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2021.3.15 EVENT

グローバル人事の現在(いま)と未来~海外人事調査に基づき、新たな潮流を読む~

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果たして駐在員は必要なのか?

水谷我々は、コンサルティングのパートナーの方々と適材適所を推進していく中で、森田さんがおっしゃったように、これからどう変わっていくかというメンテナンス、時代に追従することがとても大事になると考えています。その辺りをセットで考えなければ、単純にジョブ型を入れましょうということでは難しい、ということが見えてきています。

次に、海外駐在員の在り方をどう考えるかという話題に移っていきたいと思います。

森田さんいかがでしょうか。

森田駐在員というのは、毎年何人かが海外に送られて、3~5年ほど滞在し何らかのミッションを持って仕事をします。これ自体が日本人の育成の仕組みになっていた部分もありますが、20年前はかなりワークしていたと思います。その理由は、ローカルのナショナルスタッフからすると優秀な人が来たからです。技術や知識、経験があるエリートが駐在で来てくれて、我々をサポートしてくれるという仕組みでした。駐在員にとってもアウェイな体験で、日本とは違う場所で二階層ほど上の立場の経験もできるということで、上手く機能していたと思います。

しかし、最近はローカルスタッフの成長が著しく、そこに駐在員が来たとしても、ローカルの人からすると「この人はダイレクターという肩書だけれども、ダイレクターっぽくない」、「マネージャーと言っているけれどもマネージャーの経験が無さそう」といったように、若手の育成として駐在に来ているとなめられるケースが増えてきました。コロナ感染が広がり駐在員が行けない状況で、会社によってはローカル化を進めようと舵を切っている会社もあります。駐在員を減らしていく、リモートで権限委譲をせざるを得ないところもあります。そうなったときに、駐在員がいなくても意外と大丈夫だという会社もあれば、やはり駐在員がいなければ回らないという会社もあります。駐在員がいない方がローカルの人がやる気になり、今までは日系企業のお客さんを中心にやってきたところが、頑張って国内のマーケットを開拓しているという話も聞きます。

そうなってくると、駐在員とはなんだったのかということになります。日本人の育成システムとしてはある程度機能していたものの、海外の事業を本当にドライブして伸ばしていくということに関して一番のベストソリューションだったのか、ということが今問われ始めていると思います。

駐在期間を最大限使って、海外事業をドライブできる駐在員は重要ですが、一方、よくあるのは1年目は勝手が分からずに様子見をしながら前年度の踏襲をして、2年目で徐々に問題点が見えてきて、3年目で変革を考えますが帰任のことが気になり大幅に変革をしても引き継ぎの際にややこしさを感じ、ローカルにもそこまで責任を取れないから結局、無難にやってしまう、というケースです。要するに、駐在員が問題点を分かっていながらそれを先送りすることが、駐在員制度という仕組みで起こりやすい問題です。本当に最初から使命感を持って行き、会社側も「これをやってこなければ、人事評価が下がるぞ」くらいに言っている会社はいいですが、そういう会社の方が少ないと私は感じていて、「とりあえず行ってこい」という会社の方が多い印象があります。東南アジアなどの新興国は今とても成長をしているので、ローカルの会社は、その成長している市場を積極的に取っていきます。そこで駐在員の舵取りが前年度の踏襲で様子見となっていては、どんどん差が開いてしまいます。

駐在員は昔のようにうまく機能しているのか、それが一番のやり方なのか、「駐在にとりあえず行ってこい」としていることで機能しているのか、10年前や20年前ではワークしていたことが今もしているのか、という検証はとても大事だと思います。今はそのタイミングで、結果を出せる駐在員とそうでない駐在員がはっきりと浮き彫りになると思います。

駐在員の人事評価は日本で行われることが多く、駐在先で何をしようが本社側からはよく見えていません。だから好き勝手にできる良さがありますが、反対に身が入らないという側面もあったと思います。例えばとあるメガバンクは、駐在員でもローカルの人事評価制度の中に組み込み、ローカルからも評価がされる試みをされています。そうすることで、ローカルをうまくマネジメントできない駐在員マネージャーやローカルに尊敬されない駐在員は、すぐに日本に戻されます。そういったことが今後は加速すると考えています。また、駐在員は必ずしも日本人である必要はなく、例えばシンガポールで活躍した人がインドネシアで2、3年ダイレクターをやって結果を出してシンガポールに戻ってくるということもあり得ます。駐在員という、ある種守られた制度も日本人だけの特権という話ではなく、フラットに、自由に、一番効果的なものを考えるタイミングに来ていると思います。

