HRDNext経営戦略策定の手引き事業×組織×人材の戦略統合による新時代の企業成長論
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HRD株式会社 - Human Resource Development

" リモートワーク " に関する記事
2021.12.9 EVENT

ポストコロナの働き方と職場・チームのゆくえ 「心理的安全性」で日本企業の足腰を強化する『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day4』

 

 

 

★ゲストスピーカーの紹介★

早稲田大学准教授
村瀬 俊朗氏
Toshio Murase

1997年の高校卒業後、渡米。2011年にUniversity of Central Floridaから産業組織心理学の博士号を取得。Northwestern UniversityおよびGeorgia Institute of Technologyで博士研究員(ポスドク)として就労後、シカゴにあるRoosevelt Universityで教鞭を執る。2017年9月から現職。専門はリーダーシップとチームワーク研究。2019年から英治出版オンラインで「チームで新しい発想は生まれるか」を連載中。『恐れのない組織』(エイミー・C・エドモンドソン著、野津智子訳、2021年、英治出版)の解説者。 

 

 

いま、組織・チームにどのような変化が起こっているのか~組織文化の変革 イノベーションと心理的安全性

 

新しいものを生み出す際には“挑戦”が必要

まず、久保田がDX・社会の変化と求められる組織の在り方について、世界経済フォーラムやマッキンゼー、経済産業省のレポートから、「変化対応組織に求められるのは『チームレベルの文化の変革』であり、その鍵として『心理的安全性』の確保が挙げられている」ことを紹介しました。 

ここで久保田は村瀬氏に「そもそも『チーム』とは何か?いま起こっている変化をどのように捉えたらよいか?」と投げかけ、村瀬氏の講演に繋ぎました。 

村瀬氏はまず、「コロナ後の様々な変化に対応し、創造性や付加価値を発揮させイノベーションを起こすためには、組織・チームとして何を意識しどのように動けばいいのか、その観点における『心理的安全性』について話していきたい」と前置きしました。 

次に、現在の経済環境の不透明さに触れ、マッキンゼーのレポートなどから世界市場はさらに激化し不安定となり、主要事業のビジネスモデルを大きく変える必要性に言及。 

そこで、amazon創業者の「実験的挑戦は開発にとって必要悪であり、失敗と開発は表裏一体」といった言葉を紹介し、新しいものを生み出す際には“挑戦”が必要であり、即ち失敗を受け容れることの必要性を話しました。 

この流れで、一般的な改革がうまくいくのは30%以下で、DXによって改革に成功した企業は16%といった、イノベーションには失敗が付き物であることを示す調査結果に触れました。 

イノベーションは出合ったことのない組み合わせで起こる 

ここから、イノベーションに関する考察に入りました。「人間が課題解決を図る際、頭の中ではいろいろな情報を組み合わせています」と村瀬氏。この組み合わせがイノベーションの“種”となることを、トランクにキャスターを“組み合わせ”たことでスーツケースが発明された例を取り上げました。これで人は重い荷物を持って運ばなくても済むようになったのです。 

アイデア探索に求められる「高い頂を探索する」概念を説明した後、新幹線のパンタグラフにフクロウの羽根の端部の形状を取り入れることで、風切り音などの騒音を30%減少させた事例を紹介し、「このように、イノベーションとは出合ったことのない組み合わせを見つける模索の旅」と説明しました。 

次に、そうした発想をどのように行うかについて、「専門性の多様性」と「価値の実現力」という2軸の図で解説。出合ったことのない組み合わせの模索において、専門性の多様性が高度であればあるほど、価値の実現力としての失敗からメガヒットまでの振れ幅が大きいこと、逆に慣れ親しんだ情報の組み合わせでは、結果の予測がつき、成果物としては大成功にも大失敗にもならないゾーンに落ち着くことが説明されました。つまり、「イノベーションとは、我々が出合ったことのない組み合わせでしか起こすことはできず、それは膨大な失敗を伴うものである」と整理しました。 

