用していきたいと考えましたが、どう見抜けばいいのかが分かりません。コロナ禍前の営業についてどうだったかを履歴書に書かれても、例えば、ウェットな営業をしていたら今の時代ではダメなので当てになりません。営業スタイルを見抜こうと思ったときに、ロールプレイをするわけにもいかないので、見抜くためには上級テクニックが必要です。そうすると、今後オンラインが主体となってくる中で、人材アセスメントの重要性はとても高まります。

韮原見えないものを測りたいときに、やはりアセスメントは重要だと思いますね。

関口次世代の営業マネージャーをどのように選べばいいのか?ですが、最初にPXTを紹介していただいたとき、確か事例が営業だったと思いますが、その時代、時代によってハイパフォーマーの定義とは変わるので、今までのハイパフォーマーと言われていた人とは違う人を選んで、新しいハイパフォーマーのモデルを作る必要があるということが説明されました。まさに今はそのハイパフォーマーをどうやって選ぶのかも悩みのひとつです。この悩みは日本中で起きていると思うので、パートナーの皆さんは攻めどころだと思います。

韮原先ほどのデータの話に戻りますが、デジタルトランスフォーメーションを進めるときの人材不足もあると思います。その点は、ブレインパッドとして外からサポートするときに、そもそも社内の人材で外部リソースを使いこなして旗を振る人は必要で、変化をイネーブルする人も必要だと思います。そういう人の選出も課題だと思いますが、いかがでしょうか。

関口確かに、誰がやるのかというのは大きな課題です。IT部門というのは、技術が分かっているのでデジタルに向いているというやり方で人を選んでいるところが多いですが、ビジネスを変えなければならないという話なので、技術を知っているかどうかよりも、ビジネスをきちんと理解していて、また現場の苦労も理解している人を選ぶ方がいいです。しかし、経営陣は技術のことは分からないから分かる人に任せようとして、それで失敗していることがよくあります。

韮原なるほど。本日はDay5ですが、Day1でライズ・コンサルティング・グループの佐藤さんにお話を伺いました。withコロナ、afterコロナでどのような人材が必要かという話で、佐藤さんがおっしゃるには、社内のイノベーション人材と事業をまわすオペレーション人材、そして今は、たくさん起きている変化の中でみなさんに寄り添うメンテナンス人材というものが必要だというお話をされていました。

これから必要な人材はイノベーション人材、オペレーション人材、メンテナンス人材の3種類です。佐藤さんがおっしゃっていてごもっともだと思うのは、戦略は、デジタル戦略やコーポレートトランスフォーメーション戦略などいろいろとあり、そこから組織の機能設計に落としていき、人材要件をプロファイルのようなことをして見極めて、配置し育成して評価となります。この資料にあるように、上から下が断絶していて、中期計画でデジタルトランスフォーメーションと言っていても人材については相変わらず以前と同じ管理職研修を行っています。これは御覧になっている皆さんにもかなりのチャンスで、戦略を育成や評価制度まで落とし込むというのは重要なポイントです。これを佐藤さんからお話しいただいたときに、「昔この話をしていたな」と思い出しました。

これは、先ほど触れた2012年3月の公開セミナー資料で関口さんと2人で作ったものですが、当時の経営的な文脈で言いますと、グローバル化を進めていかなくてはならないときで、且つGoogleやFacebookなどのGAFAが台頭しはじめた頃です。グローバル化とアフターインターネットの時代で、AIはまだありませんでした。当時言っていたことは、高度成長してきたころの人材と、成熟期あるいは成熟停滞期の人材はやはり違っていて、オペレーション的に回す人と、会社を変革し新市場を作っていく、グローバルに打って出ていくという人は、違うタイプの人だということです。そのときに、イノベーション人材とオペレーション人材と資料に書くと、上司に「横文字は使うな」と言われ、開拓・変革人材と書き直しました。

出典:経営戦略セミナー「確実な成長を牽引する人材マネジメント」公開資料より

そして成果創出人材とあるのは、既存ビジネスの中で確実に成果を上げていく人で、先人たちが作り上げた勝ちパターンを維持・改善していくような、いわゆるビジネスを回していくオペレーション人材のことです。今ではそこにプラスしてメンテナンス人材が入ります。8年前も、変革人材、イノベーション人材は枯渇状態で、人材供給の仕組みが極めて脆弱なため仕組みを作っていく必要性を訴えていました。これは今も同じでしょうか。