水谷森田さんの問題意識を感じるお話だったと思います。駐在員は守られているのでそこを総点検しよう、という考え方が加速しているということですね。

森田住むところも提供され、手当も出てということを踏まえると、一般的に、駐在員はコストも高くかかります。そういった手当を考えると、ローカルで優秀な社員を採用した方が、実はコストパフォーマンスが良いということにも繋がっていると思います。

水谷本社サイドからすると大きな戦略があり、その中での海外事業という位置づけなので、ビジネス上で一番効果的な手を打つべきだと思います。本社もその点で問題意識を持つべきだと思いますが、森田さんが日々お客さんとお話しする上で、本社サイドの問題意識はどうでしょうか。

森田私の見えているところでお話をすると、まだまだスピード感が遅いと感じています。

欧米企業も、20数年前からグローバル化を一気に進めました。例えば、アメリカ企業であれば、20年ほど前はアメリカからの駐在員が行くことが主流で、アメリカでのやり方を他の国に持って行くことをしますが、これでは上手くいかないことに気づきました。アメリカ人だけを優遇させる仕組みではなくローカルにシフトしていく、ローカルの人をもっとエンパワーしていかなければビジネス自体がグローバルで成長していかないと気づき、多くの欧米企業が15年ほど前から転換をしています。

日本企業はその欧米企業のグローバル化の歴史から学ぶべきで、駐在員が行けないからどうしようという議論で止まっているのでは、グローバル競争に勝てないリスクがあると感じています。今はビジネスのスピードが加速していて、DXなどいろいろな動きが出ています。

水谷その辺りは現地にいる森田さんならではのコメントだと感じます。事前調査の中でも、海外駐在員の在り方についてお声をいただいているので共有します。

先ほどお伝えした通り、半分以上の企業が海外駐在員の求める人材像に変化がある、と回答しています。ナショナルスタッフを幹部に据える方向性を考えている企業がある中で、ビザの発給難易度が上がっているので、より専門性やマネジメントに関しての期待が上がっていくという声もありました。またリモートでできることは駐在員がやる必要はないので、マネジメント業務に注力していき、より一層現地化を進めるための権限委譲やサクセッションプラン、現地社員の育成というところに重きを置いている企業が増えています。

事例をご紹介します。海外人材マネジメントをどうするかということで、昨年ある企業では、本社の幹部人材のあるべき像の定義、我々の手法で言うところのパフォーマンスモデルを整えました。今後力を入れていきたい海外拠点長のあるべき姿を共通言語の形で整えることは、非常に大事なことです。

そしてそれをアセスメントの観点と、もともと持っている社内の評価軸を連動させて、期待値を明確にしたうえで送り出す、ということを春先に議論しました。この中で様々な議論がありましたが、より現地の方を育成できる人材を求めるということで、PXTの「仕事への興味」における「人的サービス」の期待値をしっかりと定義付けました。この点をしっかりと求めますという期待を駐在員に伝えた上で、海外に送り出している、という企業の話がありました。これはグローバルの観点でも、共通の基準を持ってフェアに議論ができるのは良いという話になっています。

森田今までのように「あなたはこの業務が向いてそうだからやって」などと属人的にやるだけではなく、科学的に分析をして、どのような人が海外で活躍するのか、どのような人が自分の会社で成果を出せるのか、ということを、数値も含めて言語化し見える化するということは、グローバルマネジメントにおいては重要だと思います。信頼関係があり阿吽の呼吸で分かるメンバーであれば、「あの人良さそう」で決めてもいいのですが、グローバルのタレントマネジメント会議では、基準値が違いすぎるので共通の物差しがなければ議論が進みません。

我々は、ローカルの採用でProfileXTを使うお手伝いをしていますが、特にローカルの経営層の採用には失敗が許されません。そこで、面接では見えないところをPXTでカバーしていきます。とくにリモートやグローバルでは言語やカルチャーの壁があるので、このようなツールでカバーをするという発想がなければ、なかなか効果的なマネジメントはできないと実感しています。

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