“連携”による創造性の発揮

そこで、こうしたイノベーションを起こしていくうえでの「チーム」の重要性に話が移りました。複数の視点の衝突が思い込みを崩し新しい思想を獲得する糸口となることや、こうした組み合わせの幅が増えると失敗も増えるが成功度も高まること、個人よりチームのほうが複眼的に組み合わせの弱みを把握し失敗を防ぐことにも繋がることを指摘。チームワークこそが創造性の装置であることを説明し、チームの多様性が新規事業の収益性を高めたとのBCGのレポートにも触れました。 

ここで、「チームとは何か」を考察。「価値のある目標や目的を共有する運命共同体」「目標・目的達成のために、情報共有や作業連携が必須」「メンバーの業務は互いに依存する」「メンバーの役割が決まっている」という定義を説明しました。 

こうしたチームをうまく活用することで創造性を発揮させやすくなるものの、そこでは“連携”による創造性の発揮が困難になると言います。人には仲間と部外者を分ける心理的作用が働き、知らない人、知らない知識を持っている人とはうまく作業ができない習性があるからです。エンジニア部門とマーケティング部門の分断例が示されました。 

また、アイデアの価値は一目ではわかってもらえない“自前主義”の問題もあります。Twitter社で最初にハッシュタグを提案したエンジニアに対して「そんなもの使われない」と言われたケースや、アート作品の価値はよくわからないものという例が話されました。 

また、コーラと無名のドリンクの写真を並べ、どちらを選ぶかを問うとたいていがコーラを選ぶという、「馴染みやすさは心地よさ」という心理に触れ、「新しいものはよくわからず、馴染みのあるものに引っ張られて創造性がうまく働かない」というメカニズムについて解説しました。 

早稲田大学准教授 村瀬 俊朗氏

“多様な意見の表出”が重要 

そこが、チームをつくっても新しいものを生み出せない弊害になるとした上で、“連携”に代わる“多様な意見の表出”を通じた創造性の発揮の必要性について話しました。 

ここでようやく心理的安全性が登場。なぜならば、チームとしてイノベーションを起こすメカニズムから説明したほうが、心理的安全性についての理解が深まるからです。 

多様性のあるチームをつくっていろいろな意見が出されても、反発されたりするとスタックしてしまうものの、心理的安全性が担保されていることにより“多様な意見の表出”が行われ、イノベーションの創出に向かいやすくなるということです。 

ここで心理的安全性について解説。「学術界では20年以上前から発表されていた理論で、Googleのプロジェクトが取り上げたことからビジネス界で一気に広まったものです。Googleは「心理的安全性」が創造性を向上させる重要なメカニズムであることを明らかにしました。 

イノベーションに不可欠な“多様な意見”を言ったとしても、疑問視や冷笑されるといった雰囲気がないことが重要であり、そのことでチーム内に多様な観点が共有されることがイノベーションへの第一歩となるからです。

 

イノベーションのプロセスに必要な「安心感」と、「声を上げる」“技術” 

もう1点重要なこととして、「失敗と改善」について話しました。ユニリーバの粉末状の洗剤の製造工程で、原料の液体を噴出し熱風乾燥させる際のノズル穴が目詰まりしない形状を模索するのに、45世代のモデルと449回の失敗を重ねた例を挙げました。 

次に、心理的安全性を発見したエドモンドソン教授が、様々な失敗が起こる病院でデータを取ったことに触れました。病院での失敗は、患者の命に直結することから責任逃れのために隠ぺいに結び付きやすい。しかし組織で同様の失敗が続けて起こるのは、個人ではなく組織に問題がある。これが隠蔽されると組織として改善する機会が失われる。そこでエドモンドソン教授が病院の心理的安全性と事故の相関関係を調査すると、心理的安全性が高まると事故の報告件数が増え組織が共有することで事故の減少に繋がったことから、心理的安全性の重要性が立証できたわけです。 

「では、心理的安全性が担保されれば声を上げさえすればいいかと言えば、一概にそうとも言えません」と村瀬氏。実際の伝達や、心理的安全性の確保、良いチームワーク実行には“技術”が必要だからです。同じ「声を上げる」のでも、何を誰にどのように伝えるかで伝わり方は全く変わります。 