関口:デジャヴでしょうか、ずっとこの話をしているな、となりますね。そういう意味では、今も同じだと思います。

このときに話したのは、日本企業がグローバルで地位があったということですよね。ある意味伸び切った状態でさらに上に行くにはどうすればいいのかという話で、さらなる成長をするためには伸びきった状態の人をハイパフォーマーと設定しても間違ってしまう、ということだったと記憶しています。

韮原そうですね。あとはリーマンショック後で回復しきっていないので、回復するためには何が必要かというときに、新規事業やグローバルの新市場が重要だという文脈もあったと記憶しています。例えば、アジアは工場だけだったけれども、そこが成長市場として重要度が増した、というような話でしたね。

関口当時のリーマンショックが今のコロナ、グローバリゼーションがデジタライゼーションに変わっているだけで、確かに同じことを言っていますね。

今は、イノベーション人材や新しいことを仕掛けて変えていく人がいないと言っていて、これについてはアベノミクスの影響が大きいと思っています。業界トップの人の中には、「15年以上良い時代を過ごしている」とおっしゃる方もいますが、15~20年ほど良い時代を過ごしてしまったので、変える必要性を感じなかったという点で同じですね。

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2021.3.12 EVENT

ラーニングのオンライン化のその先、3つの方向性 ~変化が必要なこと(STOP)/新しく始めること(START)/変わらないこと(KEEP)~

ReThink Day3 イベントレポート

HRDグループが毎年開催しております「Assessment Forum Tokyo」、今回はオンラインに形を変え、コロナ禍に向き合う新しい未来のための価値あるコンテンツを提供する場として開催されました。 経営戦略やDX、グローバル人事など、より広い視点から組織・人材マネジメントについて問い直し、再出発するための一連のデジタルイベントとして多く方のご参加を賜りました。 

ReThink第3回目の本日は、ユームテクノロジージャパン株式会社の小仁様と株式会社シェアウィズの辻川様をお招きし、「ラーニングのオンライン化のその先、3つの方向性」というテーマでご対談をいただきます。ナビゲーターは、HRDグループの久保田智行が務めます。

 
☆ゲストスピーカーのご紹介☆
 
小仁 聡  
ユームテクノロジージャパン株式会社ビジネスプロデューサー
株式会社ラーニングシフト 代表取締役
大学卒業後、(株)ビジネスコンサルタント、アルー(株)、(株)ファーストキャリア、(株)セルムを経て、株式会社ラーニングシフトを設立。100年時代の学びをアップデートするべく、HRテクノロジーを活用した事業開発、研修・組織開発コンサルティングを提供。UMUの国内での拡販に初期メンバーとしても参加。現在、企業のラーニングのオンラインへのトランスフォーメーションを支
援している。DiSC認定コンサルタント。
 
【UMUに関するお問い合わせはこちらまでお寄せください。】Email: cs@umu.co

辻川 友紀 
株式会社シェアウィズ 代表取締役
1984年生まれ。京都大学大学院生命科学研究科修了。P&Gジャパン(株)を経て、2012年に(株)シェアウィズを設立。「学習コンテンツの流通を最適化し、学ぶ希望が見つかる場所をつくる」をミッションに掲げ、社会人向けのオンライン動画学習サービスを提供。個人向けの学習コンテンツプラットフォームShareWisの他、研修事業者、教育事業者等を対象にした、法人向け学習コンテンツ配信システムWisdomBaseを展開している。

【シェアウィズ社へのお問い合わせはこちらまでお寄せください。】Email: support@share-wis.com

 

オンライン化によって、教育プロセス全体の設計と実践が可能に

久保田:新型コロナの影響で、教育や学びが一時止まってしまい、その後オンライン化が進みました。しかし、教育については、以前から変化や革新が求められていました。新型コロナの影響により急激な変化が余儀なくされましたが、もし新型コロナが収まったときにどうなるのか。本日お招きしているおふたりは、新型コロナの前から教育や学習の変化を見据え、実践されてきました。さらに今は、未来を見据えていらっしゃると思うので、是非おふたりの知見を共有していただければと思います。早速ですがラーニングの変化について、小仁さんの所感をお話しいただけますか。

小仁:今年は、多くの企業様がオンライン化に踏み切りました。来年度からはどうなるのか、ということについて情報提供をさせていただきます。本日のテーマであるラーニングのオンライン化は、今から2年前、もともとは東京オリンピックを見据えた準備が進められていました。私たちが提供するラーニングプラットフォーム「UMU(ユーム)」も、今回のコロナ禍の中で、一気に受講者が増えました。日本国内において、アプリの企業ユーザー登録も9000社に到達しています。そんな状況下において、私たちが実感したニューノーマル時代の学習トレンドについてお話ししたいと思います。

