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2021.3.26 EVENT

DXにおける組織と人材を問い直す ~先進事例から考えるDXに必要な人材の特質と組織戦略~

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デジタル化を推進していくためには、外部からの採用が必須

韮原では、アフターリーマンショックとは違う文脈で今について考えますと、やはりデジタル化の人材についての話になります。それについては、私も機械学習に関連する本を書いています。

機械学習やディープラーニングを始めたのは2015年頃ですが、東大の松尾先生の本が出たのが2014年でした。「人工知能は人間を超えるか」という本ですが、それが何十万部と売れて、松尾先生がエバンジェリストとして日本の成長戦略立案にも関わっていらっしゃるようです。当時は先端IT人材の人手不足でしたが、それは今も続いています。私は、当時考えていた人材と、今本当に現場で必要な人材というのは変わってきているという印象を持っています。

この資料に書いたのは、変革・イノベーション人材のレベル分けです。横綱級・大関級・小結級とありますが、結論を言いますと要は小結級がいればいいということです。

出典:経営戦略セミナー「確実な成長を牽引する人材マネジメント」公開資料より

内容は、まずビジネス系とテクノロジー&サイエンス系で分けています。横綱級の人は世界に何人かしかおらず、グローバルスケールで産業全体の構造を変えるディスラプター人材です。日本としては、このような人材を生み出せていないという課題があるものの、各企業においては、例えば「マーク・ザッカーバーグはうちの会社にはいりません」ということだと思いますし、仮にいたとしても扱えません。その下の大関級は、個別の産業の中でディスラプションを起こせて、且つ国内が中心という意味だと、ユニクロの柳井さんや楽天の三木谷さんなどが大関級です。グローバルでの圧倒的な横綱ではないけれども、グローバルに十分通用する大関くらいに位置しています。失礼な話ですが、私はこのような見方をしています。

では、会社の中で必要な人というのはどれくらいの人かというと、もう少し下のレベルで、若者でも十分です。各社内で構造変革を起こす人材で、すでにDXが成功している会社の中には1~3人はいると思います。アセスメントで見分ければ、素質を見つけることはできます。

国の議論などでよく言われているのは、横綱級や大関級の人材ですが、実際に各企業の現場は小結が欲しくて、小結にチャンスを与えることが大事になってきます。または、十両級の人たちを小結まで引き上げることが重要だと私自身は思っています。これはビジネス系の話ですね。

そしてテクノロジー&サイエンス系での横綱級というのは、ニュートンやアインシュタインなどの時代を変える要素技術を作れる、理論を創造できる人材です。アインシュタインの相対性理論がなければ、GPSがズレてしまいます。衛星は地球より重力が軽いので時間の進みが少し速く、相対性理論を使わないとGPSは100m単位でズレますが、相対性理論のキャリプレーションでなんとか10m単位の精度を実現しています。これは時代を支える技術ですが、アインシュタインの理論を使ってGPSを作るのは、その下の大関級の方々だと思います。テクノロジー&サイエンス系の大関級と言いますと、時代を変えるというほどではありませんが、産業イノベーションの要素技術を作っている方々で、ディープラーニングを作ったとされているジェフリー・ヒントンや、パナソニックで手振れ補正を作った大嶋光昭さんです。5Gの低遅延というのも90年代に大嶋さんが作った技術です。大嶋さんはパナソニックで営業利益を何千億円分、売上は何兆円分となる商品の要素技術を作ってきている方です。そういう人も日本企業に欲しいけれども、個々の会社のトランスフォーメーションをしましょう、デジタル化をしていきましょうという意味だと、もう少し下の小結級の方で十分です。今ある要素技術を使いこなすことができればよいのです。国内のテック企業の中にはそういう人がいますが、多くの大手や伝統企業では、IT関連は外部のSIerに丸投げ状態のため、社内に小結級の方があまりいないのが問題です。デジタル化を推進していくためには、外部からの採用が必須だと思います。

関口さんいかがでしょうか。

関口本当にその通りだと思います。ユニクロを作ろう、楽天を作ろうということで言いますと、完全に彼らはアントレプレナーなので会社にいても扱えませんよね。それなりに大きな会社だと事業だけで何千億と持っていて、働いている方々も何千人といる中で、そんな人がポンと入っても機能しないと思います。デジタルを使ってビジネスを変えることもいいですが、もっと地道なことをお客さん目線で変えていくか、どうしたらいいのかをつぶさに見ていく地道な観察、そういうところからスタートできる人が必要です。いきなりイノベーティブに真逆の発想でやるのでは、ついて来られません。やはり小結級のレベル感だと思います。