また、イノベーションを創造するプロセスでは感情のぶつかり合いも起こります。自分主体で考えることで他者を攻撃するようなことがあれば、心理的安全性は破壊されてしまいます。そこで、感情が高ぶった時は冷静に「相手の世界観が違う」と捉えたり、自らの感情が高ぶっていることの理由を振り返る“技術”が必要です。 

そこで重要となるのが、リーダーの責務。メンバーが知りたいチームのとってのゴールやミッションの重要性を伝え、外からはわからないイノベーション創出活動を守ることが求められます。 

チームワークは、システムとして行動⇒分析⇒学習⇒行動、のサイクルを回して行っていくもの、と整理して第1部の講演を終えました。

リーダーの責務 

ここで久保田は視聴者から質問を受け付けた後、村瀬氏に「心理的安全性は最近よく聞く言葉ですが、安易に使われ誤解されているケースもあるのでは?」と質問。村瀬氏は「心理的安全性はあくまでもシステムの一部。『何でも話せる組織をつくろう』ではなく、何のための組織であり、その目的を達成するためにいろいろな議論が行えることが重要であり、そのために心理的安全性が重要であるという理解が必要。心理的安全性を維持するのは簡単ではないので、そこがしっかり共有できていないと中途半端に終わる」と指摘しました。 

ここで、視聴者の「リーダーが手一杯の時にそれができる余地はあるのか?」との意見に対し、村瀬氏は「先のことを考える必要から、リーダーはその時間を捻出する努力が必要。プレイングマネージャーが仕事をメンバーに任せ切ることができず、時間が捻出できないケースが多い。時間をつくることはリーダーの重要な業務と認識すべき」と指摘しました。 

また「心理的安全性のほかに大切なことは?」との視聴者からの質問に、「メンバーの間にゴールや役割分担、優先順位が不明確で納得し切れていない場合が多くあります。ゴールに向かう上で、メンバーの意識が拡散的にならないようそこを明確にすることがリーダーの責務」と村瀬氏は回答しました。 

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2021.4.27 事例紹介

バーチャルワークプレイスにおけるEverything DiSC®による組織文化形成/GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社様

HRDグループが主催するアセスメントフォーラムオンライン2020「ReStart」。今回のテーマは「バーチャルワークプレイスにおけるEverything DiSC®による組織文化形成」です。急激に職場がバーチャル化する今、組織とそこで働く人の関係性も大きく変化しています。GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社の田中様に、新型コロナの前から先行してリモートワークを推進し、イノベーティブな組織カルチャーの醸成に取り組むなかで、Everything DiSCを有効活用している事例を共有していただきました。モデレーターはHRDグループの久保田が務めました。

 

 

☆ゲストスピーカーの紹介☆
 
 
 田中 里子 氏 
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社
HR戦略室室長 兼 CCO室室長
 
ITベンチャー(エンジニア/人材開発/ マネジメント)、インフラ業界(企画開発/人事)を経て、2015年にGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社に入社。現在はHR戦略室および、「CCO(Chief Culture Officer)室」で、CCOやメンバーと共にグループ横断の組織文化を創り、醸成していくことを目指す社内プロジェクトに従事。
 
 
事業からではなく、文化・カルチャーから変えていく

田中:私どもGMOグローバルサイン・ホールディングスは、コトをITで変えていくというミッションのもと、今課題になっている電子印鑑をはじめ、セキュリティ、クラウドインフラなどのサービスやソリューションを提供しています。元々はGMOクラウドという社名でしたが、年(2020年)9月に社名変更をしました。ホールディングスという社名からもお分かりかと思いますが、私どものグループ会社は何社かグローバルにございまして、そこで今、カルチャー変革に関する取り組みを行っています。

私は、普段はいわゆる人事の仕事と、CCO室で室長をしております。CCOというのは、チーフカルチャーオフィサーです。CCOやメンバーと共にカルチャー形成に取り組んでいます。組織文化は、意図せずとも自然にできていくものです。時代、事業、環境の変化に柔軟に対応していけるように、そして、なくてはならない会社として存続させていくために、事業からではなく、文化・カルチャーから変えていこうという取り組みを行っています。