2020年度はオンライン化の年になりましたね。ここで言うオンライン化というのは、これまで主流だったeラーニングだけでなく、Zoomなどを活用した、オンライン研修と学習という領域まで波及したという意味です。いつでもどこでも、どんなときでも可能になりました。しかし厳密に言うと、オンラインと一言でいっても色々なものがあります。

「オンラインの多様性」:出典:UMU Technology Japan Inc,

軸で分けると、上が双方向で下が一方向。右と左が同期、非同期ですね。Zoomによるグループミーティングは、右上のオンラインクラスルームに該当します。この領域は共有体験を実現し、即時フィードバックがあり、対話を通じて学ぶことに向いています。一方で、ウェビナーは一方通行ですが、拡張性が高いですし、記録・保存して二次利用ができます。先ほどのオンラインクラスルームでは参加者のプライバシーや機密性の高い情報を含めた様々な声が入っているので、他では利用できません。

そして左側の非同期では、オンデマンドは設計が不要なので、コスト面でメリットがありますし、これに双方向性を取り入れたのがeラーニングです。自分自身のペースで学習できたり、多くの学習機会があったりするので、全員がアウトプットできます。集合研修は、ぼーっと受けていても受講になりましたが、オンラインではそれができません。

こういったものの中から、効果、効率、コストのバランスを考えながら最良のものを選択するということが、今年、様々な企業様が模索されたところだと思います。

それでは、対面集合型、そしてオンラインの研修や学習が、来年度どのようになっていくか。私たちが考えるキーワードは、「ブレンディッド・ラーニング」です。やはり学習には目的があるので、最適な形で学習方法を組み合わせることがポイントになります。

これからの学習フォーマットは、「教室内でのトレーニング」「オンラインでのライブ研修」「オンライン自己学習」の三つに分類されていきますが、どれもメリットとデメリットがあります。例えば、教室内のトレーニングはその場での参画度はとても高いのですが、アウトプットは設計によっては難しいですね。私はオンラインでのライブ研修が大好きですが、チャットで呼びかけると、全員が投稿をしてくれるので、むしろ情報が多いのではないかと思います。テーマによって、この3つをどのように組み合わせていくのかということがポイントだと思います。

「今後の3つの学習フォーマット」:出典:UMU Technology Japan Inc,

教育のオンライン化最大のメリットは、教育プロセス全体の設計と実践を可能にしたことにあると思います。従来の研修はイベント色が強く、本当に身についているのかどうかが疑問でした。フォローでもう一度集合研修をするのは交通費や宿泊費がかかりますよね。ここで有効なのがブレンディッド・ラーニングです。やはり「知っている」を「できる」にするためには大きな壁があり、定着化や現場で使ってみてなんぼの世界です。オンライン化によって、やってみたものをしっかりとフィードバックしてコメントをしたり、他の人と共有したりすることが可能になり、学び方も大きく変わりました。

従来型のeラーニングはコンテンツが多く、少しテストをするくらいのものでした。今の「マイクロ・ラーニング」では、短いコンテンツを学んだら都度、実際に話すのか、試験を受けてみるのか、あるいは自分の言葉にしてみます。そして、もう一度フィードバックを受けます。このサイクルを実行するには、コスト面を考えると、どうしてもオンラインを使わざるを得ません。むしろ、オンラインを使うことによってのみ可能になります。来年度の学びのスタイルは、事前にオンラインで学習し、その後、集合研修を行い、事後にオンラインでフィードバックをするという流れになると考えます。

私たちは、これを「パフォーマンス・ラーニング」と呼んでいますが、成果が上がるための設計があって初めて活きてきます。なので最悪の設計をデジタル化すると、最悪の研修になってしまいます。よって知識やハンズオン(実際に手などを動かすもの)、ソフトスキルや理念浸透など様々なテーマに応じて、どうしたら効果的に教えられるのか、どうしたら効果的な練習ができるのか、どうしたら評価できるのか、それをブレンディッド・ラーニングで集合研修と自己学習、オンラインのライブ研修を組み合わせながらやっていくということが、来年度の研修の在り方になっていくと考えています。

