HRD株式会社 - Human Resource Development

2021.2.3 EVENT

リアルからバーチャルへ、変わる『職場』の再定義

~データから見える真実と向き合い、新たな組織マネジメント手法を見出す~

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バーチャル環境下における“新しい職場”

ここからは最終パートとなりますが、実際にVirtual Workplace Lab.で全国的に定量調査を行って、有益なサンプルとしておよそ300件を分析した結果を元にお話をさせていただきます。

先ほど、リモートワーク環境ではひとりひとりに合ったマネジメントが必要だという話をしましたが、マネジメント行動を見てみると、皆さん結構きちんと行っていることが分かります。「業務進行」の支援、つまり業務管理については、5点満点のところ管理職の方は3.67という平均値が出ています。そして部下は3.56という平均値が出ています。統計的に比較しても、あまり差がありませんね。そして「学習や育成」についても、真面目にやられている方が多いという印象です。しかし「心身のケア」については、実際に部下に対してストレスを抱えていないか、支援をしているかという質問に対して、上司の自己評価と部下の上司評価に大きく差が出ています。つまり上司としては、リモートワークなので意識してやっていると思っていますが、部下はそのように感じていないという傾向が出ています。

「マネジメント行動に関するカイニ乗分析」:出典:Virtual Workplace Lab. 

心理的安全性については、リモートワーク環境でみんなが本音で話せるような環境になっているかという質問ですが、「心理的安全性に注力している」と答える管理職の方は非常に多いですが、部下はそのようには感じていないという結果が出ています。やはり上司の視点からマネジメントのあり方や求められているマネジメントをこなしているかで考えると、それは「やっている」という回答になります。しかし部下が置かれている場から見て、上司がマネジメントを出来ているかというと、そうでもないという意見が出てくる傾向にあります。

さらに細かくデータ分析をしていくと、心理的安全性に差があるという話をしましたが、心理的安全性が保たれていないと、ワークライフバランスに影響すると言われています。チーム内で率直に意見交換できていないと、ワーク・ファミリー・コンフリクトが起こりやすくなります。例えば、会議で「Aさん、この仕事をやっておいて」と言われるとします。Aさんは、自分の家族の状況などを考えると到底その仕事を出来るとは思えないけれども、心理的安全性が低いと「出来ない」とは言えないので、その仕事を請け負うことになります。するとその仕事のために家事や家族を犠牲にしてしまったりして、ワークライフバランスが崩れます。しかしその働き方は持続的ではないので、結果的にパフォーマンスが低下します。

さらにそれが続けば、チームのパフォーマンスも低下していきます。また、幸福感にも影響を与えます。反対に言えば、自分の意見を言えるような環境が出来ていれば、ワークライフバランスは保たれますし、幸福感を感じて働けますし、パフォーマンスも上がります。自分のチームにおいて、きちんとメンバーが自分自身の状況を話しやすい、伝えやすい環境になっているかという点を見直す必要があると思います。

なぜ言えないのかというと、やはり日本人はonとoffをきちんと切り分けます。外資系の企業に行けば、社内でプライベートの話を普通にしますが、日本の企業はプライベートの話をあまり会社では言わないですよね。なので自分の家庭の状況を説明しづらい部分があると思うので、そういうところでも心理的安全性を担保されるには、それなりの配慮が必要になってくると思います。

心理的安全性を保つためにはどうすればいいのかというと、ある程度部下に裁量権を与えて、任せることが重要です。「セルフ・リーダーシップ」、つまり部下にリーダーシップを発揮してもらうことで、部下がやりやすいことや興味のあることを奨励します。そして、「役割曖昧性」を解消することです。役割をきちんと定めておきます。その中で権限を委譲することが求められます。重要なのは、ここで言う役割というのは、一般的に言われているジョブではないということです。経営学ではロールとジョブを明確に区別をしていて、ジョブは仕事内容を意味します。そしてロールはチームにおける役割です。この違いは、社会的な関係性の中で役割を位置づけているということです。例えば自分のジョブは営業職だけれども、新人が来れば面倒を見るという役割が生まれますよね。ジョブには書かれていないけれども、チームに貢献する役割はいくつもあります。その部分をきちんと規定してあげることが必要になってきます。

「心理的安全性に何が影響していたのか?」:出典:Virtual Workplace Lab. 