本日はカルチャー変革への道のり、組織マネジメントにEverything DiSCを実際どのように使っているかを、3つのパート、つまり、カルチャー変革の取り組み、具体的な使いどころ、今後の取り組み、に分けてお話をしたいと思います。

まず、カルチャー変革の取り組みについてお話しいたします。

プロジェクトチームを立ち上げたのは2019年。今年で2年目、2021年が最終年となります。実際には、最初から「カルチャーを変えよう」とやっていたわけではありません。人事や事業の課題に取り組むなかで、人事主導で進めるのではなく、会社全体でカルチャー変革という名のもとで進めた方が良いのではという話に至り、どんどん巻き込んで大きくなった結果、準備の2年間も含めて全体で5年間におよぶプロジェクトとなりました。

私たちが目指すのは、2022年までに従来の企業文化から新しい企業文化に変えていこうというものです。文化というのはなかなかつかみにくく、見える化しづらいところがありますが、7Sという、元々はマッキンゼーのフレームワークを使い組織のカルチャーを共通言語化しています。さらに企業文化におけるパートナー、すなわち社員が新しい組織文化のなかでどうあってほしいか、新たなパートナー像を定義しています。

7Sのフレームワークを使った実際の定義を一部ご紹介します。

まず価値観ですが、私たちがいちばん大切にしているミッションやビジョン、バリュー、コトをITで変えていく、ビジョンはone&1st、バリューはワクワク、という言葉を掲げています。組織構造については、ここがDiSCの使いどころなのでキーワードにもなりますが、上下関係を伴う階層がない組織ということを、はっきりとうたっています。マネジメントがなくなるとは決して思っていませんが、マネジメントだけをする管理職はなくしていく構造です。ピープルマネジメントは、できるだけセルフマネジメントや仕組みに置き換えることを考えています。社風・スタイルは、価値観や理念を共有するパートナーの多様性を相互に受け入れていく、このようなカルチャーの全体像となっています。

出典:GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社

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2021.3.15 EVENT

グローバル人事の現在(いま)と未来~海外人事調査に基づき、新たな潮流を読む~

ReThink Day4 イベントレポート
HRDグループが毎年開催しておりますAssessment Forum Tokyo」、今回はオンラインに形を変え、コロナ禍に向き合う新しい未来のための価値あるコンテンツを提供する場として開催されました。 経営戦略やDX、グローバル人事など、より広い視点から組織・人材マネジメントについて問い直し、再出発するための一連のデジタルイベントとして多く方のご参加を賜りました。

ReThink第4回目は、「グローバル人事の現在と未来、海外人事調査に基づいた新たな潮流を読む」というテーマで、beyond globalグループの代表である森田英一様をシンガポールよりゲストでお招きしております。
ナビゲーターは、HRDグループ・プロファイルズ株式会社の水谷壽芳が務めます。

☆ゲストスピーカーのご紹介☆
オンライン化することで選択肢の幅が広がった

水谷この度は、Day4にご参加いただきましてありがとうございます。

私は、HRDグループ・プロファイルズ株式会社の水谷と申します。本日は、海外人事調査に基づいた新たな潮流を読むということで、専門家の森田様をお招きして対談形式で進めて参ります。

今回はグローバル人事がテーマです。パンデミックの影響で、様々な変化が地球規模で起きています。この変化に関して、海外人事のみなさまがどう捉えていらっしゃるのかについてプロファイルズ社で事前調査を行っております。この調査に基づいて論点がいくつか浮かび上がっています。森田様にその捉えどころについてのご見解をいただき、そして今後の潮流を読んでいただくというのがこの度の企画の流れになっています。

森田さんは、我々のビジネスパートナーとして取り組みをご一緒させていただいておりますが、現在はシンガポールに拠点を置かれており、日系企業を中心としたグローバル化やグローバル人材の育成、人事制度の変革などを進めていらっしゃいます。シンガポールから見てどのようなことが起きているのかをお話いただきたいと思います。

