HRD株式会社 - Human Resource Development

2021.3.12 EVENT

ラーニングのオンライン化のその先、3つの方向性 ~変化が必要なこと(STOP)/新しく始めること(START)/変わらないこと(KEEP)~

左から久保田、辻川氏、小仁氏

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【本編終了後、質問への回答】

久保田ここからはいただいた質問に答えていきたいと思います。

「受講者側が自分の改善点を見つけ、自分に必要な個別化コンテンツを選ぶ際に、見誤る可能性もあるかと思います。AI化が厳しい環境下だと属人的に選択してもらうことが必要ですが、受講者が適切に選べるようになるには何が必要でしょうか」とのことです。コンテンツをたくさん作り、それを選ぶ際に、AIなどで自動ではできない場合に、どうすれば適切に選べるようになるのかというご質問です。

辻川かなり難しい部分ですが、1つは、そのコンテンツで何が学べるかということを適切に説明する、タグ付けをするということが挙げられます。

我々もマイクロラーニングで「スナックコース」という90秒の短いコンテンツを作っていますが、「その1、その2、その3」という作りは禁止しています。その1を見なければその2が見られないという形にしてしまうと、1つ1つがスナックではなくなり独立して利用できなくなるので、なるべく1話完結の形で表現するように意識しています。つまり、タグ付けと、文脈に依存せずに完結したコンテンツ化を意識することが1つの解決方法だと思います。

小仁この質問に「見誤る」とありますが、まず自分自身が課題を認識していることが重要だということと、そのコンテンツが自分に合っているかということがそのコンテンツの情報を見て分かる、ということが必須です。

加えて1つあるのが、学習を1人でやるというところから枠を広げることが重要だと思います。やはりシェアです。自分が良いと思っているものをシェアしたり、上司がその人に合っていると思うものをシェアしたりといったように、自分自身が分かっているだけではなく、その人に合っているものというのは周りで関わっている人も分かっていることですし、そちらの方がピンポイントだと思います。ですから、これからのラーニング・プラットフォームの中で、シェアの機能があるかどうかは生命線です。それが個別化の必須の観点だと思います。

久保田次の質問は私が答えますね。

DiSCの新コンテンツ化は考えていませんか。例えば講師はそれぞれはめ込み型にしてはいかがでしょう。」という質問です。

実はこれに関しては、開発元であるアメリカでそれに近いものを開発して、マーケットには出ています。Catalyst (カタリスト)といいます。日本語化するのは大分先になるかもしれませんが、開発元はDiSCを学べるプラットフォームを作るという方向になっているので、乞うご期待です。

次の質問です。

「企業内で研修を実施していたときも、今は独立して個人で研修を実施しているときも、事前学習でしっかりと見ておいてくださいと伝えて、それを基に対面研修をしても、上手くいった試しがありません。目的を果たそうとすると、結局対面で再度読んでいただくことになります。何か良い方法はありますか。」とのことです。事前学習で見てくれないことへの工夫はありますか

小仁たくさんあるので3つほどご紹介します。

まず1つ目は、そもそも事前課題をやる目的や、やりたいという動機付けがなされていないので、それはやらないよね、という話です。オンライン化になって特にですが、とりあえず事前課題にして投げるだけ、というのはあまり上手くいかないと思います。30分でいいので接続確認とともに事前説明会というものを設けて、まずはオンラインへのログインの壁があるので、そこでみんなでログインをして、どこに何があってなぜそれをするのか、ということをすり合わせるだけで大分実施率は上がります。

2つ目は様々なデータの研究がありますが、「やってきてくださいね」と伝えて出す課題の当日の完了率と、「実際にやって、テストで○○点を取るところまでが課題です」という伝え方では、取り組む研修前の入力時間の波形が変わります。「やっておいてね」と伝えると、前日に徹夜するみたいな人も出てきますが、そうではなく「ある程度ここまでは終わっていないといけません」となると、なだらかになります。こういうことを設計するためには、先ほどの事前説明会はとても重要になります。

3つ目は、誰かがやっていない場合となると、講師としては苦しい状況ですよね。誰か1人がやっていないことが原因でそれに引っ張られてしまいます。こちらの責任ではないのに…という話はたくさんあります。そういうときには10分や15分、時間を全て預けてしまい、やってきた人も必ずいるので、お互いに学び合いの時間で勝手に教え合ってもらいます。なぜかというと、やってきた人はやってこなかった人に合わせると報われません。しかし教えてくださいとなると、その人にとっては訓練に変わります。そうすることで、その人からすると飽きないですし、事前にやってきたことが損にならないので、講師としては完全にその場は手放します。

久保田それはアダプティブラーニングの応用ですね。知らない人と知っている人がお互いに学べますね。よくあることなので、気持ちは分かります。

次は質問というよりはコメントに近いのですが、「最高の教材は経験の考えが現場へのリスペクトになる。そこからスタートする研修には価値がある。現場が成果をあげてなんぼである。コロナでは一方的なマネジメントは通用しない。」これはおっしゃる通りですね。「70・20・10の法則」でもその通りですよね。

