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2021.3.15 EVENT

グローバル人事の現在(いま)と未来~海外人事調査に基づき、新たな潮流を読む~

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海外事業、および人事マネジメントの実態

水谷それでは、海外人事調査サマリーを共有し、議論を深めていきたいと思います。

変化している状況の中で、海外事業や人事マネジメントの実態がどうなっているのか、そしてどのような課題があるのかを調査する目的で、私たちが扱っているProfileXTというアセスメントツールをすでに導入している企業、あるいは検討している企業の海外事業に関わるマネージャーの方々にご意見を伺っております。N数は多くありませんが、日々海外マネジメントに向き合っていて、且つPXTのアセスメントを使っている方々から示唆を得ることが出来ました。従業員規模としては1000名~5000名の規模の企業のご意見が中心となります。業界としては、比較的海外への進出が進んでいる自動車製造業界、総合商社の方々を中心にお答えいただいております。

アンケートにお答えいただいた方の75%が、今後3年から5年で海外ビジネスを伸ばしていくことを前提にしているという結果が出ています。海外に拠点を置く場合、日本から派遣する駐在員にも求める期待や役割に変化がある、と答えた企業が半数ありました。そこから、海外事業を誰に担わせたいかという質問に対しては、先ほどの森田さんからもありましたように、現地のナショナルスタッフを活躍させたいという回答が4割強ありました。そしてここが一番のポイントですが、変化があったこの半年でどのような事柄に問題意識が高まっているかということで、1つめは国をまたぐリモートワークをどのように進めたらよいのか2つめは日本から送り出す駐在員の在り方をどう考えるか、そして3つめはナショナルスタッフの維持や育成をどのように考えるか、となっています。本日は、この3つについて専門家である森田さんの視点から考え、今後のアクションに繋げていきたいと思います。

では森田さん、1つめの「国をまたぐリモートワークマネジメントの効果性を高める」ということについて、どのようにお考えでしょうか。

森田国境を超えたリモートマネジメントというのは、非常に難しいですよね。これまでは、駐在員が現地に行き現場にどっぷりと入り、現地の言葉も少し勉強して、時には一緒に飲みに行ったりして信頼関係を築いていきマネジメントをするということが主流でした。しかし、このコロナ禍で駐在員がなかなか現地に行けなかったり、現地の医療体制が脆弱のため日本に戻るような指令があったり、リモートでマネジメントをせざるを得ないという企業が増えています。

このリモートマネジメントが非常に曲者で、「今までのようにオフィスに出社してリアルに会うマネジメントとは違うものである」と認識をしなければ上手くいかないと考えています。リモートマネジメントをオフィスで働くものと同じように捉えると誤ります。オフィスに出社すると、なんとなく「仕事をしなくては」とマインドセットされますし、周りから見られているというプレッシャーもあります。

これが自宅での仕事となりますと、場合によっては「できるだけサボろう」という気持ちになってしまうことがあります。また、周りで何を考えているのかが分からないので、マネジメントの在り方が全く変わってくると思います。

今までの日本企業ではプレイングマネージャーが多かったのですが、リモートワークになるとプレイングしている場合ではありません。マネジメントにかなりフォーカスをして、積極的に部下やチームにアプローチをすることなく放置すると、組織がだんだんバラバラになっていきます。国をまたぐとなると、言葉や慣習が違うのでなおさらです。

例えば、この4月から駐在員が赴任する予定が変わり、リモートでマネジメントをすることになったケースでは、ローカルのミーティングに呼ばれないという状況をお聞きしたりします。ローカルの人は、ローカルの言語を使って自分たちでやりたいと考えているので、そこに駐在員を呼びたくないと思っています。慣れない英語を使わなければならないですし、よく分からないことを言われるとなれば、わざわざ会議に呼ぶことはなくなり、駐在員も何が起きているのかが分からないままに時間だけが過ぎていくということが多くあります。言葉やミーティングだけでマネジメントをすることはなかなか難しく、いかに業務を見える化するかが重要になってきます。

例えば弊社でもそうですが、リモートワークになったときに、タスク管理ツールやプロジェクト管理ツールを導入し、スケジュール管理もして、朝と夕方のオンライン朝礼、勤務開始と終了時の報告、短時間のミーティングをすることで、「チームで仕事をしている」という意識を持ち、気持ちや不安なことなども日報に書いて個々の考えをシェアする仕組みを作りました。そういったことをいかに仕組み化していくかが大事だと思います。

やはり、リモートワークで悩まれている方が多いので、我々は仕組み作りの面でも支援させていただいております。1つは評価制度です。これまでの日系企業では頑張りの過程を評価するものが多かったと思いますが、リモートワークの肝はパフォーマンス評価です。成果評価やパフォーマンスをどう見るかが大事です。

そしてもう1つ、リモートワークになるとみんなバラバラになってしまうので、ベクトルを合わせるビジョンやミッションがとても重要になってきます。さらに戦略を絞り込んで、例えば1年単位の戦略ではなくクォーター単位や1カ月単位の目標設定をして、短期の成果マネジメントをしていくことが重要です。