森田beyond globalの森田と申します。最初に自己紹介をさせていただきます。私は生まれも育ちも大阪で、大学院卒業後、人事コンサルティングの世界に入りました。20年前に、自律型人材育成にフォーカスを当てたシェイクという会社を立ち上げて10期まで社長を務めましたが、その後、2代目の社長にバトンタッチしました。私は現在、beyond globalという企業グループを作り、シンガポール、日本、タイの3拠点で日本企業のグローバル化支援を行っています。その他東南アジア全域やヨーロッパ、アメリカなどのエリアのサポートをしておりますが、中でも日本と東南アジアがプロジェクトとしては多いですね。

我々は、人材育成という側面と人事制度、評価、賃金などの仕組みの部分の両方をサポートしており、幅広い人事評価制度や駐在員の育成はもちろん、ナショナルスタッフの育成、サクセッションプランというローカル化を進めていく後継者の育成も行っています。

コロナ感染が広がる現在、海外の現地法人で多いと感じているのは、人事制度の変革です。ローカル化を進めていく流れですが、これには駐在員がなかなか現地に着任できなかったり、ビザの発行が難しくなってきた状況があります。例えばシンガポールでは、ビザの発行基準の給与水準がどんどん上がっています。過去に無いほどの上昇率で、今は駐在員がビザの更新ができずに止むを得ず日本に戻ったり、新しい駐在員を呼べなくなっています。これは、シンガポール人の給与がカットされ所得が少なくなっているので、シンガポール人の雇用を守りたいという政府の意向もあります。入国困難な中で、ローカルでも回せる人事制度、きちんと仕組み化されたものや成果が見えるものをどう構築していくのか、今までは海外現地法人も含めて仕組みはあったとしても、運用でつまずいているというケースも多かったので、その運用や制度の見直しが非常に増えています。

また、コロナ以前は、リージョンの研修なども東南アジア各国からシンガポールに集めて行うことが多くありましたが、最近ではこれをオンライン化しています。

さらには、これまでは日本の拠点から海外に派遣して日本人向けに海外派遣研修も行ってきました。例えば、ヨーロッパに派遣するビジネスや、経営者候補の方々を新興国に送り育成するようなことです。コロナになってからは、これをオンライン化し先月も大規模で行いました。オンラインで行う利点は、国境を超えて何度でも集まれる、そして費用も安いということです。このようなオンラインでのグローバル研修は、かなり引き合いが増えております。派遣は費用がかかるので、なかなか大人数を行かせることができませんでしたが、オンラインにすることで選択肢の幅が広がり、多くの方がオンラインでグローバルな環境にどっぷりと浸かることができるということが、最近感じている変化です。

水谷ありがとうございます。まさに新しい時代に先駆けて、森田さんは様々な取り組みを行っているという印象を持っております。本日もシンガポールと繋いでいますが、まさにオンライン化が進む中で森田さんをお招きできて、うれしくと思っております。昨年は我々がシンガポールに伺ってセミナーを行いましたが、今回はオンラインで挑戦していこうと思っています。

本日の進め方ですが、事前に我々で海外人事のこれからについて調査を行っています。その調査に基づいていくつか論点が出てきましたので、森田さんが直近で感じていることを惜しみなく皆さんに提供していただきたいと思っております。

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2021.2.3 EVENT

リアルからバーチャルへ、変わる『職場』の再定義

~データから見える真実と向き合い、新たな組織マネジメント手法を見出す~

ReThink Day2 イベントレポート

HRDグループが毎年開催しております「Assessment Forum Tokyo」、今回はオンラインに形を変え、コロナ禍に向き合う新しい未来のための価値あるコンテンツを提供する場として開催されました。 経営戦略やDX、グローバル人事など、より広い視点から組織・人材マネジメントについて問い直し、再出発するための一連のデジタルイベントとして多く方のご参加を賜りました。

ReThink第2回目は、Virtual Workplace Lab.の代表であり、株式会社エスノグラファーの代表でもある神谷俊様をお招きしております。「リアルからバーチャルへ変わる職場の再定義」をテーマにお話をいただきます。 HRDグループの久保田智行がモデレーターを務める、対談形式で進めてまいります。