「オンライン化のその先は『ブレンディッドラーニング』」:出典:UMU Technology Japan Inc,

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2021.2.3 EVENT

リアルからバーチャルへ、変わる『職場』の再定義

~データから見える真実と向き合い、新たな組織マネジメント手法を見出す~

ReThink Day2 イベントレポート

HRDグループが毎年開催しております「Assessment Forum Tokyo」、今回はオンラインに形を変え、コロナ禍に向き合う新しい未来のための価値あるコンテンツを提供する場として開催されました。 経営戦略やDX、グローバル人事など、より広い視点から組織・人材マネジメントについて問い直し、再出発するための一連のデジタルイベントとして多く方のご参加を賜りました。

ReThink第2回目は、Virtual Workplace Lab.の代表であり、株式会社エスノグラファーの代表でもある神谷俊様をお招きしております。「リアルからバーチャルへ変わる職場の再定義」をテーマにお話をいただきます。 HRDグループの久保田智行がモデレーターを務める、対談形式で進めてまいります。

 
☆ゲストスピーカーのご紹介☆

神谷 俊氏
Virtual Workplace Lab. 代表
株式会社エスノグラファー 代表取締役
法政大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。エスノグラフィーという調査方法を専門技能として、企業や地域などの分野でフィールドワークを実践。2020年5月、ポストコロナ時代の「職場」の在り方や働き方を探求することを目的に研究プロジェクト Virtual Workplace Labを設立。従来の職場環境が、バーチャルな環境にシフトすることによって生まれる効果や不整合について研究知見を提供。丹念な文献リサーチと企業調査を繰り返し、実践的なノウハウの提供を推進している。

神谷氏へのご質問は、下記までお寄せください。
https://www.virtual-workplace-lab.com/contact

バーチャルシフトが進む中で“起こっていること”

久保田神谷さんも本日、約半年ぶりに東京に出られたということですが、多くの方々が新型コロナの感染拡大により、働き方が大きく変化したと実感されていると思います。
バーチャルシフトは日本だけではなく、人類全体の実験だと思います。新型コロナが治まった時にどうするのかという点については、現時点において、組織によって考え方が分かれていると思います。バーチャルシフトというのはメリットもデメリットもありますよね。本日は、その点をなるべく言語化して、明確にしていきたいと考えています。組織社会学的なアプローチで知見が豊富な神谷さんをお招きできて、本日はとても嬉しいです。

神谷さんはこの春にVirtual Workplace Lab.を立ち上げて、バーチャル時代の組織について研究されています。本日はそのデータもたくさんご用意いただいております。まずは、バーチャルシフトの特徴や定義づけをお願いします。

「これまでの職場の特殊性」:出典:Virtual Workplace Lab. 

神谷株式会社エスノグラファーという、リサーチとコンサルティングビジネスの会社を経営しています。このエスノグラファーという会社は、私が研究者のときに、文化人類学や社会学のエスノグラフィーという調査方法を専攻していたので、その調査方法を用いながら地域や企業の活動、商品開発をしていこうということで立ち上げた会社です。定量的なアンケート調査も行いますが、基本的には現場やフィールドに行き一社員としてお仕事をさせていただいたり、ひとりの研修受講者としてその研修に参加しながら、他の社員や受講者の動きを観察するという質的な調査を中心にビジネスを展開しています。

しかしコロナウィルスの感染拡大により、全面的に皆さんがリモートワークに移行しましたよね。その中で私も現場に行くわけにいかないので、オンライン環境でのエスノグラフィーであるバーチャル・エスノグラフィーを始めました。すると、上半身だけスーツを着て会議に参加をしたり、後ろで子供が騒いでいると音声を消したり、あるいは背景を全てブラックアウトにして家庭が見えないようにしたりといったような、一見すると矛盾しているような不都合な状態というものがたくさん見受けられました。これは何とかした方がいいと考え、4月にVirtual Workplace Lab.というプロジェクトを立ち上げた次第です。

久保田緊急事態宣言で、皆さんが家に留まっている最中でしたね。

神谷そうですね。3月頃から全面的にリモートに移行すると思いましたし、それまで、海外に比べて日本はリモートの導入率が圧倒的に低かったのです。企業では全体の15%ほどしか導入していませんでしたし、導入している企業の中でも数%の社員しか実際にリモートワークを利用したことがないという状態でした。社会的に働く上での制約とでも言いますか、例えばお子さんがいて、なかなか働く時間が十分に取れないといった方に向けての制度としてのリモートワークという位置づけになっていました。なので、これは適用するのが難しいだろうと思い、適用を支援するために立ち上げたプロジェクトがVirtual Workplace Lab.です。