小仁仕事の成果に結びつく経験ということが70で、20が対話、10が研修というものですね。

久保田下の70や20をおろそかにして、10の研修だけで解決しようとしても上手くいかないですよね。私は、コンサルタントなど外部から関わる人もそれを安請け合いしてはいけないと思います。70と20のところをあまりデザインしていないというリクエストに対して、「とにかく良い研修を」「良い先生を」ということで解決しようとすると、先方に対しても良い成果が得られません。それぞれの立場でデザインすることが必要ですし、それが現場へのリスペクトや経験が一番大事であるという原則を忘れないということが大事だと思います。

次の質問です。

「集合研修でさえ参加者に集中してもらうことに苦労します。オンライン研修で参加者に集中してもらえるコツがあれば、教えてもらえると助かります。」とのことです。ライブ研修で集中してもらう場合ということですが、講師をやっていらっしゃる小仁さんいかがでしょうか。

小仁オンライン研修は反応が見えないと辛いですよね。

久保田カメラをoffにされると辛いですね。

小仁でも私はカメラのoffは好きですね。カメラをonにしないと出来ない、反応を見ないと出来ないというのは講師のエゴでして、本気で内省したいときに誰かに見られていて、じっくり出来る人というのはいないと思います。私が研修をするときは、基本的にカメラをonするところは限定していて、それ以外は安心、安全な場で集中できる環境にしています。成人学習なので大人扱いをするところからスタートしますし、自分がされたら嫌なことをするというのは意味が分からないので、もちろん研修の内容によりますが、私はそうしています。

オンラインで参加型にするというところで、講師をトレーニングされているボブ・パイクさんが提唱しているのは「90・20・8の法則」ですね。90分単位で行って、20分の中で講義とワークという単元でやり、8分間に1回は何かしらのやり取りをしなければならないというものです。これがオンラインになると半分になり、4分間に1回は何かをしなければ集中力が途切れてしまいます。何かしら、というのは何でもいいです。

つまり設計時にとても大切だと思うのは、受講生がその時間帯になにをしているのかという、私たち側のタイムラインではなく受講生側のto doのタイムラインを作ります。チャットを投稿するといったことや、「次に質問を投げてください」と前出ししておいて、それを受講生が考える時間としてタイムラインを作っておきます。考えている時間など能動的にやっていることを全て書きます。それを受講者同士のプレッシャーを使って、例えば参加者が20人いたとして、UMUの入力で「20人やらなければ次に進めません」となると、自分がボトルネックになって罪悪感に繋がりますよね。そういうものを上手く使いながら全員を参加させていくということは、反対に集合研修よりもやりやすいと私は感じています。その設計書を書くことが重要ですね。

しかしこれをすると受講生は集合研修よりも相当疲れるので、オンライン研修は長くやってはいけません。受講生が4分間に1回何かをやらなければならないとなると、普通に考えても疲弊しますよね。

久保田そうですよね。集合研修は意外とサボっていますしね。

小仁そうなのです。集合研修はかなりの余白があります。つまりオンライン研修をするときのポイントは、休憩時間を長くとることです。時には、休憩時間も受講者に決めてもらいます。これが参加者主体の研修設計になります。休憩時間をこちら側で決めるというのは、またこちら側の理屈ですし、自分たちで休憩時間を決めたら必ず戻ってきます。その辺りの工夫というのは、オンラインだからこそできることが増えたと感じています。

久保田できることが結構ありそうですね。

(ここで事務局としてオブザーブしていたHRDスタッフからも質問が)

HRDスタッフ先ほどの話の中で時間は長くない方がいいとありましたが、小仁さんは最長でどれくらいだと思いますか

小仁オンライン研修の適切な時間ですか。テーマにもよると思いますが、3時間~3時間半ですね。それが90×2というところと、休憩時間を入れてというところと、単元で分けるというところです。これで4つほどのテーマを腹落ちするまでやるということが今一番多いパターンですが、まだ模索中です。

HRDスタッフありがとうございました。

久保田そうですよね、まだ模索中ですよね。私たちも4月に初めて認定セミナーをオンラインでやるとなったときは、「オンラインだから時間は短くする」ということをいろいろなところから聞き、時間を短くしました。すると明らかに時間が足りなくて、何が削られてしまうかというと、それこそコンテンツが多いので、インタラクティブに意見を出すという時間が確保できませんでした。これは本末転倒で、参加者の疲労度や参画度を見ながら少しずつ時間を増やしていき、今は当初に比べて2日間でトータル3時間増やしました。その増やした時間はほぼ対話の時間です。

やりがちなのは、時間が足りないからと言って対話の時間を減らしてしまうことですね。目的によりますが、これは一番よくないかなと思います。私たちがよくやる組織づくりやコミュニケーションのテーマだとすると、対話を減らすというのは選択肢としては良くない策だと思いました。