 
☆ゲストスピーカーのご紹介☆

神谷 俊氏
Virtual Workplace Lab. 代表
株式会社エスノグラファー 代表取締役
法政大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。エスノグラフィーという調査方法を専門技能として、企業や地域などの分野でフィールドワークを実践。2020年5月、ポストコロナ時代の「職場」の在り方や働き方を探求することを目的に研究プロジェクト Virtual Workplace Labを設立。従来の職場環境が、バーチャルな環境にシフトすることによって生まれる効果や不整合について研究知見を提供。丹念な文献リサーチと企業調査を繰り返し、実践的なノウハウの提供を推進している。

神谷氏へのご質問は、下記までお寄せください。
https://www.virtual-workplace-lab.com/contact

バーチャルシフトが進む中で“起こっていること”

久保田神谷さんも本日、約半年ぶりに東京に出られたということですが、多くの方々が新型コロナの感染拡大により、働き方が大きく変化したと実感されていると思います。
バーチャルシフトは日本だけではなく、人類全体の実験だと思います。新型コロナが治まった時にどうするのかという点については、現時点において、組織によって考え方が分かれていると思います。バーチャルシフトというのはメリットもデメリットもありますよね。本日は、その点をなるべく言語化して、明確にしていきたいと考えています。組織社会学的なアプローチで知見が豊富な神谷さんをお招きできて、本日はとても嬉しいです。

神谷さんはこの春にVirtual Workplace Lab.を立ち上げて、バーチャル時代の組織について研究されています。本日はそのデータもたくさんご用意いただいております。まずは、バーチャルシフトの特徴や定義づけをお願いします。

「これまでの職場の特殊性」:出典:Virtual Workplace Lab. 

神谷株式会社エスノグラファーという、リサーチとコンサルティングビジネスの会社を経営しています。このエスノグラファーという会社は、私が研究者のときに、文化人類学や社会学のエスノグラフィーという調査方法を専攻していたので、その調査方法を用いながら地域や企業の活動、商品開発をしていこうということで立ち上げた会社です。定量的なアンケート調査も行いますが、基本的には現場やフィールドに行き一社員としてお仕事をさせていただいたり、ひとりの研修受講者としてその研修に参加しながら、他の社員や受講者の動きを観察するという質的な調査を中心にビジネスを展開しています。

しかしコロナウィルスの感染拡大により、全面的に皆さんがリモートワークに移行しましたよね。その中で私も現場に行くわけにいかないので、オンライン環境でのエスノグラフィーであるバーチャル・エスノグラフィーを始めました。すると、上半身だけスーツを着て会議に参加をしたり、後ろで子供が騒いでいると音声を消したり、あるいは背景を全てブラックアウトにして家庭が見えないようにしたりといったような、一見すると矛盾しているような不都合な状態というものがたくさん見受けられました。これは何とかした方がいいと考え、4月にVirtual Workplace Lab.というプロジェクトを立ち上げた次第です。

久保田緊急事態宣言で、皆さんが家に留まっている最中でしたね。

神谷そうですね。3月頃から全面的にリモートに移行すると思いましたし、それまで、海外に比べて日本はリモートの導入率が圧倒的に低かったのです。企業では全体の15%ほどしか導入していませんでしたし、導入している企業の中でも数%の社員しか実際にリモートワークを利用したことがないという状態でした。社会的に働く上での制約とでも言いますか、例えばお子さんがいて、なかなか働く時間が十分に取れないといった方に向けての制度としてのリモートワークという位置づけになっていました。なので、これは適用するのが難しいだろうと思い、適用を支援するために立ち上げたプロジェクトがVirtual Workplace Lab.です。

このプロジェクトの基本的な概念はバーチャル・ワークプレイスです。海外では当たり前のように研究されている領域なので、オンライン上の職場での研究文献を読み込んでいます。海外では、90年代以降からバーチャルチームの研究は進んできているので、その辺りの知見をインプットしつつ、日本のリモート環境におけるHRM(人的資源管理)の役割、つまり、人事がオフィスではない環境下でどうやって社員を支援できるのか、または能力開発ができるのかといったところを定義していきます。さらにリモートワークに移行する企業の多くは問題を抱えているので、その部分の解決コンサルティングも行っています。