久保田それはバーチャルになり、「役割曖昧性」が高まってしまったということでしょうか。

神谷そうです。「役割曖昧性」や「役割葛藤」と言いますが、結局上司が近くにいないので、迷ったときに聞くことが出来ません。なので分からないままにしてしまったり、あるいは自己判断でまったく違う役割をしてしまい、結果的に上司に怒られてしまったり、自分の役割について疑問に感じてしまいます。

リモートワークにおいて上司が心理的安全性を確保することについて、上司は心理的安全性を高めようと頑張っているけれども、部下は心理的安全性を感じていないというケースは非常に多いです。実際にインタビューをした企業でも、会議の前後5分は雑談をする時間を取っていたり、会社の経費でリモート飲み会を開催しているという話がありました。しかしその方の部下などの話を聞いてみると、雑談で話す内容を事前に考えなくてはならないし、中には新人の方で、その5分間のために15分ほどかけて内容を考えているという方もいました。それはもう雑談ではないですよね(笑)。

また、リモート飲み会も正直迷惑に感じていて、ゴールデンタイムに家にいながら飲み会をすることは自殺行為だとおっしゃる人もいました。後ろから家族の冷たい視線を感じながら、自分は笑ってお酒を飲まなくてはいけない辛さをまったくわかっていないという意見も発生しているので、上司が心理的安全性を高めようと思って部下に働きかけるほど、それは仕事や強制的な意味合いに取られてしまい、心理的安全性が低くなってしまうというパラドックスが発生しているということが現状です。

 
 

では、何をすればいいのかというと、先ほどの分析結果にヒントがあると思います。裁量権とセルフ・リーダーシップとあるように、部下に任せることです。「たまには休めよ」「家のこともきちんとやれよ」と声を掛けたり、信頼して権限を提供して、例えば散歩をしたりといったようなある程度の自由を許容することが重要だと思います。そんなことを部下がしているときに「どうしてサボっているのか」と言ってしまうと心理的安全性が下がるので、ある程度は現場に依存するという前提でやっていかなければ、リモートワークは難しいです。

セルフ・マネジメントしていかなければ、おそらく成り立たない働き方です。それで放っといたら部下が全員サボりだしたり、働かなくなったりするようなモラルハザードが起こる企業は、リモートワークをやるべきではありません。リモートワークに適していないと思います。なので社員の個性や能力レベル、会社としての組織文化も踏まえながら、リモートワークがフィットしているかどうかは検討しなければなりません。

久保田製造業で工場に勤務者がたくさんいて、リモートワークの推進に対して社風的に後ろ向きだという質問を参加者からいただいています。今おっしゃったように、社風や仕事内容、カルチャーにもよるので、一概には言えないですね。

神谷実際にリモートワークの研究などでは、社員の一定の割合がオフィスや工場で働いていて、一定の割合がリモートワークをしているとなると、組織内の関係性が悪くなるという研究結果があります。なのでそういうときはきちんと切り分けて、リモートワーク組とオフィス・工場組があまり関わらないような関係性であれば、そこにはコンフリクトが起こらないのでいいと思います。しかし知り合いなどもたくさんいるのに働き方を切り分けるというのは、難しいと思いますね。

久保田公平性ということですね。

神谷リモートワーク組と工場組が相互理解ができるような場、つまり組織全体を意識したり、リモートワークをやる意味などを丁寧に説明して、戦略的であるという正当性をリーダーが発信していかなければ、組織内は分裂してしまいます。裁量権の与え方も、部下の個性や置かれているシチュエーションによって切り分けるべきだと思います。例えばクリエイティビティを高く持っていて、どんどん新しいことをやっていきたいという人は、放っておいても1人で走り始めます。しかし論理的に考えるようなタイプだったりすると、裁量権をロジカルに説明して、どこまでOKなのか、ある程度の枠組みを与える必要があります。

また人間関係が大好きというタイプの人は、裁量権を与えることによってメンタルを病んでしまうリスクもあるので、関わってあげることが大事になります。このように、部下の個性に合わせてマネジメントをしていかなければなりませんし、部下の置かれている状況や個性を見なければなりません。

久保田私たちのアセスメントである個にアプローチするというのは、バーチャルではより重要だということですね。DiSCアセスメントはコミュニケーション、つまり関係性にアプローチしますし、HRDグループで提供しているProfile XTというのは、仕事と1人ひとりのポテンシャルのフィットを見ていくものです。それで見ていても、適している働き方というのは人によって違うということが分かって、そういうアプローチも必要だと感じました。

神谷現在は、社会全体が個人化していく時代であり、自律的に個人のキャリアや生活を意識していく時代です。その時代で求められるマネジメントというのは、個人に合わせた細かい粒度のマネジメントです。そのためには、細かく部下の情報を把握しているというのは大前提になると思います。