このプロジェクトの基本的な概念はバーチャル・ワークプレイスです。海外では当たり前のように研究されている領域なので、オンライン上の職場での研究文献を読み込んでいます。海外では、90年代以降からバーチャルチームの研究は進んできているので、その辺りの知見をインプットしつつ、日本のリモート環境におけるHRM(人的資源管理)の役割、つまり、人事がオフィスではない環境下でどうやって社員を支援できるのか、または能力開発ができるのかといったところを定義していきます。さらにリモートワークに移行する企業の多くは問題を抱えているので、その部分の解決コンサルティングも行っています。

では、リモートワークの推進背景、バーチャルシフトの本質部分についてお話したいと思います。バーチャルシフトとは何かというと、「リアルからバーチャルに移行すること」ということが最もシンプルな説明ですね。オフィス環境からどこでも働けるような環境にシフトしていくことです。このバーチャルシフトを今後も続けていくのか、とよく聞かれますが、私は今後も継続的に進むと思っています。理由は、日本政府がそれを支援しているからです。日本の労働人口が1990年代からどんどん減少していく中で、生産性や一億総活躍と皆さん言われ続けていますよね。その国が抱えている大きな人的資源の問題とリモートワークというのは、とても相性がいいです。

今回の新型コロナウィルスによって皆さん強制的にリモート環境に追いやられたわけですが、そこで得た学習機会は大切にしなければなりませんし、それを活用しなければ、高齢化社会の中での日本のビジネスというのは持続的ではないと思います。なのでバーチャルシフトはまだ続くと思います。
また世界的な潮流として、マッキンゼーが指摘しているウォー・フォー・タレント(人材獲得競争)がスタートしています。優秀な人材をいかに獲得していくかということで、バーチャルシフトが重要になってきています。例えばとても優秀なエンジニアが沖縄でダイビングをしながら働きたいと言ったときに、企業はその人材をとれるかが重要です。リモートワークを採用していれば難なく獲得することができます。しかしオフィスに来てもらわなければならないという前提になると、採用は難しくなります。

久保田それは国をまたいだときにも言えますね。

神谷そうですね。GoogleやFacebookなどは従来からバーチャルチームの運用をしていますが、彼らがバーチャルチームを取り入れている理由は、市場を全世界で見ているので、世界中から優秀な人材を調達してプロジェクトチームを作るためです。なので中国、日本、アメリカ、イギリスといったところで点在している社員が、チームを組んでプロジェクトを進めるといったことも可能です。社会的な背景やビジネス効率の両方を踏まえても、リモートワークはとても相性がいいですし、それを戦略的に進めていく時代が来ていると思います。

実際にアメリカのガートナーは、「2021年までに中堅と大手企業の4分の1がバーチャルな環境へのシフトを成功させる」と言っています。全員がオフィスに集まって合意形成の会議を行い、それで意思決定をしていくというスタイルではなく、それぞれのチームが現場で判断して意思決定を行うという、セルフマネジメントを中心とした考え方で分散型の意思決定が進んでいくと考えられます。そしてリモート環境が整備され、オフィスの意味が変わってきます。仕事をする場所がバーチャルになるのであれば、オフィスは新たな意味を持ってくるので、その辺りの再設計が進められるということが、新型コロナの前である2019年から言われています。

過去の研究を見ていくと、リモートワークの導入メリットについて、このように言われています。まずは時間的なコスト削減です。もちろん移動時間などが削減されるので、時間的なコストダウンは有益になります。また距離のコストダウンです。出張やお客さん先の訪問などが無くなるので、その辺りのコストも削減されます。そして自律性やセルフマネジメントの向上です。現場が自主的に判断するという能力や問題解決の力が身に付きます。

それからタレントマネジメントの効率化もあります。ここでいうタレントはとても優秀な人材のことを指しますが、先ほど沖縄でダイビングをしながら仕事をしたいという人の例をあげましたが、そのような優秀な人材を時間や場所の制約に囚われずに、プロジェクトにアサインしたり採用することができます。もちろん採用力が上がりますし、知識共有が促進されます。オフィスでは皆さん黙々と仕事をしているので、なかなか情報の共有は進みませんでしたが、バーチャルではチャット上でどんどん情報の共有がされます。

「リモートワーク導入のメリット」:出典:Virtual Workplace Lab. 