では、リモートワークの推進背景、バーチャルシフトの本質部分についてお話したいと思います。バーチャルシフトとは何かというと、「リアルからバーチャルに移行すること」ということが最もシンプルな説明ですね。オフィス環境からどこでも働けるような環境にシフトしていくことです。このバーチャルシフトを今後も続けていくのか、とよく聞かれますが、私は今後も継続的に進むと思っています。理由は、日本政府がそれを支援しているからです。日本の労働人口が1990年代からどんどん減少していく中で、生産性や一億総活躍と皆さん言われ続けていますよね。その国が抱えている大きな人的資源の問題とリモートワークというのは、とても相性がいいです。

今回の新型コロナウィルスによって皆さん強制的にリモート環境に追いやられたわけですが、そこで得た学習機会は大切にしなければなりませんし、それを活用しなければ、高齢化社会の中での日本のビジネスというのは持続的ではないと思います。なのでバーチャルシフトはまだ続くと思います。
また世界的な潮流として、マッキンゼーが指摘しているウォー・フォー・タレント(人材獲得競争)がスタートしています。優秀な人材をいかに獲得していくかということで、バーチャルシフトが重要になってきています。例えばとても優秀なエンジニアが沖縄でダイビングをしながら働きたいと言ったときに、企業はその人材をとれるかが重要です。リモートワークを採用していれば難なく獲得することができます。しかしオフィスに来てもらわなければならないという前提になると、採用は難しくなります。

久保田それは国をまたいだときにも言えますね。

神谷そうですね。GoogleやFacebookなどは従来からバーチャルチームの運用をしていますが、彼らがバーチャルチームを取り入れている理由は、市場を全世界で見ているので、世界中から優秀な人材を調達してプロジェクトチームを作るためです。なので中国、日本、アメリカ、イギリスといったところで点在している社員が、チームを組んでプロジェクトを進めるといったことも可能です。社会的な背景やビジネス効率の両方を踏まえても、リモートワークはとても相性がいいですし、それを戦略的に進めていく時代が来ていると思います。

実際にアメリカのガートナーは、「2021年までに中堅と大手企業の4分の1がバーチャルな環境へのシフトを成功させる」と言っています。全員がオフィスに集まって合意形成の会議を行い、それで意思決定をしていくというスタイルではなく、それぞれのチームが現場で判断して意思決定を行うという、セルフマネジメントを中心とした考え方で分散型の意思決定が進んでいくと考えられます。そしてリモート環境が整備され、オフィスの意味が変わってきます。仕事をする場所がバーチャルになるのであれば、オフィスは新たな意味を持ってくるので、その辺りの再設計が進められるということが、新型コロナの前である2019年から言われています。

過去の研究を見ていくと、リモートワークの導入メリットについて、このように言われています。まずは時間的なコスト削減です。もちろん移動時間などが削減されるので、時間的なコストダウンは有益になります。また距離のコストダウンです。出張やお客さん先の訪問などが無くなるので、その辺りのコストも削減されます。そして自律性やセルフマネジメントの向上です。現場が自主的に判断するという能力や問題解決の力が身に付きます。

それからタレントマネジメントの効率化もあります。ここでいうタレントはとても優秀な人材のことを指しますが、先ほど沖縄でダイビングをしながら仕事をしたいという人の例をあげましたが、そのような優秀な人材を時間や場所の制約に囚われずに、プロジェクトにアサインしたり採用することができます。もちろん採用力が上がりますし、知識共有が促進されます。オフィスでは皆さん黙々と仕事をしているので、なかなか情報の共有は進みませんでしたが、バーチャルではチャット上でどんどん情報の共有がされます。

「リモートワーク導入のメリット」:出典:Virtual Workplace Lab. 