そこで裁量権やセルフマネジメント、役割曖昧性というところに何をすべきかというと、部下を支援していくようなリーダーシップのスタイルです。「E(エレクトリック)リーダーシップ」と言いますが、バーチャル環境におけるリーダーシップというのが有益な影響を与えていたという分析結果もあります。「Eリーダーシップ」というのはバーチャルチームを率いるときに不可欠なリーダーシップと言われていますが、例えば先見的な思考や、今後の予測も踏まえて今後の見通しを立て、その見通しを踏まえて部下との正確なコミュニケーションを取りながら権限を委譲したり、役割を規定していきます。そこで重要になってくるのは、部下が置かれている文化的な背景や社会的な背景を押さえていけるような知性と、部下を中心に据えた仕事のスタイルに配慮していくということです。パーソン・セントリックという人間中心主義的な考え方とアセスメントは相性がいいですし、部下のタイプを踏まえて1on1をすると、有益に活用できると思います。

「パラドクスを解消するためには矛盾のリーダーシップが求められる」:出典:Virtual Workplace Lab. 

文化的な知性と人間中心主義というのは、GoogleやFacebookの例を出しましたが、グローバルになればなるほど重要になってきます。宗教が違ったり時差があったりするので、部下間で大きな環境や状況の違いがあったりします。しかしそれは日本国内でも同じですよね。お子さんがいる人と独身の人でも状況は随分と違ってくるので、そこは踏まえる必要があります。

久保田視聴者から他にも質問をいただいています。先ほどの「Eリーダーシップ」のところで、「予測」が必要な理由についてです。

神谷今後のビジネスや、プロジェクトの展開がどうなっていくのかという点を、早い段階で見通しを立てることを、ここでは「予測」と言っています。なぜ予測やビジョンが大事なのかというと、オフィスであれはリアルタイムでその時の状況や、自分の会社の状況について、部下はある程度把握ができます。それは直接上司に質問すれば聞けるということもありますし、会社の雰囲気などでも状況を察することができます。しかしオンラインではそれが分からないので、今の組織の状況がどうなっていて、そこに対して自分たちのチームがどうなっていて、今後についてもある程度リーダーとして語ることができなければいけません。なので課長や部長レベルの視座というものを一段階引き上げて、会社としての視座を部下に対して棚卸をする必要があります。それが予測というところに含まれています。

久保田確かに、そういうものは雑談で「こういう話があるらしい」と情報収集していましたが、オンラインではそれが出来ませんね。やはりマネージャーに冗長な、頻度の高いコミュニケーションが求められていて、タスクだけではなく、いろいろなコミュニケーションを意図的にする必要があるということですね。

神谷これには具体的なエピソードがあり、リモートワークになったときに「自分の会社はどうなるのか」ということが現場に伝わらないと、部下のモチベーションは結構下がります。いつまでコロナが続くのか、それに対して会社はどのような判断をしているのか、ということが一切現場に伝わらないと、部下のモチベーションは低下しますし、会社に対する愛着も失っていきます。しかしそこで経営層の意見や、経営会議で話し合われていることを伝えて、課長の予測や先見の明を提示することができれば、部下は安心して働けますし心理的安全性も確保されます。そのような側面でも、予測は重要になります。

久保田次の質問です。副業がやりやすくなっている状況で、パートタイムでも働いてもらおうという動きは、実際に企業にも出てきているのでしょうか。

神谷その辺りはベンチャー企業を中心にかなり寛容になってきていますよね。時間を限定したり、プロジェクトを限定しているものが増えてきていると思います。実際にわが社でも、そのような働き方が出来る人に対してどんどん仕事を渡していますし、今後も増えるでしょうね。

久保田神谷さんはスタートアップ系の企業の動きをよく見ていらっしゃいますよね。

神谷そうですね。これからは副業も兼業も当たり前になってくると思います。やはり育児や介護をしながら、いかに効率よく稼ぐかということが重要になってきますし、そこは政府も支援しているところです。

久保田バーチャルでの働き方というのは、やはり難しいですね。定量的にデータだけで集められるかというと、前の情報が無かったりするので比較も難しいです。やはり定性的な部分で捉えることも大事だと思うので、その両面からの見方を神谷さんにアドバイスして頂いたと思います。これを具体的にどうするのかというのは、年末のアセスメントフォーラムでも共有させていただきます。

■終了後インタビュー

久保田神谷さん、本日はいかがでしたでしょうか。

神谷非常に楽しかったです。まだまだこれから研究が続いていく領域ですし、みなさんが試行錯誤をしていく領域なので、私自身も学びながら皆さんに知見を共有できればと思います。質問がたくさんありすぎて全てに答えられなかったので、FacebookやTwitterなどでもご連絡いただければと思います。

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