韮原世界では小結級でも、会社の中では横綱ですよね。

先ほど申し上げた2015~2018年頃の政府検討会に出てきたIT人材も、結構変わってきています。ディープラーニングを生み出したと言われているジェフリー・ヒントンさんが、「深層畳み込みニューラルネットワーク」という手法で、2012年にイメージネットという何億枚の画像を判定する国際コンペティションでとても精度が上がったというのが、松尾先生が本を書くきっかけになった出来事ですが、これは間違いなくイノベーションです。その前の1979年に、ヒントンさんがヒントにしている福島邦彦さんの「ネオコグニトロン」というアルゴリズムから33年を経てようやく出てきました。この過程には、計算力のスピードが圧倒的に速くなったこととデータ量が増えたという背景があります。

先ほどヒントンさんを大関級と言いましたが、前回のAIブームが去った後もずっといろいろな大学を渡り歩いて研究を続けてきた人、いわゆるグリットが高い人が今になってようやくこのブームを作っています。それがすごい技術だと思っているからこそ、社内にも同じようなすごい人材が必要だというトーンになっていて、続いてAlphaGoが勝ったということがありまして、そういう人たちがいないといけないような気がしていたのが、人材不足について国で語られる議論です。実際はその後2017年頃から、GAFAMが自身の持っている技術を民主化していき、普通の人たちも使えるようにするという戦略転換があり、クラウドでそれをやっていこうとなり、今は普通のエンジニアが使える技術になっています。

出典:経営戦略セミナー「確実な成長を牽引する人材マネジメント」公開資料より

結局、今社内で言われるAI人材も、情報工学やAI専攻である必要は全く無く、本や既存事例などを元に、どのようなテクノロジースタックかというのはオープンソースな世の中なのでいくらでも外にあります。結局、今のエンジニアはヒントン、ハサビス級のものを生み出すというよりは、編集や切り取りでうまい具合に社内で使っていくというキュレーション能力が必要だと思います。GAFAM技術を作り出すことは日本産業的には非常に重要ですが、社内的にはGAFAM技術のエンドユーザーで十分です。GAFAM技術をオープンソース化し、民主化していったことが大きいと思っています。

こういう話をしているのは私だけだと思いますが、最前線を見ているとどう考えてもエンドユーザーで十分です。国の検討会などで、各企業がどのよう人を生み出すかということについて話している内容は、あまり参考にならないと感じています。本日聞いていただいているコーチの方々が、「あなたもできますよ」という後押しをしていただければ、小結になれる人材は多いと思います。だからこそエグゼクティブコーチ、ライフコーチ、プロフェッショナルコーチと言われるような方々が重要で技術の現場にもコーチの存在が重要になってきていると思っています。

関口別の言葉で例えると、シェフがいるという感覚を持っています。つまり、シェフは美味しい野菜や牛肉を育てる必要はありませんよね。美味しい食材は揃っています。あとはみなさんのビジネスのフィールドにおいて、何があったら嬉しいのかということを考えながら、良いメニューを作っていきます。ある意味シェフはユーザーサイドの部分もあると思いますが、そういう人材の方が重要だと思います。

実際にはいろいろなコードが世の中に落ちていて、それを引っ張ってきて作っていますし、アプリケーションも世の中にたくさんありますが、その裏のコードはコピペで作っているものもたくさんあると思います。実際に今出来上がっているもの自体が、エンジニアが0ベースで作っているものではなくて、コピペで作っているものです。カッコよく言いますとキュレーション能力、カッコ悪く言いますとコピペ力が重要です。その技術を作るために一企業が頑張っても、GAFAMが何兆円と投資して作ったものに勝てるわけがありませんから、そこで無理をする必要はないと思います。

韮原質問がきています。「小結×テクノロジー&サイエンス系で、外部採用する際の人材要件で外せないものはなんでしょうか」とのことです。

関口これは悩ましいと思っていますが、大手の金融機関と話したときに、僕たちはエンジニアを企業で内製してほしいと考えているので、「採用して内製しないのですか」と聞くと、「良い人は来るのですが、その人たちはすでに辞めてしまった」ということでした。良いスキルを持った人でも、彼らのモチベーションを上げる仕事環境でないと辞めてしまう、環境が退職の大きな要因のひとつになると思います。しかし、本当に環境のせいだけで辞めてしまうのかという見方もありまして、自分の好きなことを自分の腕を使ってやりたいというタイプの人は、企業に必要なのかという疑問もあります。ある程度の組織への従順性や、組織の中で活躍することでモチベートされるようなタイプのエンジニアを選んでいるのでしょうか。単純に腕利きのエンジニアを選んできているのであれば、彼らはフリーランスの方が幸せだと思うので、人材要件をミスしていると思います。だから、一定レベルの組織への従順性や、チームで価値を作り出すことに喜びを感じる人たちを大事にした方がいいと思います。

