HRD株式会社 - Human Resource Development

2021.3.12 EVENT

ラーニングのオンライン化のその先、3つの方向性 ~変化が必要なこと(STOP)/新しく始めること(START)/変わらないこと(KEEP)~

左から久保田、辻川氏、小仁氏

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求められるのは「マイクロ・プラクティス」

久保田ありがとうございました。まさにここ半年で起こっていたことで、試行錯誤しながら少しずつ正解にたどり着いているようなところを、言葉にしていただいたと思います。
先ほど動画の話がありましたが、教育用のコンテンツはどのように作ればいいのか。続いて、シェアウィズの辻川様からお話をいただきます。

辻川改めまして株式会社シェアウィズの辻川と申します。2012年から社会人向けの学習サービスを展開しています。弊社のミッション自体が、学習コンテンツの流通を最適化するということを掲げています。学ぶべき人に学ぶべきコンテンツ、今は動画が多いですが、そういったものを適切に届けていくことをミッションに掲げて展開しています。

今回のメインテーマである、オンライン学習に適したコンテンツ制作ですが、いわゆるオンライン学習の動画のフォーマットはいくつかあると思います。一番多いのは「スクリーンキャスト」と呼ばれるフォーマットです。どういうことかというと、画面を操作している様子を録画して、それに対して声をあてるものです。ソフトウェアの説明や、プログラミングの講座などで頻繁に用いられるフォーマットですね。また、セミナーで使用するスライド資料に音声をあてて、スライド上でもいくつかアニメーションを使うものもあります。3つ目の「講師正立」というのは、スピーカーの方が1名立ってお話をされたり、ときどきスライド資料をワイプで抜いて先生の顔を出したり、研修やセミナーのコンテンツを動画ものにする際は、こういったものが一般的だと思います。そしてその他に、ドラマ仕立てにしたり、アニメーションにしたりというパターンもあります。制作の難易度でいえば、スクリーンキャストが一番簡単で、その次にスライド資料に声をあてるもの、続いて講師正立、最後にドラマ仕立てという順番でしょうか。

コンテンツ化を進めるうえで何が重要かについてお話をします。まず、固定のスライドに声をあてるだけのコンテンツはつまらないですよね。なぜつまらないのかを説明するために、カーンアカデミーの動画を紹介しています。黒い画面上にペンで書いて足し算などを教えるものですが、先生はときどき間違ったりします。しかしその間違いがあるからこそ、ライブ感が出ます。例えば数学を頭の中で考えているような追体験ができるので、コンテンツが実際に自分の頭に染み込んでいきます。要するに、この追体験が重要です。それをどのように設計できるか、映像上で表現できるかが重要です。

先生が立って話すという動画で、すぐにできることは、まさに目の前で話されているような目線を意識することがポイントです。テレビなどでも目線が横にずれて「この人カンペを読んでいるな」と感じた瞬間に、つまらないコンテンツだと感じます。やはり受講者は、先生に教えてもらったり、体験したりすることを求めていて、誰かが文字を読んでいる様子を観察したいわけではありません。目線の改善はすぐにできることでもあり、コンテンツ化するうえでもっとも重要なポイントだと思います。

YouTubeが流行っていますが、YouTubeと学習コンテンツの違いで言いますと、視聴者の目的意識が明確化されていることにより、映像の作りも変える必要があります。YouTubeがまさにそうですが、「なにか面白いものはないかな」と見る場合には、装飾的な引きのある映像やタイトルのコンテンツが良いでしょう。一方で「これを勉強するぞ」と目的が明確な場合は、反対にその装飾的な要素が邪魔になります。

「目的に合ったコンテンツ作り」:出典:㈱シェアウィズ

例えば、弊社で一般の方向けに展開している中国語の表現学習動画があるのですが、文字が出て中国語の読みがあり、それを繰り返し練習するというフォーマットで、非常にシンプルです。装飾的な要素は全くありません。これが利用者には好評で、YouTube上の同様のコンテンツは、邪魔な要素が多いという声さえあります。このように「中国語の勉強をする」という目的が明確な場合は、コンテンツもシンプルな方が良いですね。

利用シーンや目的に応じた設計ということで、コンテンツの冒頭部分はかなり引きを意識した装飾的な要素があった方がいいと思いますが、進むにつれて装飾が目障りになってくるので、簡素化していく設計がベストです。

社内や研修会社で動画コンテンツを大量生産するコツは、どのコンテンツも同じですが、ひな形があれば可能です。量があればいいというわけではありませんが、フォーマットがあれば撮影場所や機材のセッティングを何度も組み直す手間は省けます。また動画編集ソフト上でも、ある程度固定したフォーマットにして、撮った動画をはめ込んでいくという形であれば量産も容易です。目的をそれぞれ明確化し、それに準じたフォーマットを準備すれば、コンテンツの大量生産も可能です。

久保田ありがとうございました。大量生産という話がありましたが、オンライン学習のコンテンツは、ある程度の量は必要になりますか。

小仁そうですね。おそらくこの先、企業のデジタル化が最終的に向かっていくのが「アダプティブ(一人ひとりへの最適化)」と「パーソナライズ(個別化)」だと思います。そうなってくると、受講者のニーズにしっかりと合った推薦がされるためには、大量のコンテンツが生産されていることが条件となります。多くのラーニングベンダーに「AIはないか」「その機能はないか」と期待されていますが、その前に大量のコンテンツがあるかどうかが問題です。そのためにも私は、フォーマット化は必須だと思います。

久保田フォーマット化ですね。辻川さんは企業とのプロジェクトを多く経験されていると思いますが、きちんとフォーマット化できている企業はどれくらいありますか。

辻川そもそもコンテンツ化することが初めてという企業様が多く、あらかじめフォーマット化できている企業様にはお会いしたことがありません。ですので、まずはフォーマット化するところから我々が入っていくケースが多いのが現状です。

小仁やはり、「マイクロ・ラーニング」という考え方にシフトしていく必要があると思っています。マイクロ・ラーニングは、短い動画というイメージが強いですが、実は「マイクロ・コンテンツ」と「マイクロ・プラクティス」の組み合わせです。コンテンツは何かというと、文章やファイル、動画ですが、それだけでも奥が深いです。そして、マイクロ・プラクティスというのは何かというと、試験問題やケーススタディなどのアウトプットするものです。こちらを大量に用意しないと、聞いているだけではいつまで経っても習得しません。しかし、マイクロ・プラクティスのコンテンツはほとんどできていないという現状があるので、これから必要な視点だと思います。

久保田マイクロ・プラクティスは、あまり意識したことがないかもしれませんね。私も今“そうなのか”と思いました。「プラクティスをコンテンツ化する」というのは難しそうですね。

小仁大量の試験がそれに当たるので、それほど難しいものではありません。ある住宅メーカーさんでは、動画と試験を大量に作っていますが、実は試験は練習です。ランダムに出てくる問題を解いていくだけで、自分が苦手だったところが記録・保存されて見直すことができます。ですから、講義を聞いているよりもテストを受けた方ができるようになります。これがマイクロ・プラクティスですね。

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