久保田リアルな職場の方が、会話の中で情報共有ができるという意見もありますよね。両面があるということでしょうか。

神谷知識の質にもよると思いますが、メディア上に掲載されている情報や論文の情報など、バーチャルに置かれている知識の共有というのは、オンラインの方が共有されやすいです。しかし現場で培ったノウハウや営業経験から得た知見などは、おそらくリアルの方が共有されやすいと思います。総論的に見ると、情報共有が促されやすいという研究結果があります。
そして創造性の向上です。これは日本企業においては微妙なところがありますが、オンラインでは意見を出しやすいです。自分の意見をチャットなどで書き込みやすいので、様々な意見の有益な衝突が起こります。そのコラボレーションの中から創造性が生まれやすいと言われています。

そして皆さん気になるところだと思いますが、ネガティブなものもたくさんあります。先ほど知識の共有のところで、知見やノウハウが共有されにくいという話がありましたが、やはり意図しない情報は入りにくいです。自分が探したり検索することで得られる情報は周囲と共有しやすいですし、自分の仕事に関する情報というのは入ってきやすいのですが、例えばオフィスを歩いていると「最近何をやっているの?」と話しかけられるところから始まる、偶発的な情報共有があります。それが低下することによって、学習レベルも低下すると言われています。

そして家で仕事をしているので、特に若手の方でワンルームに住んでいる方が非常に感じやすいのですが、孤独感を感じたり、あるいは子育てをしている方が仕事中に子供の面倒を見たりすると、罪悪感を感じるケースも報告されています。そうして心身が弱まってしまうので、健康レベルが低下してしまいます。また、エンゲージメントが低くなりやすいです。分散して働いているので組織を感じる機会が少なくなり、組織に対するエンゲージメントが低下しやすくなります。

「リモートワーク導入のリスク」:出典:Virtual Workplace Lab. 

久保田新入社員の中には、入社後ほとんどオフィスに来ていなくて、顔を合わせていないという人も多いと思いますが、それで新入社員のエンゲージメントに影響が出ているという話はよく耳にします。

神谷新入社員は従来であれば、現場での相互作用、例えば先輩社員や上司、同期とのコミュニケーションの中で組織への適応をしていきます。しかしそのコミュニケーションがある程度制限されてしまい、働いている実感が持てません。また、企業が新入社員への仕事をバーチャルで生み出すことが出来ておらず、雑用をお願いしてしまうケースが多いです。それでやりがいを感じられず、当然周りから褒められるケースも少なくなるので、承認されずに孤立化するというケースも増えています。

そんな中で会社を辞めたいという気持ちも出てきますし、上司の管理レベルも低下します。部下が今、どんなことでトラブルを抱えているのか、どんなことで悩んでいるのかがとても分かりにくいです。オフィスにいれば、朝出社してきたときの顔を見てなんとなく察することが出来ますし、「ざわざわしている」といったようなノイズから何かを感じることも出来ます。しかしオンラインではそれが出来なくなるというデメリットがあります。結果的に人事評価の質の低下となり、適切に評価が出来なくなったり、反対に部下は上司にアピールする機会が減るので、昇進昇格が停滞します。

また、ワーク・ファミリー・コンフリクトという概念がありますが、仕事と家庭がコンフリクトします。これは大きな問題だと思いますが、やはり家庭は家庭でとても大きな仕事量があります。しかし、それとは別に仕事もあるので、それぞれが同じ空間で行われるとせめぎ合いが起こります。例えば仕事でイレギュラーが発生して緊急対応をしなければならなくても、それが子供を迎えに行く時間と重なったとすると葛藤が起こります。どちらを取っても罪悪感は残ります。このようなコンフリクトは様々な状況で発生します。

久保田今までは場が違うので、そこで切り離されて責任も明確になっていたけれども、同じ場にいるとリアルになりますね。

神谷やはりバーチャルの特徴は、時間と空間が融合してくるということです。仕事の空間はオフィスで、仕事の時間は定時などと定まっていたものが、家庭の空間と時間軸がミックスしてきます。その矛盾がありますね。本来であれば、家庭というのは仕事を忘れて家事や育児に勤しむ場なのに、そこで仕事を行うことによってコンフリクトが起こります。

リモートワークという働き方にはメリットとデメリットの双方がありますが、これからの日本を考えると、やはり労働人口が減少していく中で、どのように生存戦略を作っていくかが求められます。その点において、リモートワークというのはとても重要なキーになってきます。一方でデメリットもたくさんあるので、バーチャルシフトをいかに円滑に進めていくかということが、非常に重要なポイントになってきます。

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