小仁今のお話に少し加えますが、私は、研修は1日でもいいと思っています。ブレンディッド・ラーニングは、もともとは学校で使われていた用語ですが、そもそも同じ時間帯に全員が同じことをやらなければならないという発想ではありません。ですから特にアセスメント系の研修をやるときは、「いろいろな動画を用意していますので、みなさんのペースで考えて、この課題を今から時間内に自由にやって戻ってきてください」と伝えています。その時間を拘束しなければならない理由はないので、その2時間や3時間のあいだでグループの人たちに決めてもらい、ワークに取り組むということでもいいわけです。これはまだ模索中ですが、結構うまくいきますね。

久保田集合研修では、1日集めてコントロールしているという感覚だったので、それを手放す怖さがありますし、それで本当にうまくいくのかという疑問もあります。しかしそういうところから変えていかないと、学びが効果的に促進されないのかもしれませんね。

小仁「お腹を空かせる」と私はよく言いますが、相手が足りないと思うコンテンツを用意しておけば、あとは勝手にやってくれます。集合研修などの同じ時間を共有する場合は、「何が今の自分に足りていなくて、学ばなければならないことなのか」とお腹を空かせることに集中します。また録画した動画がUMU上に置いてあるので、好きなものを見てもらいます。そして見たものをお互いに共有します。自分が見られなかったものでも、人とそれを共有することで学ぶことができます。これはうまくいきました。やはりコンテンツが鍵ですね。それがあれば講師としてのファシリテーションの選択肢が増えます

久保田では次の質問です。

ソフトやシステムの使い方を、お客様に学んでいただくプログラムを作った事例はありますか。こうしたものはどれくらいの期間がかかるのでしょうか。内容次第だと思うので、例えばの話でいただけると幸いです。」とのことです。では辻川さんお願いします。

辻川:最近では弊社でセールスフォースなどのソフトウェアの使い方を作ったことがあります。スクリーンキャストで動画も録画して、声をあてるというものです。実はこれが一番作りやすいですし、見た目も追体験しやすいようなコンテンツに仕上げることが出来るので、動画コンテンツ化と非常に相性がいい分野だと思います。他の個人が学習するコンテンツを見ても、プログラミングやエクセルが人気だと思いますが、動画コンテンツ化するのにピッタリのテーマなので、ソフトやシステムの動画コンテンツ化はやるべきだと思いますし、簡単に作れます

小仁私はほとんどZoomで、例えば中途入社の方向けに何か入社時の学習事項を伝えるときは、画面の操作を動画に撮って流すだけです。目次を作ればいいだけですよね。注意点なども話すだけで入れられてしまうので、とてもやりやすかったと思います。つまりわざわざこのために頑張って作るというよりは、質問を受ける度に回すということが一番やっていたことだと思います。

久保田期間がどれくらいかという質問ですが、その期間を割り出すというよりも、説明が繰り返しになりそうだし記録しておいた方がいいとなったら録画するという感じですね。

小仁もちろんきちんと録画した方がいいものもありますが…。

久保田どういう場面で使うかにもよりますが、社内で共有するくらいであれば、その場で録画をした方が早いですね。

小仁私の場合は社内なので、販売するものになると変わってきますね。

辻川そうですね。

久保田それにしてもあまり期間のかかるものではないということですね。このような動画はYouTubeにも挙げられていたりしますよね。

辻川ありますね。

久保田そういうものも参考にしながら、ということですね。

■終了後コメント

久保田これから皆さんがどのようなことを意識すればいいのか、今年もまだ状況の変化があると思いますが、状況に右往左往せずにオンラインでのラーニングを自分たちでデザインできるようになるために、最後にお二方からコメントをいただきたいと思います。

小仁今日はありがとうございました。今年1年で感じることは、新型コロナの感染拡大は決して歓迎されるものではありませんし、それで傷ついている方もいらっしゃるので決して喜ばしいことではありませんが、今回はこれがきっかけで間違いなく学習の在り方が変わる大きなうねりが出てきたということです。

中でも大きな意味があったのは、テクノロジーがこれだけ身近に感じられるようになったことで、私たちの選択肢が増えたことです。選択肢が増えるとできることも変わりますし、できることが増えると描ける夢も変わります。選択肢が増えていることをいかに楽しみながら、そして活かしながら、というマインドを持つことが重要だと思います。正解がないので、そのマインドさえ持っていれば、私たちは新しい事例を生み出していけると思います。ぜひ未来を一緒に作っていけるといいなという思いで、本日は参加させていただきました。ありがとうございました。

辻川今日はありがとうございました。小仁さんのお話にもありましたように、コロナの影響により背中を押されるような形で、一気にオンライン化を進めなければならない状況になったと感じています。誰も答えを持っていない中、コンテンツ化する部分と対面で残す部分を考えながら良いものを作りたいと思いますし、答えの無さを楽しみながら、学びに関わる方たちと一緒に取り組んでいきたいと思います。本日はありがとうございました。

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