久保田リアルな職場の方が、会話の中で情報共有ができるという意見もありますよね。両面があるということでしょうか。

神谷知識の質にもよると思いますが、メディア上に掲載されている情報や論文の情報など、バーチャルに置かれている知識の共有というのは、オンラインの方が共有されやすいです。しかし現場で培ったノウハウや営業経験から得た知見などは、おそらくリアルの方が共有されやすいと思います。総論的に見ると、情報共有が促されやすいという研究結果があります。
そして創造性の向上です。これは日本企業においては微妙なところがありますが、オンラインでは意見を出しやすいです。自分の意見をチャットなどで書き込みやすいので、様々な意見の有益な衝突が起こります。そのコラボレーションの中から創造性が生まれやすいと言われています。

そして皆さん気になるところだと思いますが、ネガティブなものもたくさんあります。先ほど知識の共有のところで、知見やノウハウが共有されにくいという話がありましたが、やはり意図しない情報は入りにくいです。自分が探したり検索することで得られる情報は周囲と共有しやすいですし、自分の仕事に関する情報というのは入ってきやすいのですが、例えばオフィスを歩いていると「最近何をやっているの?」と話しかけられるところから始まる、偶発的な情報共有があります。それが低下することによって、学習レベルも低下すると言われています。

そして家で仕事をしているので、特に若手の方でワンルームに住んでいる方が非常に感じやすいのですが、孤独感を感じたり、あるいは子育てをしている方が仕事中に子供の面倒を見たりすると、罪悪感を感じるケースも報告されています。そうして心身が弱まってしまうので、健康レベルが低下してしまいます。また、エンゲージメントが低くなりやすいです。分散して働いているので組織を感じる機会が少なくなり、組織に対するエンゲージメントが低下しやすくなります。

「リモートワーク導入のリスク」:出典:Virtual Workplace Lab. 

久保田新入社員の中には、入社後ほとんどオフィスに来ていなくて、顔を合わせていないという人も多いと思いますが、それで新入社員のエンゲージメントに影響が出ているという話はよく耳にします。

神谷新入社員は従来であれば、現場での相互作用、例えば先輩社員や上司、同期とのコミュニケーションの中で組織への適応をしていきます。しかしそのコミュニケーションがある程度制限されてしまい、働いている実感が持てません。また、企業が新入社員への仕事をバーチャルで生み出すことが出来ておらず、雑用をお願いしてしまうケースが多いです。それでやりがいを感じられず、当然周りから褒められるケースも少なくなるので、承認されずに孤立化するというケースも増えています。

そんな中で会社を辞めたいという気持ちも出てきますし、上司の管理レベルも低下します。部下が今、どんなことでトラブルを抱えているのか、どんなことで悩んでいるのかがとても分かりにくいです。オフィスにいれば、朝出社してきたときの顔を見てなんとなく察することが出来ますし、「ざわざわしている」といったようなノイズから何かを感じることも出来ます。しかしオンラインではそれが出来なくなるというデメリットがあります。結果的に人事評価の質の低下となり、適切に評価が出来なくなったり、反対に部下は上司にアピールする機会が減るので、昇進昇格が停滞します。

また、ワーク・ファミリー・コンフリクトという概念がありますが、仕事と家庭がコンフリクトします。これは大きな問題だと思いますが、やはり家庭は家庭でとても大きな仕事量があります。しかし、それとは別に仕事もあるので、それぞれが同じ空間で行われるとせめぎ合いが起こります。例えば仕事でイレギュラーが発生して緊急対応をしなければならなくても、それが子供を迎えに行く時間と重なったとすると葛藤が起こります。どちらを取っても罪悪感は残ります。このようなコンフリクトは様々な状況で発生します。

久保田今までは場が違うので、そこで切り離されて責任も明確になっていたけれども、同じ場にいるとリアルになりますね。

神谷やはりバーチャルの特徴は、時間と空間が融合してくるということです。仕事の空間はオフィスで、仕事の時間は定時などと定まっていたものが、家庭の空間と時間軸がミックスしてきます。その矛盾がありますね。本来であれば、家庭というのは仕事を忘れて家事や育児に勤しむ場なのに、そこで仕事を行うことによってコンフリクトが起こります。

リモートワークという働き方にはメリットとデメリットの双方がありますが、これからの日本を考えると、やはり労働人口が減少していく中で、どのように生存戦略を作っていくかが求められます。その点において、リモートワークというのはとても重要なキーになってきます。一方でデメリットもたくさんあるので、バーチャルシフトをいかに円滑に進めていくかということが、非常に重要なポイントになってきます。

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