韮原確かに、尖っている人材の尖り度は、PXTで言うところの“組織従順性”が低い、“独立性”が高く“決断性”が高いというところは、間違いなく表現され得ます。実際にDXを成功させている方々にPXTを受けていただくと、プロファイリングはだいたい決まっています。様々な他業界のネットワークの中から情報を仕入れることや良いベンダーを見つけてくることが得意なので、そういう意味での“社交性”はやや高めです。そして“決断性”や“独立性”も高く、“判断の客観性”は中央寄りで、ある程度ファクトも重視しますが直観もある程度重視して突き進めるタイプです。外部からクライアントのDXを支援するという会社においては、判断の客観性が高い方がパフォーマンスが出ます。直観的なものをお客さんに提案しても、それが上手く刺さらないところがあるので、そういう人材だということがだんだんに見えてきています。このように帰納的に見ていましたが、やっていくうちに「こういう人材はこういう人だろう」とわかるところがPXTの魅力でもあると思います。

頂いた質問からは脱線してしまいますが、このような人の見方というのは、今関口さんが提案していらっしゃるような、会社の内製をした方がいいけれどもやり方が分からないという方には、スキルのみならずビジョンに共感するカルチャーフィットは重要で、それはPXTで測ることができます。

関口“組織従順性”や、おそらく社交性の部分だと思います。いろいろな人を繋げて成り立つのが今のビジネスだと思いますし、餅は餅屋でどうチーミングしてやるかなので、ネットワーク力というのは非常に重要だと思います。企業人として成功してもらうためには、社交性は外せないと思います。しかし、腕利きのエンジニアほどそれが低い可能性があり、彼らはその素養までを見て採用されていないので、そこは変えた方がいいですね。

韮原とりあえずスキルフィットする人を見つけるのが大変で、カルチャーフィットまで見ている余裕はないというところが多いと思います。

もう1つ質問が来ています。
「関口さんが話された関係構築型のハイパフォーマーは、コロナ禍ではどうすればいいのでしょうか」という質問です。

関口こちらが教えてほしいくらいです。動き方を変えなければならないのは仕方がないですよね。彼らの得意技ができないけれども、だからといって活躍できないからその人を切るというわけにもいきません。対策としては、例えば前準備をたくさんさせるということを始めました。ミーティングで頂いている時間をどのように過ごすかということは、リレーションシップビルダーの人たちは全く考えずに臨みます。「そもそもこの会議は、何が目的で何がオチでどうなるのがお互いにハッピーなのか」ということを、探りながら良しなに落としていくのが彼らのやり方です。今はそれを最初に決めるということをやっています。例えば、本日のこの会議であれば「何が目的で何がオチで、最後は誰にどのようなセリフを言ってもらえるのがベストなのか」ということを、始まる前に決めるのです。カンペが見られるという話もしましたが、「今日の会議はこれで終わらなければならない」と書いたカンペを画面の下にこっそりと置いて見ながら話すことができるので、そういうことを始めることがスタートだと思います。

しかし本質的に言いますと、私たちはまだ若い会社だからいいですが、年齢が50歳ほどの30年近く叩き上げできた方にそれができるのかというのは、反対にコーチの方々に聞きたいところですね。

韮原私は、人はいつでも変われると思っていまして、重要なのはマインドセットだと思います。マインドセットを変えるような刺激が必要で、コーチの方に手伝ってもらいゴール設定をしてマインドセットが改まれば、「こういうスキルを身につけなければならない」と自分を変えられると思います。

本日聞いていらっしゃるトレーナーやコーチ、コンサルタントの方々というのは、ますます重要になってきます。先ほどのマッキンゼーの話もそうですが、DXやデジタルと言っても結局は組織であり人材の話だということはみんなが考えていることなので、そこにアドレスできるサービスはとてもニーズがあると思います。

関口本当にその通りで、何十年も同じことを繰り返していると思います。変換期に来た時には、いつも人の問題が出てきます。しかし、必要とされている人材はいつの時代も変わりません。イノベーション人材や変革をしかける人材、小結級の人材を高効率で輩出し続ける仕組みを作っていかなければ、おそらくまた10年、20年後に同じような話をしているはずです。

アセスメントのお話もたくさん出ていますが、ファクトに基づくというのは、人の話は難しかったのでこれまではできなかったということがあると思っています。しかし今は、office365のデータを使ってどのように仕事をしているのかデータが取れる時代になってきました。Zoomの録画で営業を振り返ることもできます。データやテクノロジーを使い、レビューしてフィードバックをまわすということがしやすくなった時代なので、それを上手く使ってやっていけば、今までできなかったこともできるようになると期待しています。そこでまた人材育成のイノベーションが起きればいいですね。

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