そして、仕組みとしての見える化ツールの活用や、ビジョンなどの経営陣の意識改革をした上で仕組みに落とし込んでいくマネージャーの意識改革が必要です。これまでのやり方ではなく、リモートで主体的にマネジメントをしていくという意識を持つ必要があります。また、チームでのミーティングをしていても、なかなか部下の本音が分からないこともあるので、1on1の重要性が今まで以上に高まってきています。とくにリモートでマネジメントとなると、ローカルのキーパーソンが何を考えているのか分からないので、信頼関係を築いていくためにも1on1は重要だと思います。そして、それらのプロセスを経て、エンゲージメントやグロースマインドセットを高めていく仕掛け作りが大事だと思います。

リモートワークで、結果を出している組織の変革のステップ」:出典:beyond global

我々は、このようなプロセスでお手伝いをさせていただいていますが、リモートワークでのマネジメントの肝として考えているのは、①成果マネジメントをどのように仕組み化していくか②セルフマネジメントを支援する仕組みや評価制度をどう作っていくか、そして③エンゲージメントを高める仕掛けとコミュニケーションをどのようにデザインしていくか、ということです。これらが非常に大事になってきます。

これらがきちんとできた会社にとっては、リモートになったことで今まで属人化していたものが仕組み化され、言語力に頼らなくても仕組みでカバーできるようになっています。日本人は比較的、異文化コミュニケーションが苦手で慣れていない、日本語以外でのマネジメントの経験が足りないという点を、このような仕組みやツールで補完していくことに転換した会社は、かなり上手く行き始めています。反対に、そこで手をこまねいている会社もあり、そこは二分化している印象があります。

水谷取り組みをスタートしている企業は成果が出ていて、ためらっている企業においては難しい局面になっているということですね。ソフトとハードの両方を揃えていくことがポイントだと思います。日本ではリモートワークをトリガーにして、ジョブ型雇用をどうするかという話がありますが、海外では当たり前という捉え方でしょうか。

森田そうですね。日本企業以外ではジョブ型雇用が当たり前で、それが標準的な形になっています。我々が支援させていただいているところでも、人事制度を変えたいというキーワードの中に、ジョブ型をやりたいというキーワードも出てきています。やはり、本社の流れが海外現地法人にも来始めているという実感はあります。

水谷その辺りは、日本人マネージャーに対する期待と海外に送り出す駐在員の期待という次の論点で、詳しくお話をいただきたいと思います。

日本でもその部分はフォーカスされていて、オキュペイショナルネットワーク(O*NET)という米国のジョブディスクリプションで、1000の職種を整える米国の仕組みがありますが、日本にも同じ仕組みを持ち込もうということで、この春に日本版O-NETがスタートしています。

厚労省が定義している500の職種についての日米の比較調査を現在行っておりまして、日本企業が職務に何を期待するかという面白い情報が出てきています。ひとつ言えることは、仕事に対する興味や欲求は世界中で大切だとされていますが、これについては日本も米国も同じような傾向となりました。若干違っているのは仕事の環境や性質という点です。例えば、米国版の客室乗務員さんの職務定義は比較的前向きであって良いとありますが、日本版においては反対で、前向きというよりはどちらかというと慎重でミスが少ないようにと記載されていて、日米の差が出ています。我々としては、日本の良さを活かしながら、ジョブ型という言葉に囚われずに、その会社らしい適材適所の考え方を訴えかけたらどうかということを調べています。

森田そこに関連しまして、海外はジョブ型だからジョブ型を導入したいという日系企業は昔からありますが、失敗しているケースが結構あります。ジョブ型を導入するということは、「この仕事をするから給料はいくら」という契約をするということなので、事前に仕事を定義しておかなければなりません。しかし日本企業はその定義に慣れていません。どちらかというと、曖昧な中で融通を利かせてやってほしいと後から仕事を頼んだり、融通を利かせて仕事ができる人が優秀だという考え方が昔からあったと思います。

例えば課長であれば、課長よりも一段上、二段上の仕事をとってくることが美徳とされていました。

しかし「一段上、二段上の仕事をして」とローカルに言っても、「それならばその分の給料をくれ」と言われてしまいます。また、ジョブ型を導入したとして、例えばごみ捨てをお願いしたときに「それはジョブディスクリプションに入っていない」という話になり、それでは反対に日本人駐在員がマネジメントをやりにくくなってしまいます。さらにジョブの定義がうまくできなくて、導入したはいいけれども有名無実化してしまい、中途半端になっているケースも多くあります。先ほど水谷さんがおっしゃった通り、欧米のものをそのまま持ってくるのではなく、求めるものやマネジメントの仕方に違いがあるので、その中で良さを活かした日本型のジョブ型をどうやって作り上げていくか、または完全に欧米型に振ってしまうのか、という意思決定をしなければ中途半端になってしまうと私は危惧しています。

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